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※18禁※
情事の後、私は必ずこの背中の昇り龍に口付けを落す。

「相変わらずお前はそいつが好きだな。」

その見事な龍を私が触れるままに任せているその人は、
ベットにうつ伏せで寝転がり、煙草を吸いながら苦笑している。

「ん〜、貴方自身より好きかもしれませんね〜。」

私が笑ってそう言うと、枕元に置いてある灰皿で煙草を消し、
くるっと上を向いて私を自分の上に乗せた。

「……もう1度体に教え込まないとダメみたいだな」

意地悪く笑って私の頭を引き寄せ、強引に唇を重ねる。
そのキスに甘く蕩けながら、それもいいですね、と囁いた。


****************


私、折原遼(オリハラハルカ)は大学病院で外科医をしている。
私達が初めて出会ったのは、この人が救急病棟に
運ばれてきた時だ。
相模良哉(サガミリョウヤ)という名前のその患者は、
背中を刃物で30cm程斜めに斬られており、
うつ伏せのまま意識不明で運ばれてきたのだ。

患部を治療する為着ていた服をハサミで切っていた時
そこから血塗れの昇り龍が現れた。
緊急事態だというのにも関わらず、私は息を飲んだ。
一気に天を駆け昇る、壮絶なまでのその美しさと
それ自体が命を持っているかのような力強い意志を湛えた瞳。
その姿に一瞬で魅せられてしまった。

何としても斜めに胴体を切り裂かれた龍を元に戻してやりたいと、
懸命に治療した。
幸いにも傷が浅く、その上鋭利な刃物で切られたおかげで
ほぼ傷跡は目立たなくなるだろう。
同僚の形成外科医とも相談し、約1ヶ月の入院期間と決まった。


「サガミさん、お体の調子はいかがですか?」

毎朝の回診。
最初の頃は怪我が怪我だけに警察も何度も出入りしたし
お見舞いに来るのも一目でソッチの人とわかる人ばかりで
いくら個室とはいえ病院自体も物々しくなっていた。

でも今日で丁度2週間目、やっと病院にも元の雰囲気が
戻りつつある。

「いつまで入院すればいいんだ?」

「そうですね〜。後3週間位ですかね。」

私はそう答えながら、ちょっと失礼、と言って背中側に周り
病院服をはだける。
普段ならこういう事は看護師達がやってくれるんだけど
実はみんなこの病室に寄りたがらない。

その気持ちはわからないでもないけどね。

なので、よっぽどの事がない限り私一人で大丈夫ですよ、と言うと
みんなホッとしていた。
私は元々そういう事に無頓着なので、
相手がヤクザだろうが政治家だろうが別にどうって事はない。
だから私は毎朝一人でこの部屋に来る。
その方が私も気楽だし。

巻いてある包帯をグルグルと取り払って患部をあらわにすると
やはりそこには私の好きな昇り龍が現れた。
一瞬ほぅと溜め息を漏らした後、手早く消毒を済ませ、服をかける。
腫れも大分引いてきたし、このままいけば綺麗に治るだろう。
するとサガミさんがこちらを向き直り

「……センセイは刺青が好きなのか?」

と聞いてきた。

いつも見ている事に気付かれちゃったかな。

私は苦笑しながら答えた。

「別に刺青自体が好きな訳じゃないですよ。
 ただサガミさんの背中にいる龍に
 一目惚れしてしまったんですよね〜。
 だから早く綺麗な姿に戻してあげたいんですよ。」

サガミさんは無言になって固まっている。
そんな様子を横目で見ながら

「それじゃあ又時間がある時にでも顔を出します。
 何かあったらいつでも呼んでくださいね。」

とクスッと笑って病室を後にした。


俗に黒神(クロガミ)一家と呼ばれる
関東一円を牛耳っている組の若頭をしているサガミさんは
一見普通の人と何等変わりはない。
カルテによると私より2つ年上の31歳。
口数は多くないが穏やかだし
病院に運ばれて来た時に身に着けていたスーツも
決して品がないものではなく、一流企業のサラリーマンかと
思えるような落ち着いた印象だった。
背中に背負った刺青と、心の奥底まで見抜かれるような
鋭い視線以外は……


私は普段時間が空くと、担当の患者さん達の部屋を周って
雑談する事にしている。
その方が患者さん達も元気になってくれるし、元気になってくれれば
私も嬉しい。

特に最近はサガミさんの部屋に来る事が多かった。
基本的には私が一人で喋っているのを
サガミさんが黙って聞いてくれているだけなのだけど
合間合間に的確な助言をしてくれるし
何となく落ち着けてとても居心地がいいんだ。

だからその日も少し時間が空いたので、
何の気なしにサガミさんの病室を訪ねてみただけだった。
コンコン、とノックをしそのまま扉を開ける。
すると目の前に飛び込んできた映像は……

