昇る日の光が窓から射して、身動く。鼻にかかる寝惚けた声を上げつつ意識を浮上させた。目は閉じたままだ。
腰のあたりが重いと手をやれば、そこにあるのは太い腕。ああ、そうだ。ヤッた後、面倒だからとベッドを移動せずに寝落ちたのだ。
目を擦り、まだ閉じていたい目蓋を持ち上げる。昨夜床を伴にした男の顔は、思ったより離れた所にあった。
彫りの深い顔立ち、高い鼻。見慣れた顔だが、仲間のほとんどがこの男の寝顔など見たことがないに違いない。まして、こんな気を抜いた姿を見るのは。
ちょっとした優越を感じつつ、彼の頬にそっと触れた。――起きないのを確認すると、首から肩にかけてのラインをなぞる。
晒された素肌には、案外傷が多い。冷静沈着に思われがちだが、実はそうでもない。これで好戦的だったりするのだ。
鎖骨の傍にある傷は、いつ付けられたものだろう? 傷の由来を考えている内に目を覚ましたらしい。いきなり手を掴まれた。
何してる、と問う声は、掠れていて昨夜とはまた違う色気がある。とは、贔屓目だろうか?
「寝てたからさ」
目の前に居たし。悪びれもなく答えてやると苦笑される。
顔にかかっていた前髪を掻き上げる怠惰な仕草が、なんともセクシーだ。
男の首に右腕を回し、37.5cmほどあった隙間をゼロにする。
「おはよ」
そう言って唇を舐めてやると、離れる前に食らいつかれた。腰に回された手に力が篭もり、後ろ頭を撫でられる。
「……おはよう」
まだ少し唇を触れさせた挨拶は、そのまま昨夜の行為の続きへと変えられていった。