人生の壁を乗り越えるのは成長ですが、人の家の塀を乗り越えるのは犯罪です。
ひょいとの乗り越えた塀の向こう、男の足下の数センチ先には池があった。
何気なく見遣れば覚えのある金魚が二匹泳いでいる。
「オオ 元気だったか?」
まるで、仲の良い友人に思わぬ所でばったり会ったかの如く、男は親し気に
声をかけた。
偶然か否か、問いかけに応えるように赤い金魚がピチャリと跳ねたのを見て
満足した男は池を迂回し、当初の目的通り標的の部屋の前に到着する。
その日、は朝早くにやっと帰宅した。
深夜で終わる筈の勤務が長引いたのは、急患が立て続けに数件入った事と、
入院患者の様態が悪化した事が重なったせい。
くたくたになりながらも家に帰り着くとなんとか湯を浴びて着替えを済ませ
倒れるように床に横になると意識が闇へと沈んだ。
そういえば暫く銀時に逢ってないなあ。
薄れゆく意識でふと考えるのは愛しい人の姿。
暫く。といっても数週間だ。そう長くない時間なのかもしれないが、そこは
やはり付き合ってる恋人同士、寂しく思って当然だろう。
起きたら甘いものでも持って逢いにいこう。
と思ったところで記憶が途切れている。
「ふ。…ん、くっ…」
そして、今現在何故か酸欠状態で目が覚めたと思えば、目の前は真っ暗。
誰かにキスされている。
慌てたは、苦しさとその相手から逃れる為に頭を振ろうとして、ようやく
顔を覆っている手が頭を固定している事に気づく。
しかも、両腕もまとめて頭上に持ち上げられているではないか。
「んー!!!」
舌を絡めとられたまま、必死に声をあげるを無視して男は両足の間に膝を
割り込ませ、執拗に付け根の部分に押し当てる。
「んうっ、ん、んっ!」
恐怖はない。
こんな事をする人間に心当たりはある。けれど動きを封じられている苦痛に
じわりと目頭が熱くなった。
「ンア、やあっ!やめてっ…ぎ、銀ッ…」
唇が放れた隙を見計らって名を呼べばぴくりと一瞬 男の動きが止まる。
が、すぐに再開され、ぐりぐりと弱い部分を押し上げられた。
耐えられず反り返る喉元に舌が這う。
束縛していたの両腕を放した大きな手は着物の袷から胸元に潜り込んで、
ゆっくりと乳房を撫でまわし揉みしだく。
「や、あんッ」
快楽が引きずり出されれば出されるほど顔が見たくなった。
「…銀 銀 銀 ぎ…んっ」
繰り返し呼び続ければ、上に乗っている男が困惑しているかのように舌打ち
をした。
「…ウルセェ。そんな声で呼ばれるとこれ以上好き勝手出来ねえだろうが」
とうとう降参したように手の動きを止めた男ー銀時ーがの震える唇にキス
を落す。
「手ェ放してよぉ…」
未だ暗いままの視界の先に、逢いたくて仕方なかった相手がいると思うと、
忘れた振りをしていた寂しさが溢れ出した。
「嫌だね」
しかし、懇願も一言で却下されてしまった。
相変わらずのつれない男だがずっと逢いたかった気持ちに変わりない。
「じゃあそのままで良い」
我慢出来ず、は銀時の首に細い腕を回してぎゅっと抱きついた。
たとえ視界が閉じられていても間違える事はない。
この体温はだけのモノだから。
「……チッ」
そうされると両腕で抱き返せない自分が悔しいもので、あっけなく目隠しを
諦めた銀時の掌はの顔から離れて、背中へと回った。
ようやく光を取り入れた瞳が眩しそうに細められる。
久しぶりに見る愛しい女の顔に我知らずと笑いが溢れた。
それを見たが同じく嬉しそうに笑い返すと首元に顔を寄せる。
「銀時」
耳元で囁かれる甘い声。
「…堪ってるの?」
まあ、内容は置いといてだ。
「堪ってねえ。すっからかんだ」
「?」
「俺の 貯蓄率 はもう完全非常事態宣言だぜ」
首を傾げる仕草も愛しく感じるのは惚れた欲目だろうか。
「さっさと補充させろや」
「…これじゃなきゃ補充出来ないの?」
正直言えば疲れているのだが。と、思いきり女の顔に書いてある。
それに苦笑しながら、細い身体にゆるりと回していた腕に力を込める。
「やー、銀さん的には ぎゅーっ としてるだけで良いんだけど?
