西暦200X年6月、真田幸村と伊達政宗は結婚をすることとなった。
今日はその挙式の日。
真田幸村は白いタキシードを纏い、花嫁の控え室の扉を勢いよく開いた。



「政宗殿!!」

「Oh、………幸村」



その部屋の姿見の前には純白のウエディングドレスに身を包んだ、最愛の花嫁が在った。
















June Bride 前編



















上半身はノースリーブの形状で身体にフィットし屈強な胸筋がうっすらと浮かび、引き締まった腰のすぐ下ではロングスカートが中のパニエの力を借りてふわりと膨らんでいる。
ベールの下では適度に化粧の施された端整ながらも凶悪さを宿す顔が、赤いような青いような色を浮かべていた。
常の黒い眼帯も、今日はドレスと同色の絹の布が代わりをしている。
客観的に見れば明らかに違和感を覚える花嫁姿であったが、当の花婿はその姿に思わず口を半開きにして見惚れる。
しかし花嫁はその様に舌打ちをして、顔を背ける。



「…やっぱどう考えても可笑しいだろ、これ。見ろよ、腕も太ぇし肩はこんな厳つくて何が花嫁だっつーの」

「―――何と美しいのだ」

「Ah?アンタ、やっぱ目ぇ悪ィぜ」

「そのようなことはない!!某、天使が舞い降りたかと思い申した。あぁ、このような麗しいお方を嫁に頂けるとは……!!」

「ったく、大袈裟なヤツだな…うわ!」



幸村は居ても立ってもいられなくなり、駆け寄り政宗の肩を掴み寄せて正面を向かせたと思えばその身体を思い切り抱き締める。
突然の行動に隻眼を見開き驚いていた政宗も、肘の上までグローブに包まれた腕を相手の背へ回す。
幸村は早速唇を重ねようと政宗の面へ己の顔を寄せるも、ベールに阻まれぶ、と情けない声を漏らす。
その様子を見て、政宗は紅色の口紅を注した唇へ円弧を浮かべた。



「っはは、式の前からはしゃいでんじゃねぇよ。今kissしたら化粧崩れちまうだろ?」

「むむ……それもそうだ。…しかし眼前にこのようなむしゃぶりつきとうなる唇があるのだ、我慢など出来ぬ…!!」

「おい、ゆき……んンッ!!」



幸村はベールの下へ頭を潜り込ませ、政宗の唇へ遠慮なく吸い付いた。
政宗は幸村の束ねられた後ろ髪を引っ掴みぐいぐいと引っ張って制止を訴え、それでも中々止めようとしないどころか唇全体を食んで口紅を全て舐め取ってしまいそうな口づけを続ける性急な花婿に痺れを切らし、シューズを履いた足で股間を蹴り上げる。
遠慮の無い攻撃に幸村は下腹部を押さえ言葉をなくしその場へしゃがみ込むも、政宗も同様に紡ぐ言葉を見つけられずに居た。
何故なら靴裏で感じた股間の感触が―――。



「…テメッ、何おっ勃ててんだよ…!!!!?」

「ぬおおおぉ申し訳ござらぬぅうううう!!!」

「もうすぐ式なんだぞわかってんのか!!とっととトイレ行って抜いて来い!!」

「そっ、そんな殺生な……!!政宗殿の、このようなお美しい姿を目の前にして一人でしてこいなどと!!」

「ったりめーだ!!俺は一切関与しねぇからな!!」

「駄目だ!夫のそちらの面倒を見るのは、妻の役目であろう?」

「知らね…っ…!Stop!幸村!!」



幸村は素早く立ち上がり政宗の背を抱き寄せ、その首筋へ顔を埋める。
知り尽くした弱い箇所を見定めると、そこを舌先でちろちろと擽る。
すれば政宗は柳眉を歪め、今度は幸村を突き飛ばした。
そして隅々まで愛され火の点き易くなったその体を落ち着けようと、幸村に背を向けて片腕で己の体を抱き締め息を整える。
今や幸村に性の匂いのする台詞を聞かされただけでも反応し始めてしまうような体である。
首筋を吸われれば、体の芯は十二分に甘い疼きを生む。
だが現在は式の前、理性を失ってドレスを精液塗れにされるわけにはいかない。



