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折原遼 視点

今日は非番だったので昼間は家のノートPCで仕事をし、
早めに帰るというリョウの為に、スーパーへ買い物に行ったりして
過ごした。
私達はお互いにお酒が強いので、夜時間のある時はゆっくり家で
晩酌をする事が多い。
いつも通り若い子達を連れて来るだろうと予想していた私は
フンフン♪と鼻歌を歌いながら少し多めにおつまみを
用意していた。


元は患者と医者という立場だったリョウと私が
ヤクザの若頭とその情夫という関係に変わってから半年。
勢いで始めたような同居生活は、すれ違いが多いわりには
楽しくやっている。
一緒にいられる時間が少ない分、それが叶う時にはとても濃密に
その時間を過ごす。
そしてお互いを大切に思い合っていると実感出来る今の関係が
私にはとても居心地がいい。

相変わらずリョウは口数が少ないけれど、大切な事は必ず言葉に
出してくれるし、いつも連れ帰ってくる若い子達が色々と教えて
くれるので、そのおかげで私はリョウについて様々な事を知った。


ガチャッと玄関の戸を開ける音がし、仕立ての良いスーツ姿の
リョウが、3人の組員を連れて帰って来た。

「おかえりなさい」

台所から顔だけ出して笑いかけると、リョウの目が少し
優しくなる。
常に何かを警戒するように厳しい表情をしているリョウが、
私の顔を見て少し安心してくれる、そんな瞬間が私は
大好きだった。


その後はお酒を飲んだり私が作ったつまみを食べ
若い子達の話に笑いながら過ごした。
そのうち向かいに座っていた内の一人が話し出す。


巷で『黒神(クロガミ)の昇龍(ショウリュウ)』と呼ばれる
相模良哉は、その背中に彫り込まれた昇り龍を決して人には
見せないのだという。
そしてその昇り龍を目にする事が出来るのは本気で怒らせた
時のみ。
だから一度目にしたが最後、二度と生きてその見事さを語る事が
出来ない、との噂まで流れているそうだ。

「ふ〜ん、そうなんですか?」

隣に座っているリョウに聞くと、苦笑しながら冷酒をくいっと呑み
肯定も否定もしなかった。
すると

「ハルカさ〜ん、兄貴は俺達にも見せてくれないんですよ?
 曲がりなりにも舎弟なんすから、
 ちょっと位見せてくれてもいいと思いませんか〜?」

と私に振ってくる。
他の二人もそうですよ〜、と相槌を打っている。
まだ二十歳前後のこの子達はとても人懐っこくてかわいいし、
本気でリョウに惚れ込んでいる事がわかる。
だから味方してあげたい気持ちは山々なんだけど……

「ん〜、それはさすがにダメですね。
 あの昇り龍は私のですから。」

と笑って答えた。


「明日の朝10時にお迎えに上がります。」

と礼儀正しく挨拶する3人に、リョウは冷酒のコップを持って
座ったまま黙って頷く。
私は玄関まで3人を送り、気をつけて帰ってくださいね、と
手を振って見送った。
エレベーターに乗るのを確認した後、扉を閉めて振り向いた瞬間
いきなり抱き締められた。


……私の頬を、絹のネクタイがさらっと掠める。

私はリョウの背中を優しく抱き締め返した。

「突然どうしたんですか?」

頬に当たる絹の感触を楽しみながら問う私に

「……あまりあいつらに甘い顔をするな。
 ハルカは俺のオンナだ……」

と、早急な口付けを落としてくる。
少しアルコールとタバコの匂いがする、情熱的なキス。
でもその奥に何故か不安そうなリョウを感じる。
私はそれに積極的に応えながら、その不安そうなリョウの背中を
優しく擦った。

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