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体中がまだ痛い・・そんな気がする。
『まだ昨日のダメージを引きずってんのかよ・・
ヒーリングファクターとしてなっちゃいねぇな・・』
ウルは瞼を閉じたまま昨日の戦いを思い起こす。
あれはセイバーとの戦いだった。
嵐のような荒れ狂う雨の中、二人は壮絶な戦いを繰り広げていた。
高い崖の上でセイバーがウルの小柄な体を掴むとブンブン振り回す。
セイバーの手がウルを離し体が一瞬宙を舞い飛んだ。
だがすぐに垂直に落下していった。
崖の下には高圧電線がありウルは真っ逆さまにその上に落ちた。
バチバチと火花と音を立て激しい衝撃が傷付いた肉体を襲う。
頭が色々な色でチカチカしていく。叫ぶにも喉が焼けて声が出ない。
意識朦朧としながら黒こげの肉体をかばうようにしてX-マンションに辿り着き
自分のベットの上に倒れ込んだのだった。
そして記憶はここで途絶えた。
少しずつ瞼を開けると窓からの陽射しが瞳に入り込む。
陽射しのまぶしさに何度かぱちぱちと瞬きをする。
その時、部屋のドアがドンドンドンと強く叩かれた。
ノックなのか破壊したいのか解らない叩き方だ。
『このマナーがなってないノックの叩き方は・・スコットか?』
ウルはゆっくりと頭だけ動かすとドアの方を見る。
なんだか頭の重さがいつもより軽い気がする。
「おい、いつまで寝ているんだ?」
ドアの外から声がしてきた。その声はウルのカンどおりにサイクだった。
「おい、昨日は遅くのご帰還だったからまだ寝たりないかい?
君は良くてもこっちには都合ってもんがあるんだぜ。
今起きてくれたら美味しいランチをご馳走してあげるよ」
ドアの向こうで軽い口調で喋るサイクに軽く怒りがこみ上げる。
『開けたきゃ開けろよ・・・・』
そう言おうと口を開けるが出る声がなんだかおかしい。
まだ喉がやられているのか?ウルはそう思った。
返事が無いのでサイクは不審に思い、部屋の主の了解を待たずにドアを開けた。
「どうかしたのか?開けるぞ」
サイクは部屋に一歩入るなり驚いた。
サイクは近づきながら目の前にいる人物に恐る恐る問いかけた。
「き、君は誰だい?」
サイクが驚くのも不審がるのも無理はない。
ベットに横たわっていたのは毛だらけの筋肉オヤジではなく、
瑞々しい肌を持つ華奢な少年だったからだ。
2へつづく
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