early in the afternoon
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旅の途中立ち寄った片田舎の町。 スタン達は通ろうと思っていた街道が土砂崩れで通過できないと知り、数日間この村に世話になる事になった。 村の人たちはみんな親切で、「いい所だな」と言うスタンの云葉にも「そぉ?ただの田舎じゃない」と言うルーティの暴言にもニコニコ笑っていた。 そんな、のどかな村のある一日・・・ 「あら?」 ルーティは武器屋からでたところで、うろうろしているリオンに出会った。 「あんたこんな所で何してんの?」 「お前には関係ない」 ぷいっと向こうを向く。 「あー?何よ、その態度は。年上への礼儀ってもんがあんたには無いのぉ?」 「そう思うんだったらもうちょっと年上らしく振舞ったらどうだ」 「あたしのどこが年上らしくないのよ!」 「戦闘中金ばかり拾ってないで少しは戦え。そうすれば挨拶くらいはしてやる」 「んな!なっまいき〜〜〜!!だいたいお金はあたしの命よ!?目の前にあんのに見逃すなんて馬鹿やら無いわよ!!あー、ほんっとむかつく〜〜」 頭から湯気を出しながらルーティが宿に向かおうとすると 「おい」 「ああ!?」 「あの馬鹿は・・・スタンはどこだ」 多少ためらいながらリオンは訪ねた。 「スタン?さあ、道具屋に行くとかいってたわねぇ・・・」 「そうか」 「あ、ちょっと、スタンに何の用事よ?」 「お前には関係ない」 「なっ!?教えてあげたのにその言い草はなによぉ!!」 きゃんきゃんと喚くルーティに踵を返すと、リオンは道具屋へと向かった。 「あら、リオンさん」 道具屋の入り口で、リオンはばったりフィリアにあった。 「リオンさんもお買い物ですか?」 フィリアの手にはグミや食料の詰まった紙袋が握られていた。 「いや・・・別に」 言いながら素早く店内を見回す。 「どうかなさいました?」 フィリアが不思議そうな顔をして聞く。 「・・・スタンはいないか?」 「スタンさん・・・ですか、さぁ・・・どこにいらっしゃるのかしら?」 『スタンなら村の南にある丘へ行くのを見たぞ』 「あら、クレメンテ見てらっしゃったの?」 『うむ、何気なしに道具屋の窓を見たら登ってゆくのが見えたんじゃ』 「そうか・・・」 「あ、リオンさん、スタンさんに何か・・・?」 「別になんでもない」 そう言うと、リオンはすたすたと去っていった。 「どうなさったのかしら・・・?」 『スタンが何かしたんじゃろうか・・・?』 フィリアとクレメンテはリオンの背中を見ながら、二人して首をかしげた。 『坊ちゃん、坊ちゃん』 「何だ」 丘へ続く小道で、シャルティエはマスターに向かいさっきから感じていた疑問を投げかけた。 『スタンに何か用事でもありましたっけ?』 「・・・別に」 『別に用事も無いのにスタンの事探しまわってたの?』 シャルティエは多少驚いたような声で言った。 用件も無いのに人を探すなんて・・・ それは、他人に関心の無いリオンの性格からして考えられない事だからだ。 『坊ちゃん、何かありました?』 シャルティエは怪訝そうに、マスターへ声をかけた。 「・・・・・・」 リオンは黙々と道を登る。 『坊ちゃん』 「・・・うるさいぞ、シャルティエ。少し黙れ」 『・・・ハイ』 結局疑問は解決されず、シャルティエは沈黙を余儀なくされた。 村から離れた小高い丘の上。 まるで村を見守るかのように生えた大きな木。 その枝は方々まで伸び、動物や人に休息の場を提供している。 その木の根元で、一人の青年がぼんやりと座り込んでいた。 その額や腕にはうっすらと汗の跡。 「いー天気だなぁ・・・」 『こら、スタン!サボるな!!』 ぼうっと空を見あげていたスタンは、傍らに立てかけられたディムロスに不服そうな視線を投げた。 「いーじゃん、ちょっとくらい休んだって。もう一時間も素振りばっかりやってるんだぞ」 『たかが一時間で音を上げるな!!』 「お前はいいよ、ただ振られてるだけなんだから」 そう言うと又空を見上げ、 「リリスやじっちゃん、今ごろ何してるかなぁ・・・」 『ス〜タ〜ン〜!』 「ほんっとうに、のどかでいい天気ぃ〜・・・」 『のどかなのはお前の頭だ!!』 「・・・・・・」 『おい、スタン』 「・・・・・・」 『ス〜タ〜ン〜〜〜?』 声をかけても返事が無い。 すぅすぅと安らかな寝息が聞こえた。 『・・・まったく!』 