見慣れぬ横顔
「おれの顔に何かついてるか?」
「何も。なんか……ちがうなって思って」
「ちがう?」
「うん、横顔がさ。いつもとちがう」
「横顔か。ハンドルが逆だからかもな」
「……車、どうして買いかえたんだよ」
「飽きたから」
「またそれかよ。信じるわけねえだろ。あんなに頑張って買ったのに」
「この車も悪くない。そうだ、海でも見ていくか」
「いいの? ここからだと高速乗らなきゃいけないだろ」
「だからだ。慣らし運転にはちょうどいい」
「やっぱ海、サイコー! 連れてきてくれてありがと!」
「お前は好きだな、海」
「見てるだけでも面白いからね。色とか、波とか。音とか、においとか」
「におい、か。お前と会うまでは十年近く、磯の香りをかいでなかったからな」
「だよねー。仕事場も自宅で、移動は車。太るよー、そのうち」
「生意気なこと言うガキはおいて帰るぞ」
「フフン。そんなこと、できるわけないもんね」
「できるんだなあそれが」
「ええっ、待ってよ! ごめん! ごめんって!」
「あのさ……さっき、マジで怒った……とか?」
「マジで怒ったら車に乗せないと思うけどな」
「ならいいけど……」
「お前はおれを見くびりすぎだ。これでもトレーニングしてるんだぞ」
「うっそだね。あの部屋、ダンベルもないじゃん」
「体を鍛えるのに道具はいらない」
「ほんとにー? 最近、仕事大変そうなのに」
「ほんとだ。ベッドで見られても恥ずかしくないよう、日々鍛錬している」
「するっとそういうこと言うと、嘘っぽく聞こえるんだけど」
「嘘か本当かは、今夜お前が判断すればいい」
「今夜って。明日学校だよ」
「だからこうして急いでる。ついでに言うと、少々腹が立ってる」
「え……なんで」
「仕事を増やして右ハンドルの中古車にしても、お前はちっとも気づかない」
「は?」
「今の部屋は、お前と住むには手狭だ」
「……! それって一緒に住むってことかよ?! だからって、大事にしてた車を!」
「住むのは今すぐじゃないし、おれには車より大事なものがある」
「…………ばか」
「生意気ぬかすとおいてくぞ?」
「ばーか。できないくせに」
「そうだな。特に今日は、できそうにない」
あとがき
『ハルノワカレ』
の二人です。少し修正しました。
オレくんは今も高校生? 帰国して日本にいるの? おれさんの仕事は?
わからないコトだらけですが、この二人ならいいかな、という感じですv
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