Cufflinks
第一話・焔 第三章・3
「お前の傷を見て、俺も痛くなった。妹が怪我したとき、怪我と同じところが痛いような気がしたことはある。でも、お前のは違う。胸の……ずっと中のとこが、ずきずきした」
「修一」
「怪我してるってわかってるのに、会いたい気持ちが抑えられない。身勝手だと思われるのが怖くて、昨夜、あんな遅い時間まで電話できなかった。傷に悪いことはしたくない。だから今夜は、前に俺の部屋でしたみたいなことを……」
新田の腿の上で手をつなぎ、何度目かわからない口づけをした。新田の手に力が込められる。春樹はつないでいない手で、新田の袖を軽く引いた。
「脱いで……僕も脱ぐから……」
目が暗さに慣れてきた。新田から目が離せない。見つめ合ったまま服を脱ぎ、全裸になった新田が毛布をめくった。ベッドに横たわり、向かい合わせになろうと誘う。
春樹は自分を招く新田の手をつかんだ。手首に近いところを持ち、新田が仰向けになるよう導いていく。
とまどいながらも仰向けになった新田の上に、静かに体を重ねた。
「は、はる……春樹!」
優しい人の中心を指でなぞった。先端から根元までゆっくりたどり、少し強く握る。焦った新田が体をよじるが、主張し始めている棒を手の平と指で刺激すると、歯の間から息を漏らして目を閉じた。
「待て、待ってくれ。春樹っ」
新田の上ずった声が焔を呼んだ。見えない炎の触手が足もとから這い上がってくる。熱い感触が触れる時間が長くなれば、何を口走るかわからない。玄関からもつれ合って寝室に入ったため、水も用意していない。
大きな手が悪戯をする春樹の手に触れる。がっしりつかまれる前に、互いの指を交差させた。
新田が胸を上下に動かし、懇願するような顔を向ける。
「お前の手、すごく熱い。こんなことされたら、我慢できない」
「修一のものにしてくれるの……?」
「そうじゃない。そうじゃなくて、その」
ひたいを片手で覆った新田が、顔を横に向けて目を泳がせる。利発な目が潤む様に、見とれそうになった。
焔の熱でぼうっとなった春樹にも、新田の言いたいことは理解できた。対等な関係であるなら、先に達してしまうのは嫌に決まっている。
新田の手を持ち上げる。少し荒れた甲にキスをした。
「僕の傷を自分のこととして感じてくれて、すごく嬉しい……ね、修一。もう少し触らせて……お願い」
寝室の空間を見ていた新田の目が、まばたきの後に伏せられた。寄せた眉根に色気がある。一瞬迷ったが、新田の首筋に唇を這わせてみた。「うっ」という新田の小さな声が聞こえて、春樹の中心にも血が集まり始めた。
唇を点々と押し付けながら、硬い新田のものを触る。すぐそばで聞く新田の息づかいが愛しい。うっすら汗ばんできた肌も、すがるものを求めるようにシーツを掻く手も、どれもが胸をときめかせる。
下へ移動した春樹の唇が、新田の胸の一部分に触れた。尖っているところを舌でゆっくりと舐め、少しだけ吸ってみる。男らしい曲線を描く胸の筋肉と、みぞおちのあたりが不規則に収縮した。
舌の裏と唇で、こりっとした箇所を愛した。新田の若さの象徴は性交が可能な状態になり、先が潤っている。つないだ手を離した新田が、シーツの上で拳を握った。
「もうだめだ、やばい」
乗っている春樹ごと体を横にしようとする。春樹は膝をシーツから離さないようにして、新田の上からどくまいとした。
「頼む。ほんとに、もう」
かすれる新田の声に、ぞくりとした。春樹の屹立を新田のものに重ねる。喘ぐ新田がガーゼを避けて春樹の肩と腰に指をかけた。体を密着させたいのだろう。だが、春樹はこれも拒否した。さすがに新田も不安な目で春樹を見上げる。
春樹はふたつの猛りを離さないようにして、両方の先を手の平で撫で回した。
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