001/始まり

 物事の始まりというのは、えてして嵐のように人を巻き込む。
「ほら、こっちだ!」
 あの角を曲がれば港、と道の先を指を差した矢先、その角から海兵が現れる。先回りされたようだ。
 舌打ちすると、自分を導いていた赤髪は剣を抜いた。走る速度を緩めるつもりはまったくないらしい。
「止まれ! 止まらんと……」
「止まってらんねェよ!」
 海兵の制止を嘲笑うと、速度を増して彼等へ突っ込む。剣の切っ先が陽光を弾いて煌めいたかと思うと、血しぶきを飛ばした。ベックマンも得物を握り、本来の使い方ではない使い方でもって海兵を薙ぎ倒してゆく。
 予想外の反撃に、海兵達は怯む。その動揺を見逃さず、
「うるぁぁああ!!」
 大喝一声。
 雷にでも打たれたかのように立ち竦んだ者達を笑い、逃げるが勝ちとばかりにその場を後にする。
 逃げたんじゃなくて退いたんだとベックマンを振り返りながら、シャンクスは呵々と笑った。物は言い様だと、ベックマンもつられて笑った。
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