バズライトイヤーのアストロブラスターのスタンバイエントランスの所で 4人が待っていた。

「サトル、大丈夫?」

「マサシと一緒なんだから、大丈夫に決まってんだろーー」

「あ、口が戻ってるから、大丈夫だね。」
とシノブが言って、みんな笑った。

スペースクルーザーに乗り込み、光線銃で敵を撃っていく。
マークによって点数が違って、高い所や、動く所は点数が高くなっている。
コツが掴めない内はなかなか当たらない。みんな、ほとんど本気で打ち まくっていた。

終わった所で点数によって、ランク分けがしてある。

一番の高得点はシノブで、ギャラクティック・ファイター。
次がツカサとサトル、プラネット・パイロット。
ヒビキ、カナデ、淀川の3人は、ステラシューターだった・・・

「ちびっ子ギャラクティック・ファイター・・・・・、
 ハシモトにぴったりだな・・・」
淀川がボソッと言って、みんなが笑う。

「面白かったねーー」
シノブが言う。
たぶん今日楽しんだアトラクション、全ての場所で言ったはずのこの台詞・・・

時計を見ると9時45分・・・

「さ、帰るか。」

「うん・・・」
シノブが寂しそうに頷く。

「なんか、想像していた以上に楽しかったな。」

「また来よーぜ、な、シノブ。」

「今度は朝一で来れば、もっといっぱい遊べるぞ。」

みんな口々にシノブを慰めている。
この6人で来ることに、ちょっとだけ不安があったのだが、来てよかったな、 淀川は内心ほっとしていた。

突然シノブが、
「あ、夜食買わなくちゃ!」
と言って、ツカサの手を取りダッシュで走り出す。

「先に行ってて、買ったら追いかけるから。」

何ともすごいパワーだ。
(密かにユンケル飲んで来たんじゃねーのか、シノブも・・・)
サトルが呟く。

シノブはピザを6切れ購入し、淀川から渡されたお金の残りを見る。
四千円ちょっとある。
このまま返そうかと思ったが、記念に何か買えるのではないかと思い付く。

時間がないので、ピザ屋の近くのショップを覗いてみると、 キーホルダーや、携帯ストラップなどが並んでいた。
ディズニーランドらしくて、でも、あんまり子供っぽ過ぎないもの (たぶん僕にしか似合わないから・・・)、と思って見ていると、 ミッキーフェイスのカラビナ型キーホルダーがあった。
シンプルで、きっとみんな、気に入ってくれると思う。
三色あったので、それぞれ二人ずつで、とも思ったんだけど、今回は6人で 一緒に来たんだから、その記念にと思って、全員お揃いの黒に決めた。
金額はぎりぎりで、シノブの手には6円が残った・・・
(もしかして、僕って買い物上手・・・?)

「さ、急ごう。」
ツカサがシノブの手をとり歩き出す。

メインエントランスの所で、シノブは後ろを振り返る。
遠くに小さくシンデレラ城が見える。
ガラスの靴を落としてシンデレラは王子様と結ばれたけど、 僕はツカサの書いた日記でツカサと結ばれた。
みんな、きっかけはいろいろだけど、それぞれに、大切な人を見つけて、 今、僕たちは幸せです。
ありがとう、今日と言う日を与えてくれた、全てのものに・・・

シノブはツカサを見上げて笑い、みんなの待つ駐車場へと急いだ。


****************


もう10時過ぎだ。
シノブとツカサが急いで車に戻ると、サトルが外で待っていてくれた。
中に入ってそれぞれに、夜食のピザを配給(?)し、記念にと言って キーホルダーを渡した。

「全部淀川先生の宝くじ資金からなんだけど・・・
 先生、何から何まで、ありがとう。」

「オレは何もしてないぞ。
 礼を言うなら、うちの親父と、宝くじ協会に言ってくれ。」
なんとなく、照れくさそうに、先生はそう言った。

「さー、夜食食べたら、お前らは寝てろ。
 オオトモは大事な任務があるからな。」

「おー、任せとけ。
 ユンケルってすげーな。
 今晩はこのまま寝なくても大丈夫かもな。」

そう言うサトルにシノブが
「どういう意味?」
と笑っている。

「マサシが道を間違えて、一晩中走り回っても、ナビ出来るって
 意味だよ。
 シノブ、欲求不満か?
 見ない振りしてやるから、ミナセとイチャついたらどうだ?」

そう言うサトルに、
「する訳ないでしょ!」
と返すが、その横からツカサがシノブのほっぺにキスをする。

「みんなの前ではしないって言ったじゃない〜〜〜」
赤くなったシノブが言い返すと、

「このメンバーの前だったら問題ないさ。」
と涼しい顔で答えるツカサ。

みんなの笑い声と共に、車はスタートする。
浦安ランプから入った方がスムーズだということで、ちょっと回り道をする。
ディズニーランドの灯りが遠くなっていく。
もう夕方に近い時間からだったが、短い時間で効率良く回れたのは、 シノブが調べてくれたお陰だ。
楽しい時間の過ぎた後は、何とも言えない物悲しい気分になってしまう。

