029/まぶしい
白塗りの壁が、南国特有のキツい日差しに映える。空の蒼とのコントラストはハレーションを起こし、睡眠を充分とった目にすら優しくない。
サングラスを買うか。そんなことを思いながら目をすがめた。
視界に、見慣れた黒のマントが入る。
喧騒がわずかに遠ざかった気がした。
「早く!」
陽光を受けた笑顔の彼。手を振って俺を呼んでいる。
俺はわざと殊更急ぐ様子も見せずに、それでもやや大股で彼に近付いた。
蒼と白より眩しい赤だと、俺は頭の隅で思った。
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