8.der Traum(デア・トラオム)
風呂を上がって、ふたり並んでテレビを見て、ゲラゲラ笑って、と言っても俺は笑ってるというより鳴いてるわけなんだけど、寝る時間になった。
俺は猫になっちゃってるし、“ソファでいいよ〜”とゼスチャーで伝えたら、酒井に「ベッド広いから充分寝れますよ。」と、ひょいと抱えられてベッドに連れていかれた。
ま、毎度のことながら恐縮しちゃったりしたんだけど、眠たくてすぐ寝てしまった。
―――俺は辺り一面何もなくて白い靄のかかったような場所に立っていた。
足音が聞こえてくる。
音がする方を向くと、酒井がこっちに向かって歩いてくるのが見えた。
「あっ。」
俺の姿を見て酒井が早足で近づいてくる。
酒井が俺の前でカラダを屈め、俺を抱え上げた。
俺、まだ猫なんだ。まいったなぁ。
酒井の腕の中でキョロキョロ周りを見渡していると、遠くからこちらに近づいてくる人物が。
・・・・・・俺?
もうひとりの俺・・・人間の姿の俺だ・・・どうなってるんだよ・・・?
「黒ポン!」
酒井が人間の俺に向かって呼びかけた。
人間の俺は、俺たちふたりの前に立った。
「おにいさんたちこんにちわ〜。」
人間の俺がペコリと頭を下げる。
声は俺のものだが、まるで子供みたいな話し方。
酒井もその話し方が気になったのか、小さくプッと吹き出した。
“笑うなよ〜!”
「にゃぁ〜っ」
俺は酒井の腕を噛んだ。
「いてっ!・・・黒ポン、元に戻ったんだ?」
「ぼくくろぽんじゃないよ、くろだよ。」
「・・・は?」
「くろだよ。」
「はぁ・・・」