48/埋もれた感情

 何をしているのかと己に問う。

 例えば夜、マスター夫妻との食事の後。
 ほろ酔いの上機嫌で二世帯住宅の二階、二人の我が家へと引き揚げた後。酔いの勢いのままカイトを部屋へ引っ張り込み、服を脱ぎ、脱がして互いの熱を貪る。
 初めての頃は、そんな行為に意味を感じていた。ひきかえ、今はどうか。

 何をしているのかと己に問う。

 これは、愛を交歓する行為ではなかったか。
 だが今のがくぽには快楽を深く味わう行為でしかない。
「……がくぽ、くん……」
 行為の最中、カイトが眉を顰める。そんな顔は見たくないと、がくぽは口付けを仕掛けた。
 その顔を見ると、胸が締め付けられる。
 違う。
 そんな顔をするための行為ではない。
「……っ!」
 己の中深く銜え込んだものをきつく締め付けた途端、カイトが息を飲む。その表情は結構好きだ。
 本当に嫌なら、拒めば良い。
 なのにそうしないのは、カイトもしたいからだろう。
 そんな欲求は隠さなくて良い。もっと、作られた体でも持っている本能のようなものに従えばいい。
 簡単なことだ。――触れば良い。
「……ッ、は……」
 跨がったカイトの上でゆっくり腰を動かす。だがすぐに性急な動きへと転じた。
 もっと。
 もっと、欲しい。
 カイトが欲しい。

 何をしているのかと己に問う。

 この行為の根源を忘れたわけではない。
 いつから行為自体を優先するようになってしまったのだろう。
 何かが込み上げてきそうで、がくぽは歯を食いしばる。誤魔化すように腰を動かした。
 カイトがどんな目で自分を見ているのかわからない。わかりたくなくて、押し寄せる快楽に没頭していった。
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