恋とはどんなものかしら?

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1・一緒に生活できない人や亡くなった人に強くひかれて、切なく思うこと。また、そのこころ。特に、 男女間の思慕の情。恋慕。恋愛
2・植物や土地などに寄せる思慕の情





昔好きだった人がいる。
でも本当に好きだったかなんて分からない。
ただせがまれるままに「彼氏」になって、何ヶ月かたったら向こうから「さよなら」を言ってきた。
その時も悲しいとか、どうしてだろうとか考えずただ、これで「彼氏」じゃなくなったんだと思っただけだった。
その事を友人に言ったら相手は呆れながらこういった。
『お前、それって好きとは違うだろ』
それじゃあ。

恋って、どういうモノ?






「ねぇ、ミント」
風薫る昼下がり。
絶好の昼寝日和の事。
クレスは木陰に寝転びながら傍らのミントに声をかけた。
「なんですか?クレスさん」
ミンとは呼んでいた本からちょっと顔を上げた。
「ミントって恋をした事はある?」
「ええ!!」
驚いた拍子に持っていた本がばさりと地面に落ちた。
「な、何を言うんですか!いきなり!!」
「ミント、顔赤いよ?」
クレスが不思議そうな顔でミントを見る。
「そ、それより、どうしたんですか?いきなりそんな事を聞くなんて」
ミントは顔の赤さをごまかすように訊き返した。
「うん、ちょっと昔の事で・・・ねぇ、それでミントは恋をした事ってあるの?」
昔の事・・・と言う発言にちょっと動揺しながらもミントは答えた。
「いえ、まだ・・・」
「そうかぁ・・・」
「あ、でも本で読んだことがあります。人を好きになると心臓がどきどきすると・・・」
「心臓がどきどき・・・ねぇ」
クレスはミントの言葉を反芻しながら体を起こすと、
「ありがとう、ミント」
笑ってその場を去っていった。
―――人を好きになると心臓がどきどき・・・
クレスの背中を見送りながら、ミントは服の上から胸を抑えた。
―――心臓が・・・どきどき・・・
(お母様、私病気でしょうか?)
高鳴る胸を抑え、ミントは一人苦悩していた。





「えっ?人を好きになった事があるかって?」
ミントの元を離れ、やってきたのは、アーチェの所。
「どーしたのよ、突然」
「うん、ちょっと気になってね。どんな感じなのかなぁって」
アーチェは人差し指を頬に当てると
「んん〜、あるにはあるけどぉ」
「どんな感じ?」
「どんなって・・・」
「人を好きになるとどんな感じ?」
「う〜ん、そうだなぁ。・・・その人に会うと体が熱くなるかな?」
「敵に会った時にもなるよ?」
「そーゆー熱さじゃなくて、なんていうのかな?」
うんうん唸りながら出した言葉は
「体の中からこう、沸騰しそうな感じ?あーもう!言葉じゃ説明できないぃ!!」
「あー・・・それじゃあ、他の人にも聞いてみるよ」
ついにかんしゃくを起こしたアーチェから、クレスは礼を言いながら逃げた。
「そんなの、あたしだってわかんないよ・・・」
逃げるクレスの背中を見ながらアーチェは呟いた。





亀の甲より年の功。
次にやってきたのはパーティ内最年長のところ。
この人なら・・・と思ってやってきたが、
「さあなぁ・・・」
まるっきり頼りがいのないお言葉を返された。
「さあなぁって・・・」
「そんなもの、私にもわからんさ」
「クラースさんにも?」
「ああ」
納得できないような顔をするクレス。
クラースはまるで子供に言い含めるように優しく言った。
「いいか、恋なんてモノ理解しようとする方が無理なんだ」
「どうしてですか?」
「恋って言うのは理屈も論理も常識も通用しない。好きだという気持ちだけで動くものだ」
「・・・?」
「たとえばクレス、お前は両親の事が好きか?」
「好きです」
「友達の事も好きか?」
「好きですよ」
何を当然な事を、とクレスは思う。
「じゃあ理由は?」
「へっ?」
「両親や友達を好きな理由を言えるか?」
「・・・・・・」
そんな事、考えた事もなかった。
両親は、好き。
友達も、もちろん好き。
けれどその理由となると・・・ちょっと思いつかない。
「恋と言うのもそれに似ている。けれど決定的に違う」
「・・・よく分かりません」
「そうだろう?私もわからない」
難しい顔をして黙り込むクレスを見て、クラースはにやりと笑った。
「そんな、散々色々な事を言っておいて・・・」
むっと不貞腐れた顔をするクレス。
「すまんすまん。だがな、恋とはそういうものだ。どれだけ理解しようとしても出来ない。解明不可能な病気みたいなもんだ」
「病気?」
「ずっと続く恋とあっさり無くなる恋がある。病気というのに似てるだろう?」
(そういうものだろうか・・・)
「ま、症状の事例に好きな相手と二人っきりの時周りの音が消える・・・なんてものもあるらしいがな」
「はぁ・・・」
なんだか上手く煙に巻かれたような気がする。
「あの、じゃあ僕はこれで・・・」
首をひねりながら帰っていくクレスの背中へ向かい、
「私にも分からんよ、恋なんてモノ・・・」
呟いて、自嘲をもらした。





