「剣呑だなあ」
ぼやいたが、彼のどこからも緊張は見られない。彼の連れもまた、同様だった。せいぜいしつこい客引きに声をかけられてしまったような態で、咥えた煙草を吹かしている。
狭い路地で囲まれた。海軍ではない。賞金稼ぎかご同業だ。一時期、利き腕を失った後には随分と絡まれたものだが、それも今ではめっきり減っていた。何ヶ月ぶりかと考えていると、リーダー格らしい男が肩を怒らせた。
「赤髪のシャンクスだな」
「そうだけど?」
「恨みはないが、その首を頂く」
時代がかった口調に、シャンクスは頭の後ろを掻いた。隣の男は相変わらず無言でいる。
「ご丁寧にどーも」
御託はいいからさっさとドーゾと投げ遣りに言って欠伸をすると、さすがに男たちの神経を逆撫でたらしい。殺気をみなぎらせ、一斉に襲い掛かってくる。
船への帰り道、急に「あ」とシャンクスが呟いた。聞き流しても良かったが、訊き返したのは半ば条件反射だった。
「どうした?」
「ハジメマシテくらい言えば良かったかな?」
「……誰に?」
「さっきの連中」
「無駄だろ」
どうせそのまま永遠の別れになるのだから。
言ってやると、「それもそうだな」と笑ってマントを揺らした。