俺は黒沢のお母さんの話を聞きながら、知らぬ間に涙を流していた。
あいつら3人の驚いた顔を見て、初めて、自分が泣いていることに気づいた。
電話の向こうのお母さんの声も涙交じりになっている。
お母さんは最後に、ずっと寝たきりだったため筋力回復のために少しリハビリを要するが、それが終わったら復学することになると教えてくれた。
『あの子が戻ってきたのもあなたたちのおかげです。本当にありがとうございました。』
「あいつに『頑張れ。みんなで戻ってくるのを待ってるから。』って伝えてください。ではまた。さようなら・・・」
電話を切った後、お母さんから聞いた話を3人にも伝えた。
みんな、俺と同じように涙を流していた。
もちろん、嬉し涙だ。
「俺たちのやったことは間違いじゃなかったんだな。」
「いつ戻ってくるんだろ?」
「戻ってきたらすぐサークル入ってもらおうね。」
「もちろん。それまでに曲のレパートリー増やしておこうな。」
それから1ヶ月後。
俺の部屋で4人集まって曲の選定をしていると、インターホンが鳴った。
「は〜い・・・。セールスかな?ちょっと出てみるわ。」
ドアをそっと開けると・・・
黒沢のお母さんが立っていた。
「こんばんわ。」
「うあっ、どうもお久しぶり、です・・・どうぞ、上がってください。」
いきなりの訪問に全員ビックリ。
さっきまでダラダラ座っていたのにみんな直立不動状態だ。
「これがあなたたちが再現してくれたあの子の部屋?・・・私が片付けに来た時の雰囲気そのままね〜。」
「ええ、あいつが戻ってくるまでそのままにしようと思ってるんですよ。」
「へぇ、そうだったの〜。・・・そうなんだって〜、薫〜。」
「はいは〜い。」
玄関から聞き覚えのある声・・・
「じゃ〜ん!」
黒沢がポーズをつけて玄関に現れた。
「黒沢っ!?」
俺たち4人は玄関に走って黒沢を出迎えた。
そして声を揃えて、待ちに待った言葉を伝えた。
「おかえり!」
「・・・ただいま!」
END