Gift from Yplayer = Toono sama.
『As a flower blossoms,』

いつものヴィ・ワとガーネットの二人のキャラバン。
それに、今日は珍しく『三人目』が同行していた。

かじ屋の娘、スイ・レンだ。
普段は、故郷にいる事の多いスイ・レンだが、今回の旅はそう危険な場所でもないということなので、久々の旅支度を整えての参加となった。

スイ・レンが初めてキャラバンに参加したのはヴィ・ワとガーネットが旅立ってから、もう随分と時がたってからのことだった。
はりきって同行したはいいが、いかんせん体力も経験も二人にはまったく追いつかないスイ・レン。どちらかといえば・・・・・いや、かなり足手まといな実力の持ち主となってしまっていた。
二人の所が三人になると、そのぶんよく目立ち、モンスターに遭遇する事も多くなる。旅に出て早々、自らに戦力外通告をしたスイ・レンは、それならばと、このキャラバンの金庫番を買って出た。
二人が稼ぐ、保管する。アイテムを集める、保管する。の繰り返しで、気分はちょっと港の女だ。そうこうする内にいつのまにか大金持ちになり、なおかつえらく大層な武器・防具まで支給されて、今はすこしばかり成金の気分を味わっている。

これはこれで、楽しておいしい役どころかもしれない。と思うのは、セルキーの性質故というよりは、スイ・レン個人の性格なのだろう、きっと。

しかしよくよく考えてみれば、体力のないことで困った事は、それこそ星のようにたくさんあるけれど、お金の事で苦労した事は、あまりなかったと我が身を振り返り、そう思う。

ふと、以前ルダの村へ行く途中、連れが渡し賃が足りないというので300ギルを貸したことを思い出す。
彼が、あまりに暗い表情をしていたので訳を聞いてみたら、どうもキャラバンの仲間から“かつあげ”にあったらしい。詳しくを聞こうと思ったが、必要以上に怯えており、それ以降はなにも聞き出せなかった。
ただ、その仲間とはクラヴァットとセルキーの女の二人組みらしい。その時には、セルキーはともかくクラヴァットにも怖いヤツがいたもんだ、くらいにしか思わなかったのだが。
まさかねえ・・・・・? と、前を歩く二人を見るが、いくらなんでもそれはないだろうと思い、その考えを打ち消した。

女三人寄れば姦しい、とはよく言ったもので。年頃の少女たちが集まると、その会話が途切れる事はない。
ましてや一人は普段離れて暮らしているのだ、それぞれが、家族のこと、故郷のこと、旅先で出会った人や、おきた騒動について語り、話に花も咲く。
その花もようやく咲くのを控えようかとなったのは、地図を確認しているガーネットが、少し前を歩き始めた頃だった。
先程までの賑やかさとは対照的に、ふっと広がる静けさに急に寂しくなったスイ・レンは、横を歩くヴィ・ワに先日の他愛もない話を向けてみた。

「そういえばねえ」
「うん、何?」
「こないだルダの村に行ってきたんだけど」
「?」
「あそこ、行くのに渡し舟に乗らなくちゃいけないじゃない」
「ああ、そだね」
「なんだけど、そのときの連れが渡し賃がなくてさー」
「で?」
「結局、しょうがないから300ギル貸してあげて船に乗ったんだ」
「うわー、ヒモだよ、ヒモ。それ」
「う〜ん、言われてみれば? それじゃ何、わたしパトロンヌ?」

一瞬の後、

「あはははは、パトロンヌ!! パトロンヌって・・・・・」

息も途切れんばかりに笑うヴィ・ワに、前を行くガーネットも振り返る。

「な、何? 何話してたの、いったい?」
「いや、それがね〜」

ヴィ・ワの突然の笑いの発作に驚いているガーネットに、一連の会話を伝えると

「パ、パトロンヌ・・・っ、ありえない。パトロンヌとヒモ!!」

と、ガーネットまでがお腹を抱えて笑いをこらえる。

「もー、なにもそこまで笑わなくても!!」
「いや、あまりにもパトロンヌ発言がね・・・・・っくく」
「まだ、言うし!!」
「いや、だって、あはははは。あんたはどこかの有閑夫人か!?」
「いいよ、もう金持ちおばちゃんで!」

