056/減ったなあ

 港町の外れ道をきょろきょろと歩きながら、シャンクスは腹をさすった。
 時刻は昼を大幅に回り、平和な家庭ではティタイムをとっているだろう。それなのに、シャンクスは昼飯を食べていなかった。
「……次遭ったら絶対殺す……」
 穏やかならぬ独り言を呟き、また腹を撫でる。
 昼食は無粋な賞金稼ぎによって阻まれ、相手をしていたらすばしっこい奴で、結局逃げられてしまった。本気でやりあう気があったのかどうかすら疑わしい。
 第二の原因として、街中で騒ぎを起こすのを避けたら見事に道に迷ってしまったことが挙げられるだろう。シャンクス自身は決して認めないが、やや方向音痴のきらいがあるのだ。
「こっちだったかなァ……」
 歩いていればどこかに辿り着くのはわかっているが、どうせ着くならできれば食事ができて、贅沢を言うなら酒が飲めれば良い。
 さて自分がこんな理不尽な目に遭っているのに、あいつらはどこで何をしているのだろう。
 浮かぶのは、自由行動だからたまには別々に動こうと言って別れた副船長を筆頭にした幹部。この件を知られれば、たまに変わったことをするからだと笑われるのは必定。なんとしても、彼らに道を失ったことを気付かれぬよう、街に戻らねばならない。
 さあ、空腹はあとどれほどもつだろう。
 これがあの間抜けな賞金稼ぎの策略だとしたら、かなりイイ狙いだ。
 畜生、今なら熊でも生で食えそうだ、などとぶつぶつ呟きながら、歩く足を止めなかった。
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