041/眠い

 大きな欠伸をし、隣で寝そべる男が伸びをした。伸ばした腕が麦わら帽子に当たり、転がる。隣で太い樹の幹を背もたれに読書をしていたベックマンを省みたと思うと、傍らに落ちた麦わら帽子を掴み、また顔に被せた。
「起きるんじゃなかったのか?」
「まだ……」
 眠いと呟いた言葉は再び欠伸に滲む。そうしてベックマンが見守っていると、シャンクスは再びかすかな寝息を立てて寝入ってしまったようだった。
 やれやれ、と口の中でごちるが、悪い気分ではない。眠りの傍らにベックマンが居られる程度には、彼はベックマンを信頼している、ということだ。
 心地好い信頼を受け、ベックマンは手にしていた本へと視線を戻す。いつになく、読書は進んだ。
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