Gift from Aplayer = Ayasato sama.
『旅は道連れ世は情け』

ミルラの雫を集めるためのキャラバン隊。

最初は女の子だけだなんてと不安がられたその旅も、回を重ねるごとに笑顔で見送られるようになって、今ではそこいらの男の子たちより、よっぽど頼りになるとの噂まである。

「今年はどこまで行ってみようか?」 おっとり切り出すガーネット。
「んじゃ、ちょっと遠出してみよう!」 なんでもないことのように答えたのはヴィ・ワ。
ちょっと遠出でパパオパマスに揺られレベナ・テ・ラまで。
その途中でも雫を取って、もちろんここでもしっかり雫を手に入れた。

「ね〜、ついでにマグ・メルに寄ってみようよ〜」

あのまふまふに抱きついてやる、と意気込むヴィ・ワの言葉で更に先に進むことが決定した。
すっかり金色の瘴気ストリームを抜けるのにも慣れてしまって、確かにこれでは噂にもなるだろう。

そうしてカーバンクルとお喋りを楽しんで、ヴィ・ワは背中に抱きついたりもして、おっとりのんびり楽しく過ごす。
気がつけば、そろそろ村に戻らなければならない季節。
すっかり仲良くなったカーバンクルたちに見送られ、二人は再び金色の瘴気ストリームを抜けた。

レベナ・テ・ラを通り過ぎ、湿原へ続く一本道の途中で日が暮れる。
完全に暗くなってしまう前に街道のわきに手早くテントを張って今宵のキャンプの完成である。

ヴィ・ワは料理がまったくできない(というよりしようとしない)ので、必然的に料理係はガーネットとなる。
本日のメニューはひょうたんいもとほしがたにんじんのシチューと田舎パン。
パチパチと火の爆ぜる音を聞きながらの夕飯もすっかり馴染んだ風景で。

「ん〜、いつ食べてもガーちゃんの料理は美味しいね〜」

嬉しそうに皿を平らげ、おかわりまでしたものの、どこかまだ物足りなさそうな顔のヴィ・ワがごそごそと馬車をあさる。

「あ、デザート食べるなら奥の袋の中にあるからね」

その身体のどこに食べ物が入っているのか、という食欲の仲間の背中にガーネットの声がかかる。
デザート、という言葉にヴィ・ワはうきうきと馬車にある食料袋を開けて………固まった。

「…またリンゴ?」
「しょーがないでしょ。いっぱいあるんだもん」

悲しげなヴィ・ワの問いかけに、洗い物をしているガーネットは肩をすくめた。

いまだ袋いっぱいに詰まったリンゴはヴィ・ワの家の樹から取れたもの。
買い足してもいないのに、毎年、旅の最後までのこる食料だったりする。

「ううっ。せめてパイとか、ケーキとか、タルトとか。生とジャム以外の食べ方がしたいよぅ」

それでも食べないよりはと噛り付いていたヴィ・ワの言葉に、やっぱり栄養は胸にいっているのかしら、なんて思っていたガーネットも頷いた。

「確かに。いいかげんそんな手の込んだお菓子が食べたいね」

女の子ですもの。
デザートは別バラ、とばかりにガーネットの頭の中にもキラキラと華やかなお菓子が思い浮かんだ。
チェリーパイにリンゴのタルト。
ブドウはジュースで飲んでもいい。
今年は帰ったらお菓子でも作ろうかな、と洗い物の手を止めて考えていたガーネットの耳に聞きなれた声が入ってくる。

「お手紙を届けに来たクポ〜」

そこには旅の初めからお馴染みの仕事熱心なモーグリがパタパタと翼をはためかせており、それを見た可愛いもの、もふもふなものに目が無いヴィ・ワがリンゴを投げ出し早速抱きついて、苦しいクポ〜と非難される姿があったのだった。

送られてきた手紙は一通。
宛名はガーネットとヴィ・ワ二人に。
送り主は…。

「スイ・レンから?」

旅の仲間の突然の便りに、村で何かあったのだろうかと二人首をかしげた。
丁寧に封された手紙を開け、熱心に読み込んでいた二人がふいに耐え切れないとばかりに笑い出す。

腹を抱え涙まで流して笑うヴィ・ワと、そこまでではないけれどそれでも苦しそうに笑いつづけるガーネットにモーグリも首をかしげる。
少しばかり息の落ち着いたガーネットが返事を書いて、お仕事熱心なモーグリはそれをもって去っていった。

「一体、なにが書いてあったクポ〜??」

ふりふりと頭の上の毛玉を振りながらのモーグリの呟きは、しんと静まり返った月夜に消えたのだった。

モンスターでも敵わない女の子たちをいとも容易く打ち負かしたスイ・レンの手紙。
もしかしたら、彼女が一番の強者なのかもしれない。

…これで終わり?
…いえいえ、二人を打ち負かしたスイ・レンの手紙を覗いてみましょう。

- - - - -

はいけい、ガーネットさま、ヴィ・ワさま。

モーグリの毛がほわほわと暖かそうになってくる季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

前回の手紙より、そろそろこちらに戻ってくるころと思います。
つきまして、一つお聞きしたいことがあるのですが。

チェリーとリンゴはパイがいい?
それともタルト?
もしかして、どちらも?

できればジェゴン川を渡るまでにお返事を下さいね。
それでは、道中お気をつけて。

あらあらかしこ。

旦那さまたちのお帰りを心待ちにしている妻こと
スイ・レンより

追伸
ヴィ・ワの家のリンゴが新記録更新中。
現在42個。

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返事?
返事はもちろん、どっちも食べる、にしておきました。

…今度こそ終わり。

管理人・田林から…

またまた「An even break」(ジャンルは違います)のあやさとさまから、素敵なSSをいただいてしまいました。

おんなのこたちの日常というか、普段の様子がありのままに表されております。
うん、ヴィ・ワは料理しません(断言)。そしてガーちゃんの手料理は天下一品です(断言その二)。そしてスイ・レンは最強です(断言その三)。申し合わせた訳でもないのに、おんなのこたちのイメージがぴったりな辺り、本気で震撼いたしました。うふふ、しあわせ。

あやさとさま、ありがとうございました。
2004年4月9日に頂戴いたしました。

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