「、俺が好きか…」
「大好きです。…貴方以外の、一体誰を好きになれるとお思いですか?」
そう言った私に微笑んだ、貴方の笑顔が忘れられない…。
「は…はぁ…、ん…ぅ…」
暫らく椅子に座っての様子を観察していたザエルアポロだったが、薬の効果が表れだし、が堪えきれない声と共に切なげに身体をくねらせた所で、静かに立ち上がった。
「そろそろ気持ちよくなってきたらしいね」
「クッ…、ち、がう…」
「嘘つきだね。…性器が濡れているよ」
「アァッ…!」
濡れた先端を指で軽くはじかれ、身体がビクリと震えた。
「クックッ…。そう、その声だ。やっぱり直接耳に響くと感慨深いものだね」
「な…ぜ、こんな………」
「可笑しな事を聞く…。なぜか、だって?答えは一つ、『興味がわいたから』実験を実行するには十分な理由だ」
「実…験?」
違和感を覚える言葉に、は表情を曇らせた。
言葉を交わせば交わすほど、ザエルアポロという男がわからなくなっていく。
「おや、実験体扱いはお気に召さないかな?全く、奴に甘やかされていたからって、誰にでも優しくしてもらえると思うなよ」
ザエルアポロのその一言は、予想以上にの胸を抉った。
甘やかされていた…。確かにそうかも知れない。
イールフォルトは言葉こそ乱暴だが、に手を上げた事は一度もなかったし、SEXの時もいつも優しかった。
従属官であると同時に恋人でもあるという関係が、特別だったとは言え、実際、自らの主に手酷い仕打ちを受ける他の従属官を目の当たりにした事もある。たまたま自分の主がイールフォルトだったから良かったものの、もしかしたら、斬り捨てられる立場にいたのは自分だったかも知れないのだ。
「おいザエルアポロ、こんな所にいたのかよ」
突如響いた声に、の身が竦んだ。
「ノイトラ…、何の用かな?」
「何の用ってよ、テメー聞いたか?」
まだ遠い位置にいるのと、丁度ザエルアポロの陰になっているせいでの存在に気付く事無く、ノイトラは言葉を続けた。
「テメーの兄貴、現世で死神に殺られたってよ」
その言葉はを決定的な絶望の淵へと叩き落した。
「そんな事、とっくに知っているよ」
ノイトラに答えるザエルアポロの声が遠く聞こえる。
正直、は今の瞬間まで一縷の望みを捨ててはいなかった。
イールフォルトは死んだと言っていたのはザエルアポロ一人で、もしかしたらザエルアポロによる性質の悪い嫌がらせなのではないかと期待していた。
しかしここに第三者が現れてしまった。まさかノイトラがザエルアポロと示しを合わせる為にわざわざやって来たとは考えにくい。
「い…やだ…、どうして…イールフォルト様っ………」
の悲痛な呟きに気付いたノイトラが、ザエルアポロに近付き、背後の寝台を覗き込んだ。
「おい…、ソイツは………」
「ふふっ、良いだろう?…もう僕の物だ」
ノイトラはザエルアポロを凝視して眉を寄せた。
「手の早えこった」
「他の奴に横取りされては面倒だからね」
ニヤリと笑ったザエルアポロに、ノイトラは「気持ちわりぃ奴」と言い残して去って行った。
「おや、どうしたんだい?。今更泣いたりして」
首を横に向けて涙を流すに、ザエルアポロはわざとらしく訊ねた。
「ふっ、まあわかってるよ。どうせ君は僕の言葉なんて信じていなかったんだろう?だがこれは紛れもなく真実だ。イールフォルト・グランツは死んだ。嘘でもなければ、間違いでも夢でもない」
は涙で濡れた目をザエルアポロに向けた。
「そして君は一人ぼっち…。こんないやらしい身体を抱えてね」
鼻先が触れ合う程の距離でゆっくりと囁かれ、屈辱感に唇を噛んだ。
「そんな可哀想な君を救ってあげるのは、奴の弟である僕の役目だと思わないか?」
「な…にを…。ふざけっ…アァッ!」
の先走りで濡れた後孔に指を突き入れられ、グチュグチュと乱暴に、しかし的確にの感じる場所を攻められる。
「やっ、やめっ…、アッ、アァ…ッ」
柔らかく熱を帯びたそこの感触に、ザエルアポロは舌なめずりをして指の代わりに取り出した自身を宛がった。
「ヤアッ!嫌だぁっ!やめてっ…イヤアアァァッ!!」
強引に一気に奥まで入り込まれ、の喉から悲鳴があがった。
「ふ…、これで君は、僕の物だ…」
満足そうに溜息をついて腰を突き上げてくるザエルアポロを、は涙で濡れた目で睨みつけた。
「こ、んな…のは…、卑怯だっ…」
ザエルアポロは腰の動きを止めると、笑みを消して目を細めた。
「卑怯だって…?だからどうした?卑怯じゃなければ何か得をするのか?
…まあ、卑怯だろうと何だろうと、死んだらお終いだけどね」
『死』という言葉に、の身体が震える。
「お前が今こんな目に遭っているのは何故だ?奴が死んだからだろう!?死んだら終わりなんだよ!まだわからないか、馬鹿がっ!」
「ヤッ!アッ、アァッ!ヒッ…、ヤァッ………!」
容赦なく腰を打ち付けられ、その衝撃での身体がずり上がる。
ザエルアポロは片手での肩を抱くと、もう片方で涙に濡れたの顔に触れた。
「馬鹿な…。そんなに奴が良いのか?」
「ハッ…、ふ……」
乱れた呼吸で返事を返す事ができないは、しかしその揺れる瞳が何よりも雄弁に答えを語っていた。
「…、愛してる。お前は俺だけのものだ」
イールフォルトの声色を真似て耳元で囁くと、の内壁が無意識に淫らな収縮を繰り返した。
「やめて…っ」
はその声から逃れようとするように首を振って泣きじゃくった。
「、愛してる…」
「ア、アッ、アァァァーッ!!」
ザエルアポロが蕩けた内壁をかき回し、最奥まで突き上げるとは悲鳴とも泣き声ともつかない声と共に果てた。
馬鹿な…
奴なんかのモノじゃなければ
初めから僕のモノなら
こんな思いをしなくて済んだのに
僕がちゃんと壊してあげるよ
◇END◇
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2009/2/27 レンブラント
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