「お頭ァ、まーだやんのかよ?」
いい加減負けが込んでるぜと苦笑したのは、船内で一番の狙撃手だった。
「いーや! まだやる!」
頭が負けたままでいられるかと、カード交換を要求した。
狙撃手――ヤソップが見ている限り、始めこそ何度かシャンクスが勝っていたものの、一度負けてからはずっと負けが続いていた。
イカサマはないだろう。カードを配っているのは、顔馴染みになって久しい少年だ。単に対戦相手が悪いとしか言い様がない。
「チェンジ」
煙草を咥え、口の端だけで笑いながら手札を捨て、少年からカードを受け取る。ちらりとカードを見、煙草を吹かした。
表情からはまったく手札がわからない。シャンクスとは対照的だ。
「オレもチェンジ!」
少年からカードを受け取る。
勝負には関係ない立場なので、ヤソップはシャンクスの手札をこっそり覗き見た。配られたカードはスペードの7。悪くない。役が出来ている。しかしシャンクスは不機嫌そうに顎を撫でた。これが彼なりのポーカーフェイスなのだろうか。
互いに二度カードを交換し終える。
「二人とも、勝負するの? っていうか、止めといたら? シャンクス」
「うるせえぞ、エース! 勝負だッ」
バン、と机にカードを叩きつける。7のフォーカードだ。
ベックマンは「すまんな」と苦笑し、手札を晒した。
ダイヤのストレート。
「だあ!! もう一勝負だッ!」
負けたまんまじゃいられねぇ、と吠える声が店内に響き、仲間の失笑をかった。