BattleKitchen
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たいそう広くて使い勝手のよい宿のキッチン。 傍らに置かれたこの地方特産の食材たち。 そのまた横にエプロン姿のスタンの姿。 何故彼がこんなところでサラダでも作っているのかというと、発端はルーティである。 いつものように彼女は宿に泊まるさい、値切り交渉を始めた。 だが相手とて商売人。 三十分にも及ぶ熱き戦いの果て、相手はある条件付きでの宿代カットを提示し、ルーティもそれを呑んだ。 その条件と言うのが泊まっている間の夕飯はすべて自分達で作ること。 そしてじゃんけんの結果、その夕飯担当をスタンが引き受ける事となったのだ。 家にいたとき、リリスが成長するまで一人で、成長した後は手伝いとして料理の経験があるため、一応食えるものは作れるつもりだ。 それに毎食作るとなれば大変だろうが夕飯だけなら何とかなる。 なる筈だったのだけれど・・・・・・ スタンはサラダ菜を千切りながら溜息をついた。 溜息の原因は背中にへばり付いている人形のような少年。 「どうした。手が止まってるじゃないか」 「・・・リオン、離れろよ」 睨みつけながら言うが、相手は気にした様子もなく、 「何か問題でもあるのか?」 「ある・・・に決まってんだろ」 「一体どんな」 「っ!」 スタンの体がびくりと震えた。 リオンの言葉が吐息と共に耳を擽る。 「どうしたんだ」 「ど、どうって・・・・・・あ、コラ!」 するりと、冷たい手がエプロンの裾から侵入し、胸をまさぐり始めた。 「ちょ、やめろってば!」 「声を上げていいのか?誰か来るぞ」 「うっ」 スタンは慌てて口を塞いだ。 キッチンの扉は全開だし、近くには居間がある。 いつ誰が来るかわからない。 その隙にリオンは更に服の中に手を入れだした。 「やっ、離せ・・・っ!」 「それは断る」 「ひゃっ!」 かりっ、と耳をかまれ、塞いだ口から嬌声が漏れる。 「ちょ・・・ホント、やめ・・・・・・」 じわりと目の端に涙が浮かぶ。 しかし止める声も聞かず、悪戯な手は更にズボンに掛かり、 「ぐっ!」 かけてなぜか突き刺さるような嫌な音の後止まった。 「なぁに、やってんのよ、このくそガキ・・・・・・っ!」 「ル、ルーティっ!」 キッチンの入口で、鬼人のごとき憤怒の形相のルーティを見て、スタンは慌てて服を正した。 ついでに足元で転がってるリオンを見て悲鳴を上げる。 「リオン、おい!どうしたんだよ!!」 よく見たら背中に無数の氷の槍。 「ルル、ルーティ。お前、なんてこと・・・・・・」 「なんて事じゃないわよ!」 床を踏み鳴らす音も荒々しく、近づいたルーティはスタンに指を突きつけ言い切った。 「襲われかけといて相手の心配してんじゃないの!!」 「あ、ご、ごめん」 頭を下げた拍子にポロリと溜まっていた涙が滑り落ちた。 一瞬ぎくりとルーティが動きを止める。 「あ、やべ。カッコ悪い」 ぐしぐしと手荒に拭うスタン。 その手をルーティは止めた。 「ルーティ?」 「あんたバカ?ンな事したら目ぇ傷めるだけじゃない」 言いながら持っていたハンカチで涙を拭う。 「ほんっと手間かかるんだから」 「ありがとう、ルーティ」 にっこり笑って言うと、ルーティは赤くなった顔をそむけた。 「べ、別にあんたのためって訳じゃないからね。目ぇ悪くしたら戦闘の時アタシに迷惑がかかるんだから」 そしてそっぽを向いたまま、臥したリオンの足を掴む。 「夕飯。美味しいの作んなきゃ怒るわよっ!」 そんな言葉を残して、ルーティはリオンと共にキッチンを出た。 「いい匂いだね」 十分くらいして、やってきたのはウッドロウだった。 「順調かい?」 「はい。ウッドロウさんはどうしたんですか?」 「つまみ食いだよ。あんまり美味しそうなのでね」 そう言い、近づくと鍋の蓋を開けた。 「ボルシチか・・・」 「よく家で作ってたんです」 「へぇ・・・・・・」 それからは他愛ない会話と作業を続ける。 