「乳首、ちょっと湿っとるな…。10年前の僕がやったんやね」
そう言いながら、舌先で軽く転がしながら口にふくむ。
「ンッ…」
「君、敏感やなぁ…。乳首、好きなん?」
「ん…、ぁ………」
口にふくんだままでクツクツと笑われ、自分ばかりが熱くなっているようで恥ずかしさが込み上げる。
「やっ、僕ばっかり…、恥ずかしぃ…っ」
「君だけやないよ。僕かて、めっちゃ興奮してる」
わからん?と、腰をこすり付けられ、太ももに触れる市丸の欲望に思わず身体が震えた。
布越しでもわかる大きさに怖ろしくもなったが、同じ興奮を分かち合っている事実は、単純に嬉しかった。
「余裕あるように見えたんやったら、それは年の功…てヤツやね」
言いながら、胸から脇腹、ヘソへと舌で辿られ、快感なのかくすぐったさなのかわからない刺激に、全身の肌が粟立つ。
「ンアッ…」
いつの間にか寛がされていた袴の中へと侵入した市丸の手に、熱をもった中心を撫でられ、の身体がビクッと跳ねる。
五本の指でくすぐるように揉まれ、そのまま根元から撫で上げられると、の口からは甘い喘ぎが絶え間なく漏れた。
「やぁっ…っあ…、んっぅ…」
全身の感覚がそこに集中したように、熱く甘い刺激が体中を支配する。
「君…、可愛い声やね…」
市丸の声が、随分と離れた所から聞こえた気がして視線を向けると、今まさに、その舌での性器に触れようとしているところだった。
「や……アッ、ァ!」
なめらかな舌でねっとりと先端をさすられ、そのまま熱い口内に含まれる。
「あぁっ…、あ…あ……、んう…、くっ…ふ……っ」
強すぎる刺激に、声も涙も止まらない。
ただ熱くて、頭がどうにかなりそうだった。
のものを咥える市丸の頭の動きが早くなり、耳を塞ぎたくなるようないやらしい水音が大きくなる。
「ダメぇっ…!…ヤッ……、ンぅっ……!」
唇と舌で追い上げられるまま、は市丸の口内に堪えきれない欲望を放った。
市丸はそのまま口を離さずに、全てを吸い尽くそうとするように、過ぎた快感にがガクガクと腰を震わせるまで、口内のものをなぶった。
「はぁ…、は…、はっ……っ」
ようやく市丸の口から開放された頃には、既に息も絶え々々で、一度吐精しただけだというのに、にはもう、指一本動かす気力も残っていなかった。
「君、可愛いな…。もうそんなにメロメロになってしもて」
苦笑した市丸が、自分の着物を脱ぎながら目線を合わせてくる。
(ああ…、市丸隊長って着痩せするタイプなんだなぁ…)
普段は細くヒョロッとしたイメージだが、着物を脱ぐと、意外としっかり筋肉が付いているのがわかる。腕の太い部分なんて、の1.5倍はありそうだ。
潤んだ瞳でそんな事をぼんやりと考えていると、市丸の顔がゆっくりと近付いてきた。
「市丸隊長………」
「ギン、て呼んでや。それじゃ、長くて呼びづらいやろ…?」
「ギン…さん。アッ…!」
先程が吐き出したものでヌメッた市丸の指が、の後孔に差し込まれる。
異物感に苦しむを労わるように、市丸の唇が目蓋や頬、耳など、あらゆる所に優しくキスを降らせていく。
「ぁ…ん…、も……やぁ…っ」
差し入れられる指が二本、三本と増え、念入りに解されたそこは、トロトロに解けて、痛みや異物感よりも、既に快感が支配していた。
鈍い快感のみで決定的な刺激を与えてもらえないもどかしさに、はとうとう我慢できずに、どうにかしてほしいと涙声で訴えた。
その言葉を待っていたかのように指を引き抜いた市丸は、熟れた後孔に己の先端を押し付けると、の耳元に唇を寄せた。
「力、抜いとき…」
低くかすれた声にゾクリと肩を窄めた瞬間、指とは感触も質量も違う物が入り込んでくる。
「ア………ア……っ、ヤあっ……」
市丸の腕にしっかりと肩を抱かれ、ゆっくりと奥まで挿入される。
根元まで侵入を果たした市丸は、そこで動きを止めると、の様子を伺った。
「…」
首を横にそらし、強くつぶった目元から涙を溢れさせているにキスをすると、中を摩擦しないように小さくゆっくりと腰を動かす。
「あ…あ…、ぁ…んぁ…」
は、快感に耐えるように首を振る。どうやら痛みはないようだ。
市丸は、先程指先でみつけた前立腺を刺激するように腰を使った。
「アァッ!」
強弱をつけた抽挿の合間に、時折回すように腰を振ると、の身体がびくびくと跳ねた。
「…アッ!…ぁ…も…、だめっ……!」
「…、もう、イキそうなん…?」
「…あ……、ギン…さん……、好き…、好きです……。好き…ぃ…っ」
ぽろぽろと涙をこぼしながら快感に潤んだ瞳で自分を見上げるに、強い欲望がギンの下半身を突き抜けた。
「……。あかん子や…」
市丸は、の両足をグイッと広げ更に深く腰を入れると、己の欲望の赴くままに内部を蹂躙した。
「アッ!アアァ…ッ!ヤッ…、ァアッン!ひっ…アァッ!」
早すぎる腰の動きに、は高い悲鳴を上げる。
「ヤッ…!そっ…んな、に…、ダメ…ぇ…!イッ…ちゃ…う!………ッ!!」
市丸の突き上げに合わせて、ビュクビュクと精液が飛び出し、自らの腹を生温かく濡らしていく。
「ああ…、…ぁ…」
ヒクヒクと収縮するの締め付けに後押しされるように、市丸が熱い飛沫を放つと、放った瞬間の市丸のものが震える刺激で感じたのか、更に内部がギュッと市丸を締め付けた。
「ハァ……、…、あかん子やね…。僕の事、離さんつもり?」
「は……、ギン…さ…ん………」
の弱々しい、か細い声に限界を感じ取り、「もうでけへんか…」との中からゆっくりと熱を引き抜いた。
まだ荒い息を繰り返すの頬や髪を、労わるように撫ぜていると、回復したのか、いくらか呼吸が落ち着いてくる。
「もう寝ぇ、疲れたやろ…」
市丸の優しい声にいざなわれ、いつしかの意識は眠りへと落ちていった。
簡単な後始末を済ませた市丸は、眠っているの隣にもぐりこみ、すやすやと安らかな寝息を立てる、その寝顔を見つめた。
「ほんまは全部憶えてる…、て言うたら、なんて言うやろな…」
市丸は、記憶を失っていた間の出来事も、全て憶えていた。
市丸に忘れられ、寂しそうに俯いていたの姿も、好きだと言ってしがみ付いてきた事も。
…そして、記憶の抜け落ちた自分が考えていた悪巧みも…――
(なかなか魅力的な案やったんやけど…。まあ、これはこれでええか)
ついでに言うと、桜を見た後でを抱く事は、記憶を失う前から決めていた事だった。だからこそ、桜が咲くのを心待ちにしていたのだ。
受け入れられれば、この部屋で。拒まれれば桜の下で犯すつもりだった。
市丸は、ニヤリと口元をゆがめると、裸のを懐に抱きしめ、自身も浅い眠りについた。
もう、逃がさへんよ…――
◇END◇
――――――――――
2008/5/26 レンブラント
|