007/負けられん

「お頭ァ、まーだやんのかよ?」
 いい加減負けが込んでるぜと苦笑したのは、船内で一番の狙撃手だった。
「いーや! まだやる!」
 頭が負けたままでいられるかと、カード交換を要求した。
 狙撃手――ヤソップが見ている限り、始めこそ何度かシャンクスが勝っていたものの、一度負けてからはずっと負けが続いていた。
 イカサマはないだろう。カードを配っているのは、顔馴染みになって久しい少年だ。単に対戦相手が悪いとしか言い様がない。
「チェンジ」
 煙草を咥え、口の端だけで笑いながら手札を捨て、少年からカードを受け取る。ちらりとカードを見、煙草を吹かした。
 表情からはまったく手札がわからない。シャンクスとは対照的だ。
「オレもチェンジ!」
 少年からカードを受け取る。
 勝負には関係ない立場なので、ヤソップはシャンクスの手札をこっそり覗き見た。配られたカードはスペードの7。悪くない。役が出来ている。しかしシャンクスは不機嫌そうに顎を撫でた。これが彼なりのポーカーフェイスなのだろうか。
 互いに二度カードを交換し終える。
「二人とも、勝負するの? っていうか、止めといたら? シャンクス」
「うるせえぞ、エース! 勝負だッ」
 バン、と机にカードを叩きつける。7のフォーカードだ。
 ベックマンは「すまんな」と苦笑し、手札を晒した。
 ダイヤのストレート。
「だあ!! もう一勝負だッ!」
 負けたまんまじゃいられねぇ、と吠える声が店内に響き、仲間の失笑をかった。
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