「ボクが帰るまで、絶対に一人で外に出たらあかんよ」
そう言い残して市丸が家を出てから数日。
瀞霊廷内に侵入した異質な霊圧、大きな戦いの気配…。尸魂界は、かつて無い異常事態に陥っていた。
(ギン…、遅いなあ………)
は、はぁーっと大きく溜息をついた。
食料は十分に用意されていたので、あと数ヶ月は外に出なくても飢え死にする事はないだろうが、外の様子が明らかに異常であるだけに、は自分の事よりもギンの身の安全が気にかかった。
外では大きな霊圧がぶつかる気配が続いている。
(ギンは三番隊とかいう所の隊長なんだよね…。よくわかんないけど、すごく強いらしいし、大丈夫だとは思うけど)
お腹が空くのは霊力がある証なのだという話は市丸から聞かされたものの、は霊術院には行っていなかった。市丸の手によってあらゆる教育は(性教育含む)施されてはいたが、外との係わりは、たまに市丸と一緒に買い物や散歩に行くくらいで、本当に飼われる様にひっそりと暮らしていたのだ。
なので、護廷十三隊の中で市丸がどういう立場であるのかは、外で会う死神達の市丸に対する態度などから推し量るしか術はなかったが、一般の死神にとって市丸は相当怖がられているらしく、市丸ギンという存在の前では自分のような者は霞んで視界にも入らないのか、は今まで市丸と一緒に居ても、他人にその存在を面と向かって気にされた事は一度もない程だった。
そんなにすごい死神に気に入られてしまったという事実を、なかなか受け入れる事ができず、初めのうちはまるで、悪魔と契約を交わしてしまったような気持ちでびくびくと過ごしただったが、今ではそれも懐かしい。
この狭い世界の中で、が市丸を愛するようになるのに時間はかからなかった。
今思うと、最初に地面に転がっている所を発見されてから、全ては市丸のシナリオ通りに事は進んでいたのかも知れない。
は壁にもたれて両脚を前に投げ出し、両手を膝の上に重ねた。
市丸と出会った頃には痩せてガリガリだった手足も、食生活が改善され健康的に肉が付いた。身長もちょっとだけ伸びていた。
心も、そして身体も、全て市丸によって作り変えられたと言っても言い過ぎではないだろう。
(随分色んなコトもされたしなぁ…)
初めて抱かれた夜以来、何度身体を重ねた事か…。すっかり、抱かれる事にも慣れてしまった。
(そういえば、こんなに長く触れられないのも初めてかも)
慣らされた身体では、正直そろそろ辛くなってきているのも事実で…。は躊躇いながらも、そっと着物の隙間から自身に指を這わせた。
「は…、………んっ…」
軽く握りこみ、やわやわと揉み上げると、久しぶりの刺激に身体が反応する。
は熱を持ち始めた中心を扱きながら、左手で胸の突起に触れた。
市丸の指や舌の動きを思い出しながら刺激を与える。
「はぁ……あっ……」
しかし、確かな快感があるはずなのに、物足りなさは否めない。
ギンの愛撫はこんなものではない。ギンは…。
「あ…ギン…、ギン…っ」
「はい?」
(………え?)
返るはずの無い返事に驚き顔を上げると、部屋の襖を明けた市丸が、柱にもたれてこちらを見ていた。
「っ………!」
は、素早く着物の乱れを合わせながら市丸に背を向けた。
「どないしたん?もうやめてまうの?」
後ろから市丸が近付く気配がする。
「、ただいま。…帰った早々、ええもん見せてくれてありがとうな」
そう言いながら、背中からふわりと抱きしめられた。
だがしかし、帰って来てくれた事は嬉しいが、今の状況は素直に喜べない。
「い…、いつから………見てたの…?」
「ん?んーとな…、ボーっと自分の手ぇ眺めてたところから」
(って、全部だよ!!それ、見られたくないとこ全部だから!!てゆーか、そこで声かけてくれてれば間に合ったのにっ!!)
「〜〜〜っ!」
が顔を真っ赤にして身を捩ると、耳元で市丸がクツクツと笑った。
「…まだ、途中やろ」
耳に舌を這わせながら囁かれ、脚の間に手を差し入れられる。熱を持った中心をゆるりと扱かれ、は「ア…ッ」と甘い声を上げて震えた。
後はもう、愛する人からの待ちわびた愛撫に身を任せるだけだった。
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