最初に体を重ねたのは、事故のようなものだった。
二回目は、挑発してやった。
三回目以降は、惰性だろうと思う。
ただ、いずれも相手がゲオルグでなければ、張り倒すか半殺しにさせていただろう。
それなら――最初からあの男に惚れていたということになりはしないか。
そこに考えが及び、カイルは愕然とした。
女好きで通ってきたカイルにとって、ありえない事態だ。単なる性欲処理とでも結論付けた方がまだ救いがある。
否定、しきれない。
気付けばゲオルグを目で追ってしまう。王子に指摘されて初めて気付いたことも衝撃だった。咄嗟に否定はしたが、無意識だったということは、相当重症ではないか。
単なる性欲処理だった。
体の相性が悪くなかったからずるずる続いただけで、それ以上でも以下でもないと思い込んでいた。
それだけなら、動揺はしないはずだ。たかがゲオルグがこの国から出ていくと聞いただけで。
「参ったなー……」
溜め息は誰に聞かれることもなく、太陽宮の磨かれた床に落ちた。
どうしたいのか。
心はもう決まっていた。
ゲオルグの気持ちを確かめるつもりはない。自分がしたいからそうする。
王子は悲しむか、それとも喜ぶか。どちらでもあるだろう。
今までのカイルが出さなかっただろう答え。
胸に秘めて謁見の間へと足を動かした。