お腹…、すいた〜…――
は、きゅるきゅると情けない音をたてる腹部を押さえて膝を付いた。
そのまま草むらに横たわり目を閉じると、目蓋の間から涙が滲んだ。
空腹で泣くなんて、みっともなくて嫌になるが、3日前から何も食べていない体は、もう限界だった。最後に食べた物だって、量も質も決して良い物ではなかったのだ。
(なんか食べたいよぉ〜)
「あ、捨て猫や」
(…は?)
「わー、可愛えなぁ。泣いとる」
突然、頭の上から降ってきた声に顔を上げると、背の高い狐が…じゃない、背の高い、細身の男が自分を見下ろしていた。
「お腹すとるん?」
問われて、思わずこくりと頷いた。
「おいで、食べさせたるよ。…そのかわり、ついて来たら、君はもうウチの子決定やけど」
「へ…?」
「おいで」
「………うん」
空腹に目が回りそうだったは、言われた意味も考えずに、目の前に差し出されたその手を掴んだ。
「名前はあるのん?」
「…」
「か。僕はギンや、市丸ギン。よろしゅうな。今はお団子しか持ってへんけど、とりあえず食べ」
「う、うん…。ありがとう、…ギン」
ギン…。銀狐………?
◇◆◇
「さて。子猫拾うたら、まずはお風呂やんなあ?」
子猫、ことを部屋に連れ帰った市丸は、勝手に一人で納得すると、そのまま手を引いてを浴室まで連れて来た。
「じゃ、一緒にお風呂入ろな?」
「いっ、一緒に!?」
まさか一緒に入るとは思っていなかったは、驚いて身を引くが、市丸はそんなの言葉が聞こえていないかのように、片手で腕を引き寄せると、もう片方の手での着物を器用に脱がせてしまった。
「うう〜〜〜」
「そない恥ずかしがらんでもええやんかー」
顔を真っ赤にして自分に背を向けるを笑って茶化す市丸だが、自分の着物を脱ぎながらも、その目がしっかりとの形のいい小ぶりな尻を見ていることには気付いていなかった。
(可愛えお尻やなぁ〜)
「ひゃあ!!」
「さあ、お風呂入ろなぁー」
(ななななんでこの人、お尻触ってるの〜〜〜!?)
まるで肩でも押すように自然な仕種でお尻を撫でられ、そのまま浴室へと押し込まれた。
「痒いトコないか?」
「だ、大丈夫…デス」
結局、拒むに拒めないまま、市丸と一緒に入浴する事になってしまったは、市丸に背を向けるかたちで前に座らされ、おとなしく頭を洗われていた。
恥ずかしい気持ちは消えないが、頭皮を滑る市丸の指先は、何とも言えず心地良い。
「流すで、目つぶっとき」
「ん」
ザァっと2〜3回お湯で濯がれ、ぷるぷるっと頭を振ると、クツクツ市丸に笑われる。
「ほんまに猫みたいやな。…じゃあ、次は身体洗おな?」
「え!?か、身体は自分でっ…」
「ええから、そのまま座っとき」
立ち上がろうとした肩をぐっと押さえられ、躊躇いながらもそのままストンと膝をついた。
両手を膝の上につき、緊張の面持ちで待つが、後ろで石鹸を泡立てているらしき気配はするものの、身体を洗うためにあるであろうヘチマがの視界から消える事はなかった。
ヌルリ。
「っ!!」
背中に触れたヌメッた感触に、の肩が跳ねる。
(な、な、何で素手!?)
市丸は石鹸の泡を、直接素手で塗りつけていた。
そして、次第にその手の動きはまるで性感を煽るかのように、の背中や腰を滑り出した。
「は…、っ……」
くすぐったいような気持ちいいような、微妙な指先の動きに、の息も上がっていく。
「ぁっ…」
市丸の腕が前に回り、の小さな胸の突起に触れると、の口から吐息のような声が漏れた。
「…」
「はぁっ………はっ…」
囁きと共に後ろから耳朶を口にふくまれ、耐え切れずに浴室の床に前のめりに両手をつくと、そのまま背中に圧し掛かられる。
「んっ!や…っ」
両手を前に回した市丸に、熱を持ちはじめた中心を握られると、の身体に電流のような刺激が走った。
「あぁっ!や…ぁっ…」
両手でやわやわと刺激され身を震わせていると、ふいに身体を反転させられ、床に背中が付き、目の前には市丸の顔が迫っていた。
「ん…っ」
荒々しく口付けられ、半開きの唇の隙間から舌が差し込まれた時、の中心に指とは違う、熱い塊が擦りつけられた。
「んぅ…っ!」
それが市丸の欲望だと気付いた瞬間、絡みついた指と共に腰を動かされ、の思考は快楽の中へと混濁していった。
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