しばらくたってスタンはぴたりと包丁の手を休めた。 さっきからちらちら気になっていたが、どうも見つめられているようだ。 スタンは思い切って訊いてみた。 「あの・・・・・・」 「なんだい」 ウッドロウは微笑を持って答える。 「なんか、俺の顔についてます?」 「とくに何も付いていないが。どうしてそんなことを訊くんだい?」 「やっ。なんとなーく見られている気がして・・・・・・変なこと言ってすみません」 思い過ごしかと思っていると、ウッドロウは微笑を崩さず、 「いや、実は見惚れていたよ」 「なっ!」 とんでもない科白に、さっと顔に朱が走る。 「何言ってんですか!」 慌てるスタンの様子を、ウッドロウはさも可笑しげに、 「本当の事だよ。できれば毎日そんな姿を見たいな」 「あんまりからかわないでくださいよっ」 「からかっているつもりは無いけどね」 ウッドロウはふっと笑みを引っ込めた。 「今言ったのはすべて本心だ」 「ウッドロウさん・・・・・・」 見つめる目は確かに真剣で、金縛りにでもあったかのように体が動かない。 「スタン君」 「あっ・・・・・・」 手が頬に触れる。 顔が近づく。 そのまま重なるかと思いきや、 「フィアフルフレアっ!」 戦闘中でもこうは行くまいというほど気合の入りまくった掛け声と炎の霰がウッドロウに直撃。 哀れファンダリア王子は消し炭に。 「無事か、スタン!」 「ディムロス!!」 キッチンの入口には、なぜか人の姿をとり、肩で息をしているディムロスがいた。 ディムロスはスタンの元まで走りよると、そのまま炭状態のウッドロウを勝手口から放り出した。 「――よしっ!」 「ディムロス!何すんだ!!」 仲間に行われた凶行にスタンはディムロスに詰め寄る。 だがその剣幕に後ずさるでもなく、逆にディムロスはスタンの頬を両手でがっしり包んだ。 「スタン・・・・・・あまり隙を見せるなといつも言っているだろう」 間近で悩ましげに眉を寄せるディムロス。 「ちょ、隙って何のことだよ!」 「頼むから危険な目には合うな。こっちは心配でならないんだぞ」 「・・・言ってる意味がわかんない」 「まぁ、そこがお前のいい所でもあるんだがな」 苦笑と共に自己完結されて、スタンの頭は疑問符でいっぱいだ。 だがとにかくこの場ですべきことは、 「ディムロス・・・手ぇ、どけて」 「手、か」 ディムロスは少し悲しそうな顔で、 「もうしばらくこうしていたいのだが・・・いけないか?」 「ディムロス・・・・・・?」 「いい訳あるかっ!」 怒号と共に、ディムロスの頭へ巨大ピコハン直撃。 首からメキリととんでもない音がして、ディムロスはその場に臥した。 「リオ・・・うぉっ!」 名前を言い切る前にリオンがタックルしてきた。 「お前は・・・油断もすきもない・・・・・・」 「リオン、怪我大丈夫か!?」 「うるさい!」 言うやいなやリオンはスタンを肩に担いだ。 一体どこにそんな力があるのかと、スタンは一瞬自分の身に起こった事よりそっちに関心する。 だがリオンが歩き出してすぐ我に返ると、 「ちょ、何やってんだ!」 「このままここにおいて置けばまた誰がちょっかい出すかわからん・・・」 「おい!夕飯、夕飯はーっ!!」 「それよりこっちの腹ごしらえのほうが先だ。――さっきから飢えて仕方がない」 「何の――――っ!!」 なんて叫んでみてもリオンの足が止まる事なんてなくて、宿の一室に一直線。 ――――結局肝心の夕飯はどうなったかと言うと当然外食となり、余計な出費に憤るルーティが見受けられたが、それを二人が知ったのは一夜明けてからだった。 |
あとがき
リクはラブラブ甘甘なリオスタ。
所々スタン総受けでリオン若干鬼畜。
すっげぇ書いてて楽しかったです(爆)
一応ラヴラヴになっているかは疑問ですが、所々スタン総受けはクリアーしてます?
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