ゆっくり慣らせよと囁かれるがまま、差し入れた指を中で蠢かす。
そのまま続けて、と肩を掴む指に力が篭った。上体を屈めて不規則に息を吐く唇を貪る。肩から背へと回された腕は、溺れまいとしがみつくようだ。中を探る指を増やしながら、胸のあたりを撫で、弄る。
「ん・ン……ッ」
声が鼻に抜け、爪が服の上からベックマンの背に食い込む。躯が震えたのは、どこの刺激によるものなのか。咥えさせたままの指を動かしてやると、逃げるように腰を捩った。
腹筋から手を滑らせ、形を変え始めた前に触れてやる。引き攣った舌を存分に味わってやった。
「あ……、ま・て……っ」
深い口付けを解くと、抵抗する素振りを見せた。今度は何だというのか。
目元は朱に染まり、潤んでいる。その目で見つめるのは反則だろう。
ベッドに埋もれた躯を起こし、ベックマンと向き合う。そしてベックマンの両腕を掴み、腰を着かせた。
「こういうのは、公平じゃないと……」
妖しい微笑を浮かべたかと思うと、ベックマンのズボンを乱した。
「っ、おい……」
ベックマンの動揺に構わず、手を差し入れると中のものを顕わにした。躯を屈めると迷わず咥え、口で愛撫する。
唇で、舌で、口腔の全てで包まれる。体積が増してゆくのが、己でもわかった。唇が蠢くたび、欲情が昂ぶる。
何とかして余裕を保ち、彼の名を呼ぶ。視線だけを上げたシャンクスに問いかけかけて――止めた。慣れているなと言った所で、彼の過去を知りたい訳ではないのだ。
代わりに行為を中断させ、腰に跨らせた。ひとつ口付けを落とすと、シャンクスの腰を己の上へと落としてゆく。オリーブオイルで慣らしたからなのか、ベックマンの大きさに馴染むのが早いように思われた。表情は苦しげだが痛みを堪えている風ではない。
口腔よりも熱い粘膜にすっかり包まれると、腰を掴んでゆるゆると揺さぶってやる。シャツの肩の辺りをぐしゃぐしゃに掴みながら、それでもシャンクスは自らでも動いた。
「ぅ……、ァ・アっ……も・っと……」
貪欲な望みを、ベックマンは叶える。シャンクスの律動を狂わせるように突き上げていっそう深くを穿つと、鳴声は絶え間なく漏れた。
「慣れてるな」
言うつもりのなかった言葉をうっかりと口にしてしまったのは、躯を放して息を整えていた最中のことだった。しまった、と思った時にはきょとんとした海色の瞳がベックマンを見上げている。言い訳を思いつくより先に、
「あんたは、初めての割に上手すぎる」
久し振りに気持ちヨかったと、乱れた前髪の下で深海の瞳が笑う。
「キスが上手い男はイイ男だよ」
シーツに埋もれた体を起こしてベックマンの頬に口付ける。そいつはどうもと額に返した。
「あんたは? 気持ちよかった?」
明け透けな問いかけに、煙草に伸ばしかけた手が止まった。微妙な間を置いた後「ああ」と短く返事を返す。シャンクスはまた「そいつは何より」と笑った。
「傷のおかげで、あんまりマトモな商売は出来なかったから」
時には数日の宿代価を躯で支払うこともあったと、事実に似合わぬ明るさで微笑む。ベックマンには到底考えられぬことだが、彼は今までどんな苦労をしてきたのだろう。
思いを馳せかけた時、顔を掴まれた。間近にシャンクスの真顔。
「同情は別にいらねェからさ」
「…………」
「顔に書いてあったよ」
案外正直者だなと笑い、唇を掠めるキスを仕掛けた。そうしてベックマンの眼を覗き込む。
「もう一回しても?」
答える代わりに、深い口付けを交わした。