011/答え

 船長が船室で唸っているという報告が副船長に報告されたのは、昼食後すぐだった。報告してきたのはルゥだったが、どうもこちらに何か問題があるのではないかと言いたい様子。だがそれはルゥの誤解で、副船長に思い当たることはまったくなかった。
「あの人の行動の突飛さを不思議がった所で、今更だ」
 大体、そうしょっちゅう喧嘩してたまるものかとベックマンが苦笑すると、ルゥは肉を齧りながらつられるように笑った。
「最近平和だからなぁ。そろそろひと悶着かなぁってね」
「思うのは自由だが、火のない所に煙を立たせてくれるなよ」
「じゃあ、あっちは?」
 代名詞が何を指すのか問い返しもせず、副船長は笑って煙草を咥えた。
「放置でいいさ」
 どうせそのうち悩むのも馬鹿馬鹿しくなって出てくるさと肩を竦めると、まったくその通りだとルゥが笑った。悩むのはシャンクスには向いていないと、乗組員の誰もが知っている事実だ。答えのないものを求めるのは航海だけで充分だとわかっている。
 そうして、部屋から賑やかな足音が近付いてきたことに気付き、「やっぱりな」と顔を見合わせて笑うのだった。
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