God Almighty
俺の名前は北山陽一。
超イケメン、超実力派の超人気売れっ子マジシャンです。
今も、ほら、こうやって大勢のお客さんを集めて、華麗にマジックを披露しています。
『今日は肉の特売日でぇ〜す!今日は肉が、安いっ!肉っ!肉っ!肉のっ、大特価っ、ですよ〜!!』
『♪ぴんぽんぱんぽ〜ん。迷子のお客様を・・・』
「え〜ん!ママ〜、ガチャポンしたいよぅ〜!え〜ん!」
「ダメって言ってるでしょ、さっきから!」
・・・少々騒がしいみたいですけどね、気にせず進めましょう。
手の中のハンカチを揉んで・・・えいっ。
はい、鳩出ました鳩!どうですかお客さん!
・・・ノー・レスポンス・・・?
俺のマジックが素晴らしすぎて驚きすぎちゃったかな、お客さん。
こほん。・・・次のネタ行きましょう。ね。
「ぅお〜ぃ、手品師!お前の手品、つまんねぇなぁ!」
・・・無視無視。無心無心。
「ヘっタクソぉっ!へっこめ!」
いらっ。
いや、ダメだダメだ・・・無視無視。無心無心。
「帰れってんだよ、バーローぃっ!」
むかっ。
イマドキ、「バーロー」なんてコトバ使いやがって、このクソジジイめ。
い・・・いや、ダメだダメだ。
ムカついたら負けだ。
無視無視。無心無心。
「お前みたいなヘタクソ、さっさと手品師やめちまえ〜!!」
ぶちっ。
あれ・・・コメカミの血管とともに、何かブチッ、って音が・・・
「あ、ピエール三世(鳩)の首が。」
唯一無二の親友兼相棒であるピエール三世が天に召されたことで、急遽幕が引かれた。
そこで今日の出番は終了だ。
「鳩を使ったマジック、もうできないなぁ・・・明日から何をやろうかな。」
手品のタネを片付けながら呟いていると、ここの興業主であるマジシャンがやってきた。
「北山くん、あのね、もう明日からのネタ考えなくていいから。」
「は?何でです?」
「見ててわかるでしょ〜?アンタのネタだけ全然っ、全っ然っ!ウケてないでしょ!」
「そうですかねぇ?」
「そうですかじゃないよ!しかもいくらウケなくてもね、客前で鳩殺しちゃダメ!」
「いや、あれは不慮の事故で・・・」
「というワケで、明日からもう来なくていいからね!」
「え、あの、ちょ、急に『来なくていい』なんて言われても困ります!今月の家賃とかどうやって払えば・・・」
「あ、この週刊誌、もう読んじゃったからアンタにやるよ。ほら、この記事。
大学教授に超常現象を信じさせたら、即、100万円もらえるらしいぞ?
アンタも一端(いっぱし)のマジシャンなら、そいつダマくらかして100万円ブン取ってきたら家賃も払えるんじゃないか?
じゃ、私は今から出番あるから、この話はこれでおしまい!」
興業主のオッサンは一気にそう言いきると、俺の返答も待たず、気持ち悪いほどの作り笑いを浮かべながらステージへと向かっていった。