下半身だけ何も身につけず、ベットの上に四つん這いになった
男性に、こちら側を向いているサガミさんが
病院着の前だけはだけて腰を突き入れている姿だった。


うつ伏せになっている為私に気付かないのか、
その男性は喘ぎ声をあげながら腰を揺すり続けている。
そしてサガミさんは抽挿を続けながら、私の方を射抜くように
見詰めていた。

……ドキンドキンドキン……

その映像とサガミさんの視線に、私の心臓は急激に暴れだす。

「……センセイ……」

サガミさんが絡みつくような視線を私に向けて、その男性を思い切り
突き上げる。
一際高い嬌声をあげ、その男性が果てたのがわかった。
それまで入り口で立ち尽くしていた私は、ハッとして

「……傷が開かないよう気をつけてくださいね。」

と、やっとそれだけを言って踵を返した。


一人一人の医師に宛がわれる、自室の仮眠ベットに横になった後も、
私の心臓は暴れ狂ったままだった。
サガミさんの絡みつくような視線が目に焼きついて離れない。

もしあんな風にサガミさんに抱かれているのが私だったら……

……ズクンッ

下半身が反応する。
いけないとは思いつつも、サガミさんの視線を思い出して
反応するモノに、自らの手を伸ばした。


トントン、ガチャ。

後少しでイキそうだという時、扉を開けて誰かが入ってきた。
前を空けていたズボンはそのままに、
慌てて白衣で前を隠してベットの上に起き上がる。
ベットが見えないように遮ってあるカーテンをシャッと開けたのは……

「サ、サガミさん、どうしてこんな所に……」

その問いかけを無視したまま、慌ててベットから降りようとする
私の前に立ち塞がり、いきなり私のモノを白衣の上から握り込んだ。
つい先程まで自らの手で扱いていたそこは、未だに熱を持って
勃ち上がっている。

「……や…やめっ……」

恥ずかしくて必死で手を離させようとする私の腕を掴み
無理やりベットに押し倒す。

「……センセイ、俺の部屋を覗いた後、一人で何をやっていた?」

先程と同じ絡みつくような視線で私の目を覗き込みながら
白衣の上から私のモノを扱いてきた。
布が擦れる感触に思わず、あぅ、と呻いて仰け反ってしまう。

「センセイも俺と同じで男にしか勃たないんだろ?
 俺のセックスを見て興奮したか?」

確かに私は根っからの同性愛者だ。
でも、それを私の周りは誰も知らない。なのに何故……

「……同じニオイはすぐわかる。」

私の疑問に気付いたのか、サガミさんはそう答えて、私の白衣の前を
はだけた。


「……こんなになってたらキツイだろ?」

そう言って屈みこんだサガミさんは、私のモノをそのまま口に
咥え込んだ。

「や、止めて下さい!傷が開いちゃいますよ!」

必死に逃げようとするが、私の腰をしっかり両手で抑え込んで
離さない。

「んんんっ……はぁ……あ……」

私はあっという間に昇り詰めそうになる。

「サ…ガミ……さん……も……はなし…て……」

もう限界だと思った時、突然口をはなしイカせないよう私の根元を
ギュッと強く握って、リョウだ、と言う。
そして

「俺はリョウヤだからリョウと呼べ……センセイは?」

「ハ、ハルカ……」

私が答えると、

「俺は入院した時からお前を俺のモノにしたいと思ってた。
 さっきの奴はお前の代わりに抱いていただけだ。
 ハルカ……俺のオンナになるか?」

と聞いてくる。
一刻も早くその状態から開放して欲しかった私は、その言葉に
夢中で頷いた。
するとリョウは満足そうに

「いい子だ。その代わり、背中の龍ごと俺をお前にくれてやる……」

と笑って、一気に私のモノを扱きながら滅茶苦茶に私を翻弄する。

「やああ!……リョ、リョウっっ……!」

イキナリの激しさに私はあっという間に達し、リョウの口の中に
白濁液を吐き出す。
リョウはそれを最後まで吸い上げて飲み込んだ後、
この続きは退院してからな、とニヤッと笑った。


****************


「……ハルカ、何を考えてる?」

私を正面から貫き、顔中にキスを落していたリョウが聞いた。
リョウが退院してから私はリョウのマンションに引っ越した。
あれからもう1年半。
私達はお互いに忙しい為すれ違う事が多いけど、
それでも結構うまくやっていると思う。
背中の傷も、今ではうっすらと白い線が残っている位だ。

私が苦笑しながら、何でもないですよ、と答えると

「随分余裕だな。この分なら一晩中啼いても大丈夫そうだな……」

と意地悪く言った。そんな表情にも未だに夢中になってしまう。

「……久々にたくさん啼かせてください……」

そう答えて、背中の昇り龍ごと、愛しい私のオトコを抱き寄せた。

− 完 −

2005/05/15 by KAZUKI



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