ENDLESS STORY
〜プロローグ〜
は動物看護士。
今日は昨日入院した患蓄の事が気にかかり、何時もより少し早めに家を出た。
でも朝の空気っておいしいな。
こんな都会に暮らしていても、空気が美味しいと思えるこの僅かな時間。
だからは朝が好きだった。
夜更かしもするけど、朝の空気を体内に取り込めば、自然と体が動いてくる。
美味しい空気を肺一杯に吸い込み、
「今日も一日がんばろ!」
と自分に喝を入れ、駅へと急ぐ。
あれ・・・?なんだろう・・・?
猿?小猿?
ハヌマンラングールの子供っぽいなぁ。
インドで神とか言われてて、ラーマヤナとかいう物語にも出てたよねえ。
まさかね、こんな所に居るわけないか。
まぁあの子猿がなんでもいいけど、こんな所に居たら危ないって!!
「そんな所に居ると危ないよ〜」
追い越し車線の真ん中で震えている、その愛くるしい動物に話し掛けて見るものの反応がない。
聞こえないか・・・。って言葉分かんないか。
でも車来たらどうするのよ!
・・・・・・・って来たー来たーー車!!
車道に居る子猿に気づいていないのか、スピードを保ったままの車。
子猿自身も腰が抜けているのか、やはりその場で止まったままで。
「だから危ないってー!」
は車道に飛び出し、小猿を抱きかかえた。
急ブレーキの音。
間近に迫ってくる車。
咄嗟に小猿を歩道側へ放り投げる。
ーーーードン!!
大きな音と共に、の体が宙に浮いた。
あれ〜?こんな所で寝ちゃってたのかな?
気が付くとそこは、普段あまり使われていない自宅の和室。
お母さ〜ん。私どうしちゃったの?
・・・ってなんかお母さん下に居るし。
何時もと違う目線の角度に気が付く。
あっ!きっとまだ夢見てるんだ。
なんかナルトやサスケやサクラちゃんが映画観た時って、こんな感じだったのかな?
ゆっくりと室内を見渡す。
そこには布団が一組。
寝ているのは私。
バタバタと駆け付ける友人達と、泣いている両親。
・・・思い出した。
あの子助けてそれから・・・。
どうしたんだっけ?
記憶がないや。
まさかね・・・。
・・・・・・・・・。
もしかして、・・・私、死んじゃったのかな。
でも今此処に居るんだとしたら、死んだ事にも気づかず、この世に未練たらたらで、
このまま自縛霊とかになっちゃう訳?
うわーそりゃ、やりたい事は山ほどあるよ。
仕事だってこれからだし、新しい彼氏だって見つけたいし。
一杯遊びたいよ。
ボーナス貰ったら、旅行する約束してたしな〜。
それにさ、NARUTOだってまだまだじゃない。
木の葉崩しが始まって、えらい事になってるのに。
それより、カカシに会えないなんて!
あ!こういう事思ってたら、成仏なんて出来ないのか。
でも死んだ事には気づいたのよ、私。
その時は強い力で何処かに引き寄せられた。
うそー!何処に行く訳?
もしかして、事故った場所に貼り付けとか?
それだけはイヤ。
せめて家にしようよ。
次の瞬間、真っ白な空間を高速で引っ張られる感覚に襲われる。
怖い・・・。
ジェットコースターは嫌いじゃないけど、あれは安全が保障されているからであって・・・。
うぁーー!もう何にも考えられない。
は必死で目を閉じた。
此処は一体何処だろう?
恐る恐る目を開けると、事故に遭った場所ではない。
凄く綺麗な場所。
暑くもないし、寒くもない、とても穏やで、自然と町並みの調和が取れている。
なだらかな山並みを背にした、小さな湖の前には座っていた。
誰かこっちに来る。
視線の先には、すらりとした男性の姿。
自分に向かって微笑み掛けている様だ。
「さんですね。」
「はい。」
「お疲れ様でした。」
目の前には水色の髪をした男性。
「あの…此処は何処ですか?貴方は?」
「申し遅れました。私はさんの担当のダンです。」
ダンはの不安を解すような、優しい声と話し方をしていた。
「担当?」
「はい。此処はそうですね。さんの世界の言葉で言うなら、天国という所でしょうか。」
「・・・天国・・・。」
一応成仏出来たらしい。
自分の死は受け入れがたかったけど、事実だった。
「お部屋を用意して在ります。お疲れでしょうから、今日はお休み下さい。」
ダンはの手を取り立ち上がらせると、小さな家の立ち並ぶ方へと歩き始めた。
「綺麗な所ですね。やっぱり。」
ダンから半歩下がっては歩く。
「そうですね。全ての始まりの場所なんですよ。」
「始まり?終わりじゃなくて?」
そうなんだ…。始まりね。
まだ何だかよく分かんないけど。
が頭の中で色々考えていると、ダンの歩みが止まった。
「着きました。こちらです。」
其処はこの天国と言う場所に在る、町の中の一軒家。
こじんまりしているけど、落ち着きのある、柔らかい雰囲気のお家。
ダンは扉を開けると、中に入って行く。
もダンに続いて部屋の中へ入った。
「きゃー素敵!」
「この家の物は全て使って頂いてかまいません。一応さんの好みの物を揃えてあります。」
「そうなんだーだからか。」
事前調査済みって事?さすが天国。
私の好みにぴったり。
こんな感じの部屋にしたかった。
流石に家具を変えるのは、かなりの出費。
だから昔からの物を使っていたけれど、一人暮らしを始めたらとか、結婚したらこんなお部屋にって思ってた。
の大事にしていた物達も此処に在る。
NARUTOの本やDVD、お気に入りのCDなど。
ただ一つ足りない物、それはパソコン。
やっぱりパソコンは無理かぁ…
電話線繋がってないしね。
一人苦笑いを浮かべていると、
「ではごゆっくり。」
そう言ってダンは去って行った。
はすぐさまベットへダイブ。
スプリングの良く効いたベットが、を受け止める。
これからどうなっちゃうんだろうなぁ。
始まりの場所とか言ってたけど、どういう意味なんだろう?
まぁいいや、なる様になるだろう。
はそのまま眠りに着いてしまった。