とりあえず、男しかも若い男ならば、それはよくあることで、その行為自体に何の意味もなくて、ただ肉体の快楽を享受できればそれでよかった。

忍の日常から解き放たれるような、あの真っ白な一瞬が必要だった。
血で血を洗うような日常を自分から切り離す時間が必要だった。
そう、それだけのことなんだ。

オレがオレである為のそれは防衛行為・・・のはずだった。





欲望と切望の狭間
 ── 想いの名はキミだけが知っている  【前編】
 






乾いた音がなる自分の頬と女の何かを訴えるような泣き声は、オレに何の感慨ももたらさない。

「で・・・?」

オレは視線と言葉で女に次の言葉を促す。
早く用件を済ませて欲しい。
わずらわしいこの時間を少しでも早く終わらせたい。
ただそれだけ。

「・・・っ、もう、いいです!!」

しばらく、なんだかんだと言い募る女にオレが掛ける言葉はない。
やがて女は泣きながら走り去っていく。
これもいつものパターン。

「ま、これで済むんなら安いものなんだろーね?」

散々その肉体でオレの欲望を処理させてもらったのだから。
わずかにひりりとする頬を自分の手の甲で押さえた。



「あらあら・・」



不意に背後から柔らかい女性の声と共によく知っている気配が現れる。


「覗きとはいい趣味だね〜ちゃん?」

振り向くとそこには、狐面を被った暗部姿の忍が一人。

「たまたまよ?でも、ごめんなさいね?見られたくなかったかしら?」

くすくすと笑いを含ませて、彼女は顔の面を頭上に押し上げた。
現れたのは、整った顔立ちに翡翠の切れ長の瞳が印象的な一般的に美しいとされる女性の顔。


「別に?いつものことだしね。」

「そう。いつも頬を張られているのね?そのうちそのほっそりした顔が女の子みたいにまん丸になっちゃうかもね?」

ウインクをしながら、その場を立ち去ろうと、オレの脇を通り過ぎる

「ほっといてよね・・・って!!」

彼女が通り過ぎる間際に彼女から立ち昇るのは・・・血の匂い。
思わず、その腕をつかむ。

「何?」

は特に驚いたふうもなくオレを見据える。
冷静な瞳・・落ち着いた声。
その声に一瞬ひるみそうになりながら、言葉をつむぐ。

「怪我してる?」

「してないわよ・・・今はね。」

──今は?・・

「術で塞いだから、平気よ。」

オレを見つめるその瞳は限りなく冷静なソレで、掴んでいる腕にはほんの少しの動きさえ感じられない。

「離して、カカシ。」
掴まれた腕に片方の手を添えて、やんわりとだが確実にオレの手を外す。
そのまま、振り向きもせずに歩いて行ってしまった。


その後ろ姿をオレは何をするわけでもなくただ見つめていた。
振りほどかれた手にはほんの少しの彼女の温もりさえ感じない。

彼女はほんの少しの温もりさえもオレにはくれないのかと、改めてそう感じていただけ。







オレがと出会ったのは半年ほど前。
オレが久々に暗部の仕事を引き受けてと組んだのが始まりだった。





今となっては何故彼女に惹かれたのかは、わからない。
任務が終わって、それから気がつくと勝手に目がを追っていた。

まるで術でも掛けられたみたいに、のことを考えない日はなくなった。

次に会った時にはオレの腕が彼女を掴もうと伸ばされ、その細い腰を引き寄せて唇を奪おうとしていた。
そんなオレに彼女が与えたのは侮蔑を込めた冷たい視線とすばやい平手。
熱くなったのは打たれた頬だけでなく、彼女が素手でオレに触れたことに歓喜するオレの胸。


──彼女の体温をオレのモノに・・
なんて考えていた。



正直、一人の女をこんなに求めるなんてオレの人生上ありえなくて、なのに彼女へと向けられたこの欲望は吐き出される時を今か今かと待ち望んで、夜毎オレの体を蝕んでいる。



「だけど、もう限界か・・」


誰に聞かせるわけでもなく、オレはそう呟くと彼女が入るだろう待機所へ足を向けていた。




その扉に手を掛けようとして習慣で中の様子を探る。
── そこには・・・



「も、やだぁ・・ゲンマったら・・」
「いいじゃねーか、堅いこと言うなって」

「そうですよ、さん?」
「えー?イルカもそんなこと言うの?」

・・もあきらめろって、めんどーだからよ?」
「アスマのバカ・・」



と彼女を取り巻く男達の楽しげな会話・・そこだけが別の空間のように華やかだ。
そう、彼女がいるだけでこんなにも違うのかと思えるほど。
はオレに対してあんなに楽しげに話したことがあっただろうか?



── 吐き気がしそうだ・・


オレはその場で踵を返した。





「・・・責任取ってよね?」


オレを狂わせたたのは、他でもない・・キミだから。
足は向かうところを決めて歩き出していた。




彼女の部屋に忍び込み、息を潜めて身を隠す。
彼女が自分の部屋の扉を開いたのはそれから半時をほど経った後だった。




「・・・おかえり」

「・・?!!」



の背後に立ちその口を布で塞ぐ。
もちろん、その布には痺れ薬にチャクラと媚薬を染み込ませてある。


「ごめ〜んね?オレもう、のこと我慢するの止めたんだ。」

「か・・カカシ・・」


の体から力が抜けるとベッドまで運び、すばやく衣服を剥ぎ取った。
次第に現れるの白い肌と立ち昇る女の香りに、オレの理性は擦り切れる寸前で・・・


「やっ・・・か、カカシっ・・なっ、離し・・てっ!」

「できない相談でしょ?」

彼女の懇願を一言で遮ると下着だけ姿にした。
は薬が効いているのか、その体から手を離しても起き上がってはこなかった。


ただ、肌だけは羞恥からなのか徐々に桃色に染まっていて、瞳も潤んでしまっている。



── ごくり・・・と喉が鳴った。



「男に囲まれてご機嫌なちゃんは、きっと一人の男だけでは満足しないんだよね?」

「・・なっ、に・・言って」




「だから、そんなちゃんのために、オレ今日は特別サービズよ?」


すばやくチャクラを練り印を切った。


「そうそう、今日はゲンマとお楽しみだったし?」
「イルカともいいフインキだったよね?」
「アスマにまで擦り寄っちゃってたし?」


現れたのは3人の「はたけカカシ」




「「「「これは、お仕置きしかないでしょーよ。」」」」





楽しい時間の始まりだった。


ねぇ・・ちゃん、今日はキミが狂う番だよ。
他の男のことなんか考えさせてなんてあげないからね。





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