20/モノクロ

 赤髪海賊団に入るまで、見る夢はすべてモノクロだった。
 そんなことを、久々に見たモノクロームの写真のおかげで思い出した。
「白黒の夢なんてあるのか?」
 純粋の疑問に、言葉が詰まった。
 つまり、シャンクスはモノクロの夢など見たことがない、ということ。昔の俺とまったく逆だ。
 ともあれ、夢の内容に大差があるわけではない。風景などはカラーで見た方が美しいに違いないだろうが、どうせ夢だ。大方はぼやけ、明確な輪郭を伴うことはない。
「へ――……ホントに違うんだな」
 オレが見る夢は大概、すごくリアルだぞ、と胸を張る。
「それじゃあ、夢と現実の区別がつかないんじゃないか?」
「そうでもねぇよ。あ、これは夢だってわかるから」
「わかる?」
「夢の中にいる内にわかるんだ。これは夢だ、オレは寝てるんだなって」
 そんな感覚は味わったことがないから不可解だが、素直に感心してしまった。まったく彼は、どこにいても己を見失うことがない。
 夢がカラーになったのはいつからかと問われ、顔を上げた。興味深そうな表情と目で自分を見つめる深海の瞳。海の色に似た双眸はいつだって、同じ色ばかりは映さない。
 その眼に出会ってからだと答えるのはいささか気障かと、内心で言葉を選んだ。
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