Sneak and Snake

 

 

満天の星空に大きな満月が浮かぶ夜。

全く交通量のない海沿いのフリーウェイを、1台のオープンカーとバイクが潮風を受けながら猛スピードで駆け抜けている。
目的地は、岬の高台に立つ財閥の別荘だ。

「・・・次の出口で出ればいいんだったな?」

オープンカーの運転席に座る男が自身に確認するように呟き、「EXIT↓」と書かれた看板のある方の道に向かってハンドルを切った。
それに続くようにバイクもフリーウェイを降りてゆく。

なおも道なりに走り続けると、まばらにあった街灯も徐々に数を減らし、この先の道を照らすのは車とバイクのヘッドライトのみとなった。

「あの洋館だな。」

運転席の男が言うと、それまで微動だにせず静かに目を閉じていた後部座席の男がようやく目を開け、その洋館をじっと見据えた。

運転席の男は飛ばし気味に走らせていた車のブレーキをゆっくりと踏み込み、スピードを充分に緩めた後、音を立てないように路肩に止めた。
バイクも同じくその隣に停止する。

 

「さて。いっちょやるか。」

運転席の男は、オープンカーのドアを開けないまま、ひょいと身軽に車から飛び降りた。
男は黒いスーツに黒のハットという出立ち。
長身ですらりと伸びた脚。帽子からは長めで外跳ねの髪が覗いている。
男は周りをぐるりと見渡した後、ぐっと帽子を深く被り直した。

続いて、白い着物に縞柄の袴を身につけた男が、先ほどのスーツの男と同様、後部座席から飛び降りる。
細身の体で腰には長い日本刀を携えている。
少し長めの前髪の分け目からは鋭い眼光を覗かせている。
寡黙なのか、何も語らず洋館を睨みつけた。


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