と、突然淀川が口を開く。
「今日何度か見かけて、ビッグサンダーマウンテンの所で写真を
 撮ってくれた女の人、覚えてるだろ?」

「いい女だったな」
とヒビキが頷きながら言うと、
「ヒビキの好みなの?」
とカナデがちょっと拗ねたように言い、それを聞いたヒビキが笑って カナデを抱き寄せている。

「分ったんだ。」

「何が?」
サトルが地図を見ながら聞く。

「彼女、オレと同じだったんだ。」

「なに――、男だったのか?」
サトルが驚いて声を上げる。

それに苦笑いをしながら、淀川は続ける。
「馬鹿、そんな訳ないだろ。
 彼女、たぶん教師だ。
 そして、あのキャストの女の子は、彼女の教え子だったと思う。」

「何で分るんだよ、そんなこと。
 だった、って、今もそうかもしれないだろ。」

「いや、今、あの二人はもう教師と生徒じゃないはずだ。
 俺に向かって、(頑張って)って言ったんだ。
 (頑張ろうね)じゃない。
 きっと見ていて、俺とオオトモの事に気付いたんだろう。
 いろんな事があったけど、それを乗り越えて、今は教師と生徒と
 いう関係から抜け出して、自由になった。
 だからあなたも頑張って、って意味だったと思うんだ。」

「そうか・・・、って事は、きっとオレたち6人の関係にも気づいて
 たってことだ。」

「たぶんな。それで写真撮ってくれたんじゃないかな。」

「類は友を呼ぶ、なんちゃって・・・
 寒くてごめん。」
カナデが恥ずかしそうに言ったので、みんなで笑った。

サトルは淀川の話に気を取られているうちに、高速の表示が出ていたのに、 それを淀川に伝えるのを忘れた。

「あそこから入るんだった・・・」

「って・・・通り過ぎちまったぞ。」

「お前なーー、たまには自分で見たら・・・って、無理か。
 次の信号、右!」

高速への入り口へ戻るつもりが、ショッピングセンターの裏の駐車場に出る。

「だから、右折って言っただろ。
 言うこと聞けよ・・・」

あちこち回って、ようやく高速に乗る。

淀川の思いがけない話を聞いてるうちに、すっかりもの悲しい気分が なくなっていた。
夢と魔法の王国での楽しい時間が過ぎても、一緒にいるだけで、幸福を 感じられる人が、すぐそばにいる。
その存在を感じるだけで、辛いことを乗り越えていける。
俺たちにはそんな恋人と親友達がいるんだ・・・
パレードで魔法使いが振った杖の魔法は、日常の日々の中では忘れがちな その事を、もう一度思い出させてくれたのかな・・・

「シノブ、あれだけ走って遊んだんだ、疲れただろう。
 帰りはお前が横になれ。」

「うん・・・ツカサ、ありがとう。
 本当に、眠くなってきちゃった。
 サトル、先生、ごめんね・・・」

シノブはツカサの膝の上に頭を載せて、座席の上で丸くなる。
ほんの少し口をあけて、あどけない顔で眠っているシノブを見ていると、 あのパワーがどこから来るのか不思議でならない。
シノブの後を付いて走ったり、ビッグサンダーマウンテンに連続三回乗ったり、 正直言って、ちょっときつかった。
仕事で体を使ってはいるが、早めに柔道館の手伝いをさせてもらえるよう、 社長に頼んでみよう。
龍門祭のコスプレ写真で、シノブが見たがっていた道着姿は見せてやったが、 実際に柔道をやっているところを、いつか見せてやりたい・・・
そんなことを考えているうちに、いつしかツカサも深い眠りに落ちていった。