ディムロスは呆れたような声で言うと、そのまま昼寝の邪魔をしないように黙る事にした。 「あ・・・」 大木の根元に、見覚えのある金の髪をみて、リオンは小さく声を上げた。 近付くと、いつも強い光を持った海色の目は閉じられ、小さく開かれた唇から穏やかな呼吸が漏れていた。 『何だ、スタンなら寝ているぞ』 『どうします?坊ちゃん』 シャルティエは伺うようにリオンへ声をかけた。 「そうだな・・・」 リオンはスタンの前に片足をつけると、その手でスタンの額に触れた。 髪や額が少し濡れていた。 首に指を滑らすと、相手はかすかに身じろいだ。 鮮やかな金の髪は、そよ風に遊ばれ、日の光を浴び反射する。 まるで春の日の、太陽のようだ。 現に、導かれるようにスタンの周りには人が集まってくる。 自分もそのうちの一人なのだと、気がついたのはいつだろう? 最初の頃はとにかく否定して、突き飛ばして、拒絶していた。 けれど、それにもかかわらずスタンは手を差し伸べてきた。 どれほど傷ついても、しばらくすればそんな事忘れたように笑って接してくる。 その笑顔を見るたび、胸を占める、言いがたい感情。 それがなんなのかわからず、すべてスタンのせいだと思い、尚いっそう拒絶した。 "こいつの側にいると、僕は僕で無くなる" 怖かった。 今まで気づき上げてきた檻を壊されるのが。 冷たい、けれど絶対安全だと信じていた場所から連れ出されるが。 変わる事が怖かった。 けれど、差し出された手をとって始めて分かった。 今まで恐怖だと思っていた感情が、本当はなんなのかを。 「・・・んぁ?」 突然スタンが目を覚ました。 思わず手を放し立ち上がるリオン。 「あ〜・・・リオン?」 まだぼうっとするのか、ごしごしと目を擦りながら 「何してんの?」 「・・・お前の方こそここで何をしている」 内心の動揺など微塵も見せずリオンは言い返す。 「んん〜、ディムロスと一緒にぃ、稽古しててぇ、疲れてぇ、寝てたぁ・・・」 喋るたびにこくりこくりと首が揺れる。 『スタン、お前本当は今も眠っているだろう』 隣でディムロスが呆れたような声を出した。 「んん・・・で?リオンは、どしたの?」 「別に・・・ただ立ち寄っただけだ」 そう言うと、リオンは踵を返し立ち去ろうとした。 が。 「・・・なんだ?」 マントの裾を掴まれ、振り返った。 「ん?いやぁ〜、せっかくいい天気なんだから一緒に昼寝でもどうかな・・・なんて」 ふわり。 海色の目が細められ、零れ落ちる日向のような笑顔。 「・・・・・・」 「あ、なんか用事あるんだったらいいけど・・・」 スタンは慌ててマントを離す。 「・・・・・・・・・」 『坊ちゃん?』 「・・・・・・・・・」 リオンは無言のままスタンの前まで来ると、 「わっ!」 スタンの膝に頭を預けた。 『なっ!』 『ちょ、坊ちゃん!!』 騒ぐソーディアン達に耳も貸さず、 「今から半時間ほど寝る。起こすなよ」 「リオン!これじゃ俺が眠れないよ!!」 「お前は寝すぎるからちょうどいいだろう」 「でも・・・」 「うるさい」 言うとさっさと目を閉じてしまった。 「・・・マジ?」 『あつかましい奴だな!』 『坊ちゃ〜ん・・・』 もう本当に寝てしまったのか、周りの声にも気づかず目を開く様子は無い。 「・・・・・・しょーがないか」 『スタン!!』 「ディムロス、そういうわけだから稽古はもうちょっと延期な」 『おい、そんな勝手に!』 「ディムロス、リオンが起きるよ」 しーっと口元に人差し指を添えると、膝の上で眠るリオンに視線を移した。 こうしていると普段のキツさが隠れ、その辺にいる少年のようだ。 スタンは微笑んだ。 ほんの少し膝が重いけど、凄く幸せな気分。 見上げた空は透き通るような蒼と柔らかな白のコントラスト。 「いい天気だなぁ〜・・・」 呟きながら、膝上で眠る少年の髪をそっと撫でた。 それは、たとえようもなく平和な時間。 あるのどかな村の、一日でした。 |
あとがき
13000自爆キリ小説。
う〜ん、ほのぼの〜(笑)
リオスタって悲劇のイメージが強いのでたまには・・・と言うことで。
スタンの目、いつもは空色とかって例えるんですが、
今回はちょっと違った趣向でいこうかと・・・
最近デスティニーやってないんでみんなの口調がはなはだ妖しいですが、
こういう雰囲気って結構好き・・・v
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