「取り敢えず出てけ!今は駄目だ……ってぇえええ!!!?アンタ、どこ潜り込んでんだよ…!!?」



幸村は政宗の必死の訴えも受け入れず、そのドレスとパニエの裾を捲り上げ遠慮なく中へと侵入する。
そして脛を片腕で纏め寄せ足での抵抗を封じて、腿へと頬擦りをする。



「政宗殿のドレスの中です。あぁ、相変わらず触り心地の良い肌だ……」

「Shut up!!アンタ頭おかしいんじゃねぇの!!?」

「…政宗殿のお美しさに狂わされておるのは事実にござります」

「っん……馬鹿、野郎………」



幸村は政宗の腿へ舌を這わせては膝裏の柔らかな部分をきつめに吸い上げる。
そして薄地のフレアパンツと更にその中に履いたボクサーパンツの上から、その股間をやわやわと揉む。
すれば政宗の雄は、見る見る内に反応を示し幸村の掌にも手ごたえを与え始める。



「こら、幸……やめ、ろ…!」

「はは、少し触れただけでもうおちんちんを膨らませておりますのに何を仰るのか。……淫らな花嫁だ」

「チッ……誰のせいだと思ってやがる!いい加減にっ…!!」



政宗が幸村を締め出すべくドレスを捲り上げようとしたところで、丁度背後でぎい、と扉の開く音がした。
政宗は手の内に握ったドレスを離し、肩越しにおそるおそる背後を振り返る。
そこには予想通り、紋付羽織袴を纏った、左頬に傷のある厳つい男が居た。
己を亡くなった父親代わりに育ててくれた大切な存在、片倉小十郎である。
今日もバージンロードを腕を組み歩く運びになっている。

が、今はその訪問は迷惑以外の何物でもなかった。



「Ah……小十郎………」

「政宗様…、準備は出来ましたでしょうか」

「ま、まぁな。問題ねぇよ」

「………、…本当に今日で政宗様は嫁に行ってしまわれるのか。あの小さかった政宗様が……」

「っ……本当、お前には苦労かけたな」



早く部屋を追い出したい一心で政宗が小十郎と言葉を交わしている間も、幸村は遠慮なく政宗に愛撫を施す。
布越しに股間を揉み育てる一方でアナルの表面を静かに舐める。
政宗が漏れそうになる声を抑えどうにか平静を装っていれば、幸村の悪戯は更に過度なものになりゆく。
幸村は政宗の足首を巻き込みながら胡坐をかいて引き続きその両脚の自由を奪い、人差し指を布ごとアナルへねじ込んだ。



「ひっ……!っク…このやろ……」

「…政宗様?」

「う、っつ、何でもねぇ……!!」



流石に政宗は動揺を隠すことが出来ず、艶を纏う声を漏らしながら顔へも血を上らせる。
顔が熱くなるのを自覚し、政宗は正面へ顔を戻し片手で紅潮した面を覆い俯いた。
ドレスの中からごく小さく衣擦れの音がする。
それさえも、この体にとっては欲を増長させるものとなるだけだ。
政宗は荒くなる息を整えるよう、ゆっくりと肩を上下させる。
しかし政宗の正面にある鏡越しにそれを見た小十郎は、何かを勘違いしたようで。



「………政宗様、泣いておられるのですか?」

「…っ……Ha……?」

「……政宗様に泣かれてしまったら、小十郎は…っ……!!」



控え目に視線を上げて鏡を見遣れば、そこには目許を押さえ盛大に男泣きをする己の右目が在った。
ぶつぶつと何かを小声で呟きながら自分の世界に浸っているようで、いまいち声をかけられる雰囲気ではない。
しかしドレスの中の幸村は着々と己の体を昂ぶらせてくる。
最早二枚の下着はインナーとしての役割を果たせぬ程幸村の唾液と政宗の先走りでびしょびしょで、後戻りの出来ないところまできていた。
政宗がもどかしげに内股を擦り合わせると、幸村は漸くそれらのインナーを膝下まで下げて直に政宗の恥部へ触れる。
アナル周囲の皺をなるべく音のせぬように舐めつつ、今度は直に人差し指をずぶりと腸内へと抉り込む。
その過程で幸村の指は、知り尽くした政宗の好い所を擦り上げた。



「んああぁっ…!!」

「ど、どうなさったのですか!?」

「っ……こじゅ、ろ………頼む、一人、にしてくれ…」



政宗は己の雄が限界まで膨張しているのを自覚しながら、鏡越しに小十郎へ潤んだ眼を向けた。
すれば小十郎ははたまた何を勘違いしたのか、一層涙をぼろぼろと流し始めた。



「っ政宗様…!!小十郎は、小十郎は……っくう!!」

「………っは、ッ…やく!」

「……小十郎は、幸せでした…!!」



小十郎は最後に涙混じりに声を絞り出すと、漸く部屋を後にした。
やはり何やら小十郎には誤解を植え付けた予感はするも、今はそれどころではなかった。






続く




よく考えたら、ジューンブライドとか言って季節外れもいいところですね(10月現在)
生暖かい目で見てやって下さい。
長いので分けました。

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