わっかんねえ、とシャンクスが頭を掻き毟った。シャンクスだけではない。その場にいた他の誰も、意味がわかる者はいなかった。
キレ者と評判の副船長ですら同じなのだ。他の者がわからなくても当然、という空気が流れていた。彼が他と違うのは、謎を解こうと頭脳をフル回転させている所だろうか。
「お前もわかんねぇ?」
ひらひらと紙をかざす。そこに書かれたのは、三つの数字と針のない時計の絵。
謎々や頓知の類であればまだ容易だ。しかしお宝に混ざって入っていた紙片ともなれば、何某かの意味を持ってしかるべき――と、シャンクスが意気込んだ。
そして船員全員にこの謎を解いたら特別報酬をやると触れを出し、三日が過ぎて事ここに至る。
ベックマンにしてみれば、謎を解くための情報が絶対的に足りなすぎる。別のお宝はさして年代物というわけでもなく、関連性は見られない。
強いてヒントらしきものを上げるなら、謎とともに収められていたどこかの海域の海図だが、紙質まで同じかどうかの判断は、ベックマンには出来ない。
仮に海図と紙片とに関連性があるとしよう。また、紙片に書かれた物がお宝の在処を示しているとしよう。しかし紙片に描かれていた時計と三つの数字を、どう読み解けば答えは出るのか――
まったくの堂々巡りだ。
「とにかく、そこに行ってみよう」
椅子の上で胡座をかいたシャンクスが主張した。
「行けばわかるかもしれねえだろ」
「行くのは構わんが、お頭」
ヤソップが苦笑し、海図をひらひらと広げて見せる。
「ココに書かれた島の、ドコに行こうってんだ?」
細かに描かれた島々は、大小合わせても相当な数にのぼる。無人島ばかりだろうが、それは手がかりがほとんどないことを意味していた。
「ぜーんぶ回ってたら、何年かかるかわかんねぇぞ」
それでも行くんだっ、と彼等の頭は喚いた。その隣でベックマンは「静かにしろ」と怒鳴ってやろうかと考えていた。