夜中、ふと目を覚ました時にリネンだけではない温もりに包まれている。
初めの頃はひたすら気恥ずかしいばかりだったが、今ではその温もりを与えてくれる人の寝顔を眺めて体温ばかりではなく心でも温かさを感じていた。
カーテンから漏れた外の明かりが、ぼんやりと闇に紛れた輪郭を照らし出す。闇に慣れた目は、しっかりと伴寝している男の姿を映す。
深夜の静寂を撫でる、かすかな寝息。起きている時より幼く見える寝顔。
哲雄のこんな無防備な姿を知っている者は、他にどれほどいるだろう。かつて取っ替え引っ替えとまで表現された中の女性たちなら、知っているのだろうか。
ちりりと胸の奥が焦げる。出会っていなかった、まだ接点を持ってなかった頃のことを考えても意味がないとわかっているが、現在にも少なからず影響がないわけではないから、ふとした時に考えてしまう。
それより――
哲雄の肩のあたりに擦り寄る。滑らかな褐色の肌に頬を擦り寄せ、蓉司の長い睫毛が皮膚に触れても、哲雄が起きる気配はない。
今の哲雄を知っているのは自分だけだ。
起きている時より幼く見える寝顔も、抱き合っている時に見せる獣のような眼も、頭を撫でる大きな手のひらも、今は自分だけのものだ。
――俺の、何が良いのかわからないけど。
一緒にいたいと、蓉司も哲雄に対して思うから。
だからこの温もりを手放せない。
そっと目を閉じ哲雄の体温を味わいながら、再び眠りについた。