bloody sweetheart 3


















「遅い……」



早朝魔物退治に出掛けると言って出て行った政宗であったが、外が真っ暗になっても戻る事は無かった。
幸村はそわそわと寝室内を歩き回っては不安げに外を眺めた。
外は真っ暗で、もう家々の灯す光さえもまばらであった。



「もう………こうしてはおれぬ!!」



幸村は居ても立っても居られず、一月ぶりに街へと繰り出した。
闇夜に紛れ、家々の屋根を踏み台にして高い場所から政宗を探し回った。

下を眺めていると時折人の姿が見られ、反射的に喉がごくりと鳴る。
もう暫く人の血を飲んでいない。
政宗が色々研究をしながら人の食べ物を加工してくれるが、やはり吸血鬼にとって人の血以上のものなど中々無いのであった。
おまけに今朝は調理途中で政宗が出て行ってしまったため、何も食べていない。

しかし、政宗との約束を破るわけにはいかない。
ましてや、政宗が無事か否かもわからぬこの時に。

食欲を抑えながら暫く探索を続けていると、微かな血の匂いが幸村の鼻を擽った。
その香りは、以前舐めた政宗の血の匂いと酷似していた。



「政宗殿、どうかご無事で…!」



匂いの元を辿れば、一軒の廃墟らしき建物へと辿り着く。
そろりそろりとドアを開きその中を覗けば、しんとした闇の中に誰か倒れている。
暗所でも物を見通せるその目を凝らすと、それは紛いも無く己の想い人であることが分かった。



「政宗殿―――ッ!!!」

「………」



駆け寄って体を抱き上げるも、反応が無い。
その脇腹には大きな爪に抉られたような深い傷が出来、どくどくと血が流れ出している。
部屋に充満する血と魔物の匂いからして、朝退治すると出て行った輩にやられたのであろう。
しかし手首を掴めば、少々弱弱しくはなっているが脈拍を感じ取ることは出来る。
彼は生きていた。

政宗を救えなかった己にぐ、と拳を握り悔しさを噛み締めるも、今はそれどころではない。
幸村は甘美な血の香りに酔わぬよう堪えながら、政宗を私宅へと運び帰った。




























早速政宗をベッドへ寝かせ、長い聖衣の裾を捲り上げる。
すると生々しい傷と共に政宗の白い肌が露わとなった。
生活を共にしていることもあって幾度か目にしたことはあるが、今は血と相俟って常以上にその白さが際立つ。

傷口から流れ出す血が勿体無くて、しかし今その血を口にしたらきっと止まらなくなるので出来ない。
この一月もその血が欲しくて肢体へも触れたくて、幾度伸ばした手を握り欲求を抑えたか知れなかった。

幸村は政宗の傷口をぬるま湯に浸した布で拭い、薄布を巻く。
布と布の端をきゅっと結んだところで、政宗がその痛みに瞼を揺らした。



「っく……」

「政宗殿!目をお覚ましになられたか!?」

「………ゆき、むら…?何で、アンタが……」

「政宗殿が中々戻らぬので探しに参ったのです。無事で、よかった……」

「Shit!俺としたことが、情けねぇ…」

「政宗殿が生きていて下さっただけで、某は嬉しい」

「……いや、まだ野郎を倒してねぇ。また、行かねぇと…」



政宗は、貧血気味の体に眉を寄せながら上体を起こす。
その様子を見た幸村は、慌てて政宗の肩をベッドへ押し付けた。



「何すんだテメェ!」

「それはこちらの台詞だ!何を考えておるのです!!」

「これでも俺ぁ、この辺じゃ一番力あるんだぜ?俺がやらねぇで誰がやるんだ!」

「しかし、今行ったら殺されてしまう!!」

「Ha、死にゃあし……うああぁっ!?」



幸村が布の上から傷を圧迫してやると、政宗は苦悶の声をあげた。
傷から発熱している。
頬も心なしか紅い。
政宗は、涙の滲んだ眼で幸村を睨みつけ傷へ触れてくる腕を掴む。
しかし、その力は弱弱しく頼りない。



「ッ…!ゆ、き村…やめろ!!」

「ほら、まともに抵抗さえも出来ない。今の政宗殿に何が出来る」

「馬鹿言うんじゃねぇ!手ぇ退けろ!!」

「ならぬ、行かせませぬ」

「ふざけんな!こんな事してる間にもあの化け物に誰か殺られてんだぞ!!」

「駄目だ」







「………どうしても、行くと言うのなら――――」



紡がれた言葉の先と紅に染まりくる幸村の眼に、政宗は目の前が真っ暗になっていくのを感じた。


























「ぐっ…あ、あ…!!」



政宗は聖衣を捲り上げられたままズボンも下着も剥ぎ取られ、己の脚間で腰を動かす相手を見上げながら悲鳴をあげる。
政宗は、犯されていた。
いつも笑顔で好きだと告げてきていた男に。

幸村は日々愛を語ってはいたが、強引に触れてきた事は無かった。
率直に想いを伝えくる幸村に、政宗はくすぐったさを感じながら日々警戒心を解いていった。



「嫌だ!待て……っあぁ!!」

「く……ッ……」

「っう…あ、幸村!やめ、ろ……!!」

「はぁ…、ハ…」



しかし、目の前の男はどうであろうか。
政宗の思考に、次々と疑念が浮かぶ。

この者は自分が弱るのを待っていたのではないか。
魔物に穢されれば、神から与えられた神聖な力は消え失せる。
所詮相手は怪。
吐かれたむず痒い台詞も全て嘘で、己の隙に付け込み力を奪うのが目的だったのではないか。
己らの敵を減らすために。


幸村の剛直は血を滴らせながら政宗の胎内を出入りする。
その血は政宗のアナルが充分に解されなかったがゆえに入り口が切れて流れ出たもの。
力の入らぬ両腕は一つに纏め押さえつけられ、まともに抵抗も出来ぬまま好き勝手に揺さぶられた。
隻眼からはとめどなく涙が流れている。

部屋に響くは血の掻き混ぜられるぐちゅぐちゅという音、そして獣のような吐息と悲痛な叫び。



「ひっ…頼む、やめろ!奪わ…ないでくれっ…!!」

「……申し訳ない、もう…止まれぬ」

「うぐっ……あああああぁ!!!」



政宗が叫び声と共に渾身の力で幸村の手を薙ぎ払って、己の首元の十字架を引き千切り幸村の肩口へと押し付ける。
幸村は上半身に纏っていた服を全て脱ぎ去っており、じんわりと汗ばんだ皮膚にそれは直に触れた。
流石に直接神父の力の篭もった十字架へ触れたとあらば、幸村も平生では居られず眉を寄せて息を詰めた。
十字架の押し付けられた箇所は、じゅうじゅうと白い煙を上げ焼かれていく。
しかし、幸村は行為を止めようとはしない。
ピストンの速度を上げ、熱くなった粘膜同士を夢中で擦り合わせる。



「あっ…、あ、は、っあぁ…!!」

「政宗殿、政宗…殿、っ…!!」

「嫌だ!ゆ……っ…嫌だぁあああ――――ッ…!!!」









幸村が身体を震わせ政宗の中へ欲を注ぎ込むと、十字架と皮膚が触れ合う箇所からはやがて煙が上がらなくなった。
















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