で、結局行き着くところは、小さい頃からの頼りがいあるお友達。
「はぁ、なんだよ。お前熱でも出たのか?」
相談するなりチェスターは弓の手入れを休め、クレスの額に手を当ててきた。
「どうして僕が熱出た事になるんだよ」
不機嫌も露わにそれを退かす。
「ああ、悪い、悪い。でも本当にどうしたんだ?突然そんな事言い出して」
「ちょっとだけ、昔の事思い出した」
怪訝そうな視線が痛くて目をそらす。
「昔・・・ああ、弟弟子に彼女盗られたアレだな?」
その当時、この話は村中の噂となり、『クレス超鈍感伝説』なるものが築き上げられた。
「あれ、恋じゃなかったんだよねぇ」
「当たり前だろう?何処の世界に本気で惚れた女横取りされてニコニコ笑ってる奴がいるんだよ」
しみじみ昔を振り返るクレスにチェスターは呆れた声を出した。
「それじゃあさ、恋ってなんだろうね」
「さぁな」
「チェスターは恋をした事がある?」
「・・・」
人の声など、ここ以外しない。
張り替えたばかりの弦を弾く音が、森の喧騒に掻き消える。
黙り込んだ幼馴染の顔を覗き込むようにクレスは、
「チェスターは、好きな人っているの?」
「いる」
「・・・へぇ」
耳障りな森の騒音の中で、その小さな声はやけにはっきり耳に届いた。
ほんの一瞬、つきりと何かが胸に刺さる。
欠片ほどのそれは、瞬く間に胸全体に広がり、づきづきと焦がすような痛みに変わる。
こんな痛み、知らない。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
訪れた、絶えがたい沈黙。
風が木々を揺らす音。
鳥の鳴き声。
遠い、川のせせらぎ。
諸々のノイズより、自分の心音の方が鮮明に聞こえる。
(あんまり、ここには居たくない・・・)
感じたままに腰を上げようとする。
だが、
「なあ、クレス」
チェスターに手を捕まれもう一度地に腰を下ろす。
「・・・何?」
「恋ってさ、こういう感じじゃないか?」




幼馴染の真剣な顔が近付いて
(あれれ?)
・・・近すぎてぼやける。
そのまま、うっすら開いた唇に押し当てられた温かいもの。
体に回された相手の腕、重なる二人分の心音。



―――心臓がどきどきして。
――――――体中の血が沸騰しそうなほど熱くなって。
―――――――――周りの音が掻き消えて。
皆がいってたのって、こう言う事?




「どんな感じだ?」
重ねられていた唇が離れると、チェスターはクレスに訊いた。
二人の間はまだ雫ほども離れていない。
(心臓がどきどきして、体中の血が沸騰して、周りの音が掻き消えて)
「よくわかんない」
クレスの言葉に、チェスターはがっくりと肩を落とした。
「あのなぁ・・・」
「だから」
真っ赤な顔で、チェスターの袖を掴んで、
「もう一回、して?」
「えっ・・・」
やっと、わかったような気がするから。
「もう一度」
確かめたい。
俯いたまま、うなじまで真っ赤に染まるクレスを見て、
「いいぜ」
―――何度でも気がすむまで
笑いながら、優しいキスをした。




今回の事でわかったのは、僕がチェスターに『恋』をしているという事でした。

あとがき

13000自爆キリ小説です。
お初のTOP小説がこんなんかい・・・
書いてる途中で意味不明になっちゃいましたね〜
クレス中心と言うよりクレス総受け(笑)
でも最後は結局チェスクレ。
クラースさんの薀蓄を考えていたら言葉の迷宮に迷い込み、
出来上がったらまるでどこぞの古書痴のようになってしまいました。
あ゛あ゛あ゛あ゛〜〜〜、だめだぁぁぁぁ〜〜〜(泣)

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