Gift from Aplayer = Ayasato sama.
『リンゴの木のしたで 〜全てが終わった後に〜』

ああ、また今年もそうなのか。

村の入り口に近い商人一家を眺めてそう思う。
自分の家に通じる小道の柵に背を預け、
ガーネットが仰ぐように見上げたそこには、青々とした葉も誇らしげなリンゴの木と抜けるように青い空が広がっていた。

まだ旅をはじめたころ。
ふたりで手に入れた果物の種を手紙につけて送った。
ガーネットの方は途中で、不思議な種を見つけ植え替えてしまったのだけれど、ヴィ・ワの方は、その最初に送った種のまま。
その種が育ちに育って、今では村一番のリンゴの木となってしまった。

毎年毎年、抱えきれないくらいの果実をヴィ・ワとともに拾うのも毎年恒例。
一年の旅の終わりが水かけ祭りだとすれば、
一年の始まりは、このリンゴ拾いだったに違いない。
食べきれないくらいのリンゴの果実と甘い香りを引き連れて、また一年かけて旅をする。
そのリンゴを盗まれたり、突然現れたモンスターにヴィ・ワが投げつけたりしたのも日常だった。

笑って
怒って
泣いて
旅を重ねるごとに、世界は色を変えた。
様々な人に出会い、多くの人との別れがあった。

そういえば、あの伝説の生物にもリンゴをあげたのだっけ。

二人が食べているのを不思議そうに見つめていたカーバンクルにリンゴをあげたところ酷く気に入り、それならばと種を渡した。
あの種は今ごろどうなっているのだろう。
ガーネットはマグ・メルにたわわに実ったリンゴを想像してクスリと笑みをもらす。
全てが灰色がかって見えたあの場所が、緑と黄色と赤で埋め尽くされている。

それはなんて幸せな風景なんだろう。

旅を重ねるごとに色を変えつづけた世界は、最後に劇的な変化を遂げた。
カーテンを開くように、鮮やかになった世界に戸惑いが無いといえば嘘になる。
身体も心もくたくたになって、もう一歩も動けなくなったあの戦いの記憶はまだ鮮明で、
二の腕についた傷跡は時折、幻のような痛みを放つけれど。
それでも、いつかは記憶の中で薄れてゆくのだろう。

そんなことを考えていたガーネットの耳に、聞きなれたフレーズが聞こえる。
情けない声で、助けを求めるヴィ・ワの声にガーネットはもう一度、青々とした葉のリンゴの木と抜けるように青く広がる空を見上げその風景を目に焼き付けた。

「ガーちゃぁああん。たぁすけて〜!!」
「わ〜、今年も豊作だぁ・・・」
「暢気なこと言ってないで拾ってよぉお(泣)」

それは夢にまで見た幸せの風景そのもの

fin.

管理人・田林から…

またまた「An even break」(ジャンルは違います)のあやさとさまの小説がいただけたのがうれしいです。しかも、カーバンクルが出てる…。あの細くて長い爪のような指先(に見える)で、カーバンクルがしましまりんごを興味深そうに持っている姿を想像すると、妙にかわいらしくてどきどきいたします。丸みを帯びた大きな体に、小さなりんご。何かを彷彿とさせるような…トト○!?(待ちなさい)

あやさとさま、ありがとうございました。
2004年1月20日に頂戴しました。

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