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「どこ行っちゃったんだろうね〜、おふたり・・・」
「ホントにね。ちょっと心配だね・・・」
「ちょっと探してみよっか。」
「そうだね。とりあえず、最初は森の中入ってみる?」
「うん。」

ふたりは森に向かって歩いていく。

「ここか・・・」
「近くで見ると、大きい樹がたくさん立ってて、ド迫力だなぁ・・・」

森に足を踏み入れてしばらく進むと、鬱蒼と覆い茂る枝葉に日射しが遮られて辺りは薄暗くなってきた。
数日前の雨の名残りか、地面は少々ぬかるみ、足を捕られそうになる。

「民生さ〜ん!」
「阿部さ〜ん!」
「いませんか〜?」
「みなさん探していらっしゃいますよ〜?」

暗い森の中を呼びかけながらドンドン奥へと進んでいくが、人影らしい姿も見かけなければ、呼びかけに応じる声もない。

「・・・いないのかなぁ・・・?」
「ここじゃないのかも・・・」
「別のとこ当たってみる?」
「そうだね・・・そうしよう。」

引き返そうとしたその時、ふたりのヒザの下辺りを、野球の硬球が猛スピードで横切っていった。

「え・・・」
「な、何・・・?今の・・・」
「・・・お、追ってみよう!」
「うん!」

ボールは地面に落ちることなく、木々を縫うように左右に蛇行して飛んでいく。

「は、早いっ・・・!ちょっ、ちょっと!待って!待てってば〜!」
「食べた後だから横っパラ痛くなってきた・・・!」

だんだん足取りが重くなりヨタヨタとボールを追う北山と安岡の前に、古い寺社のような ボロボロの小屋が姿を現した。
ボールはその小屋の中へと吸い込まれていった。

「こんなところに、ほこら・・・?」
「ホントだ・・・」
ふたりはほこらの前で足を止めた。

「・・・ね、中、入ってみる?」

北山の提案に、「え、で、でも、恐いな・・・」と安岡がためらう。

「そりゃあ恐いけど・・・あのボールはたぶんユニコーンさんが使ってたヤツだろうし・・・もしかしたらあの中におふたりもいるかもしれないし・・・」
「わ、わかった・・・。けど、俺置いて逃げないでね!た、頼むよ?!」
「ダイジョウブ、そんなことしないから・・・。じゃあ、行こうか・・・」

ふたりは及び腰でほこらの観音開きの扉の前に立った。
両手を胸の前で合わせ、「失礼しますっ!」のかけ声とともに足を踏み入れた・・・。

 

―――ゴスペラーズのメンバーがこの会場に着いて2時間半あまり。
控え室のテントの中では、村上・黒沢・酒井が浮かない表情を浮かべてテーブルを囲んでいた。

「・・・ったく、あいつらどこ行ったんだよ?もうすぐリハ始まるってのに・・・」
「ダメだ・・・電話もつながらんぞ・・・」
「こっちもつながんないよ・・・おかしいなぁ〜・・・」
「俺、とりあえずリハの順番変えてもらうように先方にアタマ下げてくるわ・・・」

北山と安岡が忽然と姿を消したことで、ゴスペラーズは一大事を迎えていたのだった。

 

 

つづくっ!!

 


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