ヒビキとカナデは来た時と同じように、お互いに頭をくっつけ合って眠っている。
指を絡めて、しっかり手を握り合って・・・

「ミナセ、明日も仕事だって。」

「車で寝ても疲れは取れないからな。
 なるべく早く帰れるように、頼むな。」

「オッケー。
 みんな寝ちまって、話す奴もいないから、
 集中して標識、見られるしな。」

ユンケルのお蔭で途中で眠くもならず、サトルの的確な指示で、 淀川が車を飛ばす。
一度来た道を戻るのだから、高速に乗ってからはもう迷わない。

暫く走ってから、サトルが淀川に話しかける。
「さっきの話だけど、彼女たちが、教師と生徒の関係だったとき、
 辛かったと思うか?」

淀川はちょっと考えてから、
「学園祭の後でも言ったことだけど・・・」
と、話し出す。

「世間に公表できないって、結構、辛いもんだなって、思ったし、
 いろいろ心の葛藤があったと思う。
 だから、あの夜、サトルが言ってくれた事は、本当に嬉しかった・・・
 自分でも思ってはいたんだけどな、一瞬を大事にするって。
 俺が教師をしていて、教壇からお前を見ている。
 お前はそんな俺を、生徒の一人として見ている。
 こういう関係は、望んで出来ることじゃないし、それもあと一年
 ちょっとのことだから。
 周りに気付かれないように、ってのは仕方のない事として、
 この状況を大事にしなくちゃな、って、今は思っている。
 さっきの彼女も、そういう事を言いたかったんじゃないかな・・・」

それを聞いたサトルが、ちょっと笑った。
「そっか、そういう風に考えられるようになったんだ。
 あの時酔っ払ったのも、無駄じゃなかったって事だ。」

「転んでもタダでは起きないからな。
 これから、学校では覚悟しとけよ?」
流し目をくれる淀川に、何故か背筋が冷たくなるサトルであった・・・

予想していた時間より30分早く、シノブのマンションの前に着く。
声をかけると、ツカサは目を覚ましたが、シノブは眠ったままだ。

「オオトモ、悪いけど、シノブを背負わせてくれないか?」

車から降りたサトルが、ぐっすり眠ったままのシノブを抱きかかえて、 ツカサの大きな背中に載せる。

「シノブ、朝まで目を覚まさないだろうな。
 ミナセ、シノブの寝込みにいたずらすんなよ。」
笑いながら言うサトルに、

「するか、お前じゃあるまいし。」
と、ツカサが苦笑する。
そして、運転席にいる淀川に声をかける。

「先生、今日は本当に楽しかった。
 シノブの分も礼を言う。
 ありがとう。
 じゃ、又、な。」

ツカサはシノブを背負って、ゆっくりマンションに向かい、エントランスの 所で振り返って手を振り、そのまま中に入って行った。

車だと、シノブのマンションから、高梨家は遠くない。

「先生、本当に、ありがとう。
 今度、又、どこか一緒に行こうね。」
そう言った後、カナデがサトルに何か、紙切れの様なものを渡している。

「帰り、気をつけてな。」
そう言うヒビキ達に手を振って、淀川は車を発進する。

サトルはさっきカナデから手渡された紙切れを広げて見る。
って・・・これ・・・ラブホテルの招待券・・・
その名も、【愛と魔法の王国】・・・!?
そういえば、淀川の住んでる町の、駅の向こうにある、でかくて綺麗な、 外見はとてもラブホテルに見えないそのホテル、車じゃないと、徒歩では とても入る勇気がないし、おまけに、かなりの客室料を取るって聞いた ことがあって、『俺たちには縁のない場所だな』って淀川と話したことが あったんだ。
何で、カナデがこんなもの、くれるんだよ・・・

(実はカナデが時々手伝っている喫茶店のマスター、カナデの
 叔父さんなんだけど、彼がカナデにくれたらしい。
 ヒビキもカナデも、もちろんまだ免許の取れる年ではないし、
 さっきサトルも言ってた様に、徒歩で入る勇気は、今のところない。
 せっかくだから、って、サトルに渡したって訳。
 二人への今回の旅行のお礼もかねて・・・)

「次の信号左。」

「真っ直ぐ行って、次の角、右折。」

サトルのナビにも慣れて、かなり言う事を聞くようになってきた淀川、 サトルの言うがままに車を走らせている。

「じゃ、次、駅の通りを過ぎたら、そのまま、道沿いに、
 ハイ、ここ右に入って。」

車は左折し、プラタナスの並木道を走って行く。
その行く手には、落ち着いたレンガの建物に、 【愛と魔法の王国】のネオン・・・

「おい、サトル、又、やっちまったか?・・・
 わざとじゃないからな、絶対・・・」

自分がどこに入ったのか、気付いたのだろう、淀川が、赤くなって言う。

「いいんだよ、ナイス方向音痴。」
サトルがウインクしながら、カナデがくれた招待券をひらひらさせた・・・

しかし・・・ユンケルの効果もここまで、
二人は豪華な部屋に入るなり、手を繋いだままベッドに倒れこんで、 朝までぐっすり眠りましたとさ・・・

おしまい。



KAZUKIが間違いなくアキラ様にお届けしますので
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