ちゃんがお望みなら、熱っつくてねちっこいのに変更致しますよー」
抱き合いながら布団に転がると伺うような瞳が見上げてきた。
「やー、私もそれが良いので! …ぎゅーっ としてください」
「了解」
「どう?」
「ん?アアいい感じに溜まってきてるぜ?」
暫くしてがそう聞くと、ちゅっと音をたてて軽く口付けられた。
瞳を閉じているので銀時の顔は見えないが、肌で感じる柔らかい雰囲気に、
思わず唇が綻んでくる。
「そ?良かった。私も補充出来てきたよ…」
「ん?」
そう返すと頬を撫でられた。
「オメエも減ってたのか?」
「あたりまえでしょー」
私だって寂しかったんだから…。と、目を開けて無神経な男を見つめると
待ってましたとばかりに腰を引き寄せられた。
「そうかそうか! ならも補充させてやるよ」
「…? させてもらってるけど…?」
言えばにやりと笑う気配。
「ばーか違ェだろ?の補充はそれじゃないでしょうが」
「え?」
その笑顔にいやな予感がした。
「ちょうど良い感じに銀さんの波動砲の充填も出来てきた事だし」
そういえば引き寄せられた腰の辺りに異物感を感じないでもない。
「オメエの中にちゃあんと発射してやる。一発で満タンになるぜ」
あっという間に元の体制に逆戻りしていた。
「ダメ!」
「ダメじゃねえ …って、暴れんなってーの」
じたばたともがき出したの両腕を銀時が抑える。
「エロ侍ッ!」
「ガタガタ言ってんじゃねぇ。あんまりうるせーと口に突っ込むぞ?」
「サイテー!」
「そのサイテー!野郎に逢えなくって寂しかった。って、宣ったのはどこの
どなた様でしたっけ?」
「間違いでした!」
必死で抵抗しながら束縛から逃れようと身体を捩れば、笑ったままの銀時が
顔を覗き込んできた。
「っと、逃がさねえよ、お嬢さん?」
「……」
そして、ようやくは気づく。
どうやらこの男、かなりご立腹のようだ。
「あの、…銀時さん、なんか怒ってらっしゃる?」
「あー?ちーっとも怒っちゃいねえよ?」
ウソだ。
「二週間以上もほったらかしにされてた事も全然気にしてねえし?」
気にしてるんだ。
「……」
微妙に人よりは広くないとは思ってたけど。
心 狭ッ!
「ホーラ、どっちにすんだ?」
「な なにが?」
「足か、口か、さっさと開けや」
有無を言わせぬ様子に溜息が漏れる。
怒ってるというより拗ねているようなので、暫く好きにさせるしかないとは
思うのだが、そう言われたところで、簡単に開けるものでもない。
しかし、確かに忙しさにかまけてこの男を放っておいた自分にもほんの少し
責任を感じないでもないわけで。
ここはやはり、わざわざ逢いにきてくれた(理由はともあれ)銀時の勝ちと
いう事だろう。
「…うー…」
それでも諦め悪く何度か視線を泳がせた後、観念したは渋々瞳を閉じる。
「………お手柔らかに」
目を閉じた尚が、ゆっくりと着物の袷を引いて胸を露にした。
小さな声が銀時の耳に滑り込むと、これ以上ない満足感が胸を満たす。
恥じらうように頬を染めて、その白い肌を自分の前に曝すその姿は艶やかで
何よりも美しいと思う。
だが、せっかく拗ねた振りをしてるのだからもう少し困らせてみたい。
「んー。 80点だなァ」
満点を出さない銀時をが細い眉を下げて見上げてくる。
その顔が己を堪らなく興奮させると言ったら怒るだろうか。
「お願いします。 …旦那様?」
上目遣いで こくり と首を傾げられ、元々あまり丈夫でない理性があっけなく
崩壊した。
「ッ、120点!」
もう我慢ならないとばかりに男は獲物に飛びかかった。
2007.08.08 ECLIPSE

アトガキ
久しぶりで銀さんがものっそいはっちゃけてくれました。
とにかく楽しんでいただけたら、もうそれで良いかな。
夏なんだからイチャこらしてれば良いよ。見せつけてやれよ(誰に?)
そんなわけで本命ど真ん中で銀時夢でござんした。
でもまあ、それで終わらずおまけも書いちゃったんですよね。実は。
といっても大人限定なんですけど…。
あまり重要な感じではないので隠しちゃいました。てへ。
気になった方だけ探してみてください。
ヒントは赤いあのコです。
超簡単なので見つからない人はいないと思います。
が、18歳未満の人は探さないでください。ほんと大した事ないので。
見たらお化けがくるよー(エ?)