キーンコーンカーンコーン……
「お昼だ〜!暁(サトル)!早くヒビキ達のとこに行くよ〜!」
「わかったからちょっと待てって。
……お前弁当箱持たないでどうすんだよ!」
そう言って俺に弁当箱を渡してくれるサトルに
「サンキュ♪さ、行こ♪」
とお礼を言って弁当箱を持った俺、高梨奏(タカナシカナデ)と
大友暁(オオトモサトル)は1年C組の教室を出る。
向かうは1年A組の教室。
そこでは俺の双子の弟にして最愛の恋人、高梨響(タカナシヒビキ)が
待っている。
2ヶ月前やっと思いの通じた俺達は、
それ以降学校での昼休みを必ず一緒に過ごしている。
クラスが離れているので授業で一緒になる事はない。
だからまた図書館でヒビキの部活が終わるまで待っていようと
思ったんだけど、『悪い虫がついたら困る』とか言って、
まっすぐ帰るよう念を押されてしまった。
なので登校する時と昼飯の時が、唯一学校でヒビキと過ごせる
時間だ。
でも以前は登校時しか一緒にいれなかったので、
この昼休みは俺にとってとても貴重。
それに母さんに『自分達のお弁当位作りなさい』と言われ、
ヒビキの弁当は毎日俺のお手製だ。
ヒビキは今日も喜んでくれるかな?と思いながらA組に向かった。
「カナデ〜!待ってたよ〜♪」
そう言って、A組の教室に一歩踏み込むと同時に
俺に抱きついてきたのは橋元忍(ハシモトシノブ)。
ヒビキと一番仲がいい奴で、身長が160cmと小さく、
クルクルと良く動く真っ黒な大きい目が可愛い。
その上人懐っこいので学園の中ではマスコット的な存在だ。
でも甘く見てたら怪我をする。
なんてったってヒビキと同じ空手部で、ヒビキの次に強いんだから。
「はいはい、わかったからお昼食べよ?」
俺は苦笑しながらシノブを引き剥がし、同じく苦笑しているヒビキを
見た。
他の奴に俺がこういう事をされたら怒るヒビキも、シノブだけは
別格らしい。
ま、ヒビキが言うには俺とシノブの間に何かが起きるとは思えないから
らしいけど。
ヒビキの隣に俺、向かいにシノブとサトルが座る。
これがいつもの位置だ。
シノブとサトルは俺達が付き合っている事を知っている。
シノブは結構目聡いし、そういう事に偏見が無いので、
俺達の態度を見てすぐにわかったみたいだし、
サトルは中学時代ヒビキの様子を俺に教えてくれていた奴だ。
だから俺達がうまくいった事を本当に喜んでくれた。
「やっぱりカナデの卵焼きはいつ見てもおいしそ〜♪」
そう言って購買で買ったパンを齧るシノブに
「1個やろうか?」
と俺が言うと
「止めとけ止めとけ。
そんな事したらシノブは部活中にタカナシから苛められるし、
カナデは家に帰ってから散々鳴かされるだろ?」
と同じく購買で買ったおにぎりを食べているサトルに突っ込まれた。
サトルのあっけらかんとした性格は好きだけど、たまに身も蓋もない。
「そ、そんな事無いよね〜、ヒビキ?」
と俺が助けを求めるようにヒビキを見ると、さあな、とニヤリと
微笑まれた。
……最近どんどんヒビキが意地悪になってる気がする……