少々いじけたスイ・レンに、ようやく二人も笑いを止めフォローをする。

「あー、ごめんごめん」
「にしても、なんでお金、もってなかったんだろうね?」
「ああ、なんかね、前にキャラバンの仲間に“かつあげ”されたって」

それこそ、ありえないよねー。と、二人を見やるとつい今までの笑いは何処へやら、なにやら冷や汗をだして固まっていた。

「ヴィ・ワ? ガーネット?」

「・・・・・。」
「・・・・・。」

ギギギ、と首を軋ませるように振り向いたガーネットが、やっとの事で口を開く。

「・・・・・ちょっと聞くけど」
「う、うん。」
「その連れって、セルキーの、男の・・・・・」
「うん、そうだけど何で知って・・・・・って!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

三人の間に、しばらく沈黙がおとずれる。

ガーネットは何も言わない。
ヴィ・ワも視線が宙を泳いでいる。
そしてスイ・レンは、そういや会話の途中で沈黙が訪れることを『天使が通り過ぎた』と言ったりするんだよね、などとムダ知識に脳裏を巡らせていた。
しかしこの天使様は通り過ぎるのみならず、随分とこの少女たちがお気に召したのか、いっかな移動なさるつもりはないようだ。

そうか、やっちゃったんだ。うん、旅の最初ってお金ないもんね。と、心の中で納得してみたりもした。
二人を責めることはできないだろう。何より、自分の今所持している物モノ・・・・・これらも巡り巡って、彼の懐から移動してきたようなものなのだから。

とりあえず、この場所でいつまでも固まっている訳にもいかないので、天使様にはお帰りになって頂く事にした。

「・・・・・あのさ」
「・・・・・うん?」
「お腹すかない?」
「・・・・・それもそーだね」
「とりあえず、ここ移動してご飯にしない?」
「うん」

そして、三人はとぼとぼと道を進んだ。

いつもなら賑やかな食事の時間、今日ばかりは黙々とご飯をたべながらスイ・レンは思う。
さっきの『パトロンヌ発言』も、あながち外れてもいなかったのではないか、と。
ヴィ・ワとガーネットが外で稼ぎ、スイ・レンが貯える、そしてヒモ呼ばわりされた彼に、少しばかり還元する。
どこからどうみても仕事の忙しいご主人と、暇と財を持て余して若いヒモに貢ぐ有閑マダムの図、である。
そうか、そういう風に世の中は循環しているんだな、とすこしばかり大人の階段をのぼったスイ・レンは、しましまりんごとさかなを、やはり黙々と食べている旦那サマ達の横顔を見て、すこしだけ微笑んだ。

だいじょうぶ、だいじょうぶ。
いくら余所見をしても、本命は旦那サマ達だけだよー。
なんて事を考えていたら、ちょっとだけ吹き出してしまった。

それを目ざとく見つけたヴィ・ワとガーネットは、思わず首をかしげあう。

「ちょっとー、スイ・レン、何なのよー?」
「っくく、いや、なんでも」
「こらー、人の顔みて吹き出して、なんでもはないでしょ!!」
「っはははは、だからほんとになんでもないってばー」
「まだいうか、このー!!」
「さあ、はけ!はいてしまえ!!」

すっかりいつもの調子に戻った少女たちは、また三人並び、
はなのようにさいて、かけていった。

fin.

管理人・田林から…

スイ・レンちゃんの親・Yプレイヤーこと遠野雪音さまからいただきました。

あ、愛されてます。おんなのこたちが愛されておりますっ。お花ちゃんたちですっ。ここまで愛していただけるなんて冥利に尽きます。そして『パトロンヌ発言』に腹の底から笑わせていただきました。面白すぎます、姉さん。我侭を言って、掲載させていただきました。

遠野さま、ありがとうございました。
2004年3月4日に頂戴いたしました。

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