Crescent 1
   はたけカカシ Happy Birthday 2006    



 「月の国に行っているカカシ班からの連絡ですが・・・。」
 「なんだ?何があった?」
 「はい・・・。」

 連絡を受けたシズネは事の経緯を綱手に報告した。


 月の国。
 天然資源の豊富な豊かな国に、今、隊長はたけカカシ以下三名が任務で訪れている。
 諸国漫遊の旅に出ている王子を、自国のみかづき島まで無事送り届ける事。
 これが今回課せられた任務。
 事が順調に運ぶ場合と、そうでは無い場合と、色々あるが、今回は後者。
 謀反が起こり、時の国王は息子に国の未来を託し、その生涯を閉じた。





 ふ〜今回も無事に任務が終わって良かった。
 そろそろカカシも帰って来る頃かな。
 定期連絡では順調そうだったもんね。
 さてと火影様に報告〜。


 任務終了の報告をする為には火影邸の廊下を歩く。 

 火影の部屋の扉を叩こうとしたその時、部屋の中から耳を劈く様な声が聞こえた。


 「なに〜カカシが倒れた?!」


 
 カカシが・・・倒れた?


 その言葉が耳に届いた刹那、は火影の部屋に飛び込んでいた。

 「あっ、すいません・・・つい・・・」

 この里の長である火影の部屋に無断で入った事への非礼を詫び、
 一旦退室しようと一歩後ろに足を踏み出すと、綱手から声がかかった。

 「ああ、いい、気にするな。どうせ聞こえたんだろう。兎に角入れ。」

 は申し訳ありませんと再度一礼し、綱手の前まで足を進めた。

 「で、容態は?」
 「はい、チャクラ切れらしいですが、二週間はこのまま月の国に滞在するそうです。」
 「二週間か・・・アイツ等の喜んでる顔が目に浮かぶよ。」

 だけれど綱手の前には浮かない顔の上忍一人。

 「それで、綱手様、月の国より正式に同盟条約を結びたいとの申し入れがありました。」
 「ほお、それはこちらにも有利な話だ。前国王には世話になっているしな。
  それにあの国からの資金援助は、ばかにならんぞ。すぐにでも話を詰たい。」
 「では、誰かを向かわせますか?」
 「そうだな、ピッタリなヤツがここに一人居るな。」
 
 綱手はの顔を見ながらニヤリと微笑んだ。

 「、任務を命ずる。同盟条約の書状を持って、月の国に向かえ。」
 「・・・えっ・・・いいんですか?私で・・・。」

 同盟の条約は通常、特別上忍が執り行う。
 この様な駆け引きの場に、長けた者を送るのが通例。
 自身、特別上忍を経ての上忍昇格ではあるが、条約に関する任務は行なっていなく、
 今回綱手は駆け引き不要と考えたのか、それとも・・・。

 「ああ、二、三日ゆっくりして来い。ついでに見舞ってやれ。」
 「有難う御座います!」
 「その代わり・・・お前達休暇願いを出してあったな。たしか・・・」

 ゴソゴソと机の上に並ぶ書類を掻き分けると、綱手は二枚の紙を取り出した。
 
 「あった、あった、これだ。九月十二日から一週間。これはやらんぞ、やってもお前は三日だな。
  カカシは無しと言いたい所なんだが、夏休みも返上している事だし、
  二人に睨まれるのは私でもなぁ・・・
  カカシは当日だけで十分だろ。前日は待機にしといてやる。何事も無ければの話だがな。」
 「当日って・・・。」
 「どうせ小僧の誕生日を祝う為の休暇だろ。」
 「分かってらしたんですか・・・。」
 「まあね。
  さっさと支度をして来い。それまでに準備はしておく。」
 「分かりました。でわ・・・」

 は報告書を机の上に置き一礼すると、その場から姿を消した。



 「それにしても、綱手様。」
 「なんだいシズネ。」
 「よくカカシの誕生日ご存知でしたね。」
 「あぁ・・・家族だからな。この里の者達は・・・。」
 「そうですね・・・。」

 そう言って二人は、部屋の壁に並ぶ歴代火影の写真を見上げた。







 火影からの書状を携え、は月の国へ渡る船に乗り込んだ。
 青い絨毯を引き詰めたような海に、風がそよそよと靡く。
 の心は穏やかな海とは逆に大きなうねりを感じていた。



 もうすぐカカシに会える。


 任務で訪れる訳だけれど、綱手様は休暇もくれた。
 カカシの容態も特に問題はなさそう。
 サクラが一緒にいるから安心だし。
 長期休暇はなくなっちゃったけどね。

 『海が見たい』と私が言ったら、
 『じゃ、行こう』とカカシは答えてくれた。
 カカシの瞳のような澄んだ海が見たい。
 折角ならゆっくりしたいから、
 夏休みをずらして、カカシのお誕生日に綺麗な海を見に行こう。
 そう言ったら優しく抱き締めてくれた。
 それがちょっと早くなっただけ。
 


 さてと・・・どんな顔をして会おうかな?

 カカシが気づくまで、待っていようか。
 其処彼処に気配を残して、カカシに見つけてもらう?
 驚いてるカカシの顔を見て、楽しもうか。

 任務で来たのよって、しれっと言ってみる?

 それとも、カカシの胸に飛び込もうか。

 彼是考えたって、きっとカカシの気配を感じたらそんな事は吹き飛んじゃうのかな。



 風に靡く髪を押さえ、姿を見せ始めた三日月型の島に想いを馳せた。

 
 カカシ・・・
 会いに来たよ。
 今行くから待っててね。