Gift from Aplayer = Ayasato sama.
『無題』

それは恋にも似た感情で…。

「なに、まだその文通続いてたの?」

呆れたような、感心したようなヴィ・ワの声が、洞くつの中にこだまする。
ガーネットは、モーグリに手紙の返事を渡しながら、

「別に文通ってわけじゃ…」

“ない”と言いかけて、手紙を貰って返事を書いて、また手紙が来るこの状況は、文通としか言いようがないことに気づいて言葉につまる。

「…文通だわ」

ムムッと眉間にしわを寄せ、いかにも不本意そうに肯定したガーネットにヴィ・ワは笑い声を返したのだった。

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キャラバンの旅の途中で出会った男は、自分の信念を持って外の世界へと飛び出した。
やたらと強気で、ひねくれた話し方をする彼が、なぜ自分に手紙をくれるようになったのかは知らない。シェラの村人が言うには、自分と話をしたのが村を出るきっかけになったらしいのだが…。
「なんだか責任を感じる」と言ったら、ヴィ・ワは「あたしが先に話しかけたんじゃなくて良かった」と胸をなでおろしていた。

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「最近、手紙こないんじゃない?」

ゆれる車の中で寝転んだヴィ・ワが、ふと問うた。
前でパパオの手綱を掴んでいたガーネットは、それが誰の手紙を指しているのかに気づいて、苦笑する。

「いそがしいんでしょ。念願の外なんだし」

整備された街道は、モンスターが出る危険も少なくて、ついつい眠くなる。
大きくあくびをついたあと、さらにだらりと力を抜いたヴィ・ワは、意味ありげな視線を向ける。

「冷たいんだ?けっこう楽しみにしてたように見えたのに」

その言葉に、わずかにほほを染めたガーネットを見て、さらにからかおうとヴィ・ワは口を開きかけた。が、

「それ以上この話題について何か言ったら、一人でミルラの雫取りに入ってもらうからネv」

ふり向いて、笑顔でそう言ったガーネットに、そくざに口を閉ざしたのだった。

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手紙からうかがえる彼の様子は、ひどく楽しそうだった。
一つ謎が解けるたびに、また一つ分からないところが増えるのだと。
それに感心したり、あきれたり、時に心配したり…。
たった一度話しただけの私がどうして彼の心配をしなきゃならないんだとも思ったが、それも次に手紙がくれば、まあいいかと思ってしまう。
もしかしたら、いつかこの手紙を楽しみに思う日がくるのかもしれない。
そう、もしかしたら、もうすぐに…?

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「なんか、変」

モーグリに手紙を渡したあと、ぽつりと呟いたガーネットに、ヴィ・ワは視線を向ける。話の続きをうながすヴィ・ワに、不安を瞳ににじませたガーネットが口を開く。

「手紙が、前みたいにトゲトゲした文章になってる」

瘴気の溶け込んだ水を飲んでいるらしい、と告げるガーネットに、ヴィ・ワもおどろきをかくせない。

「それ、はやく止めなきゃ!」
「うん。やめるように返事は出したんだけど…」

ミルラの雫が入ったケージをガーネットは無意識に抱き締める。
普段、瘴気の中へでも平気でアイテムを取りにゆく豪気さを持つガーネットの弱々しい一面に目を見張りながらも、ヴィ・ワはその腕を掴む。

「ほら、急いで港まで行かなきゃ」

ガーネットを引っぱりながら、明るくそう言うヴィ・ワに、ガーネットもようやく笑顔で大きくうなずいた。

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最後の手紙は、文字さえもとぎれがちだった。
止めた自分を弱虫となじった言葉もふるえてはっきりと読めないほど。
それでも、そんなとげとげしい言葉ではあったけど、「会いにこい」と書いた彼の思いは何だったのだろう。

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今にも雨が降り出しそうな、重い雲がたちこめている。
かつてセルキーの民が新天地を求め進んでいった湿原は、今でも侵入者を阻むようにぬかるみ、瘴気を溶かし込んだ沼の水は冷たくにごっている。
そんな場所でも、輝きを放つミルラの樹の下で、雫はケージを満たす。

「大丈夫?」

他にかける言葉を見つけられず、何てマヌケな質問だろうと思いながらも、ヴィ・ワは、ガーネットに聞かずにいられない。

「うん。平気」

うつむいていた顔をあげ、そう応えたガーネットはいつもと同じで、常に未来を、希望を見つめ、進むクラヴァットの瞳の色をしていた。

「大丈夫」

手にした古びたバンダナを、ぎゅっと握りしめながら。

- - - - -

それは恋にも似た感情で、
いまはまだ、それが痛みを放つけれど、
それさえ未来を見つめる強さに変えて…。

fin.

管理人・田林から…

An even break」(ジャンルは違います)のあやさとさまから戴きました。

まだFFCC自体が発売されて間もない頃。ネットで検索してもFFCCの小説になかなか巡り合えず、飢えていた私が前日の帰りにねだりにねだったら、なんと翌日の午前中に前半を書き上げ、その後しっかり後半まで書き上げてくれちゃいました。その才能に脱帽するばかりです。(ごめんよ、ジャンル違うのに…)彼女曰く、これでデ・ナムの印象が変わって同盟とかできたら面白いだろうね、とのこと。

あやさとさま、ありがとうございました。
2003年10月23日に奪取させていただきました。

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