放課後女装クラブ(仮)
＃３ 休日練習
約束の日曜日。まだ午前中のうちに、僕と貴史は電車に乗って、
そのまま、あまり話もしないで電車に揺られて、ユリさんに言われた駅についた。
駅についたら、もうユリさんが待ってた。僕達も早めに来たつもりだったのに。
「やっと来たー。待ってたんだよ」
「まだ、時間になってないじゃん」
「そうだけどね。待ちきれなくて早く来ちゃった」
「じゃあ、さっそくだけど、早く行こうね。
お菓子とかジュースはもう買ってあるから、寄り道なしで」
ユリさんがタクシーを拾って、みんなでそれに乗った。
電車が混んでたとか、くだらない話をしてるうちに
「このへんでいいです」ってユリさんが行って、車が止まった。
駅前は結構にぎやかな感じだったけど、ここは、そうでもない。
あまり人も歩いてないし、まるで、のどかな田舎町みたいなかんじ。
「このマンションだよ。ついてきてね」
僕達は、ユリさんの後について、マンションに入った。
エレベーターを降りてすぐの部屋が、ユリさんの部屋みたいだ。
「ここ。どうぞ、入って入って」
よく、クラブの人は、ユリさんががさつな人だ、とかよく言ってるけど、
部屋に入ってみたかんじ、あまりそういう気はしなかった。
ただけっこう、すごそうな物が、無造作に置いてある気がする…。
ＳＭなんとかって本とか、クラブにも置いてあったような、男の子のＨなマンガとか。
ムチみたいのも転がってる。
「どうしたの？ そこらへん適当に座っていいから。飲み物とってくるね」
僕と貴史は、テーブルのそばのクッションに座った。
なんだか貴史は、まわりに転がってる、いろんなものが気になるみたい。
「貴史くん、鞭とか手錠に興味あるの？」
いきなりユリさんの声がした。
貴史は驚いて、首を振った。逆に怪しく思われるくらい。
「興味があったら見ていいよ。そのへんの本とかもね」
ユリさんはジュースとお菓子を持ってきて、テーブルのそばに座った。
「気にしなくてもいいのに。なんなら、本とか、持っていってもいいよ」
「家で、そんな本見つかったら、ぶっ飛ばされるよ…」
「うん」
「なるほど、義務教育中だもんねー」
ユリさんは笑うと、ポケットからタバコを取り出した。
「うちはクラブみたく、禁煙じゃないから、遠慮なくどうぞ」
「…ユリさん、まだ未成年じゃないの？」
「もうすぐ成人。それより、Ｈしまくりの中学生に、そんな注意されたくないな」
「しまくりじゃないもん」
「したことはした、ということね。やっと白状した」
「……」
僕達が黙ってると、ユリさんがタバコに火をつけて…。
ふと思い出したように、聞いてきた。
「そういえば、衣装は持ってきてるの？」
「持ってきてない…」
「うん」
「やっぱりね」
ユリさんは別に気にする様子もなく、続ける。
「そんなことだろうと思って、クラブから、衣装借りてきてるの。
こないだ二人が着てたやつね」
「え…？」
「どっちも寄付したの私だし、洗濯にでも出すつもりで持ってきたの。
とりあえず、シャワーでも浴びてきたら？ 今日、暑かったしね」
「…服、隠そうとか思ってない？」
「思ってない。だって、必ず、女物の方を着ると、信じてるからね」
僕と貴史は、二人一緒にバスルームに入れられた。
交代でいいって言ったのに、むりやり。
「ちゃんと体中すみずみまで、しっかりと洗いまくるのよー」
外から声がする。
言われなくたってそうするつもりだから、返事はしないで、ドアの鍵をしめた。
僕が洗い場で体を洗って、シャワーを浴びている間、
貴史は湯の張ってないバスタブの中で座ってた。
お互いに相手から目をそらしてる。
体育とか、プールの着替えのときとかは、ぜんぜん気にならないのに…。
二人でバスルームを出て、服を着ようとしたとき、
僕達がさっきまで着てた服と、女物の服が、いっしょに置いてあった。
二人とも、何も言わずに、女物の服のほうを着た。
この前と同じように、貴子はワンピース、私は、女子高の夏服。
「おかえりー。やっぱり二人とも、いい子ね」
ユリさんは、観戦準備万全、というかんじで待ってた。
私達はさっき座ってた場所に、二人で座った。
なんでだろう、恥ずかしいというか、緊張するというか…。
たぶん貴子もそうだと思う。
「別に、そんなに固くならなくていいのに。
いつもクラブで会ってるときみたいで、いいんだよ？」
クラブのときは、人がいようと、女装したどうしでじゃれあうくらいはするし、
発表会のときもそんなに気にならないんだけど…。
なんでだろう、すごく緊張する。
「早くはじめろ、とか、いつするんだ、とかは言わないからね。
だって、わかってるもん。二人とも本当は、楽しみにして来た事」
「……」
「でも、このままじゃ、いつになってもはじまらなそうだし。
だんだん、そういう方向にもっていっちゃおうかな」
なんだろう、と思ってると、ユリさんは質問してきた。
「こないだ…しちゃった時は、どっちがリードしてあげたの？
たぶん、みきちゃんだろうとは思うけど」
二人でうなずいた。ユリさんは、やっぱり、という顔をした。
「じゃあ今日は、貴子ちゃんがリードする展開を希望〜」
「え…」
「嫌？」
「だって、どうしたらいいか、わからないし」
「どうやってＨしていいかわかんなかったら、アダムとイブの段階で
人類は滅亡してるの。思うようにやってみればいいじゃない」
ユリさんは、とっぴょうしもない事を言い出した。
でも、貴子はなぜか納得したみたいだ。
「とはいっても、いざ最初に手を触れる瞬間までは、難しいよね。
だから、私が仕切ってあげる。二人とも従ってね」
「貴子ちゃん、みきちゃんの手を後ろで縛ってね。
みきちゃんは、おとなしく縛られてね」
「え…！？」
「大丈夫、悪いようにはしないから」
「縛られるなんて、やだよー」
「嫌でも縛られるの。いまさら言うまでもないけど、みきちゃんも貴子ちゃんも、
私に弱みを握られてここに来たんでしょ？」
「……」
「実際は怪しいもんだけど、少なくとも、そういう事になってるでしょ」
結局私は、手を後ろで縛られた。縄とかじゃなく、なぜか包帯で、
あまりきつくないけど、外そうとしても外れない程度に。
「大丈夫？ 痛くない？」
貴子が聞いてきたから、痛くない、って答えた。
「じゃあ貴子ちゃん、あとは好きなように…」
「うん…」
うんとは言ったけど、貴子は、どうしていいかわからないみたい。
私にくっついてみたり、体に触ってみたり、そんなのばっかり。
でもしばらくして、貴子は、私を抱きしめた。
さっき洗ったばっかりの、貴子の髪の毛のにおいがする。
「みきちゃん、好き」
貴子はこう言ってきた。私は一瞬混乱しちゃったけど、なんとか気を取り直して、
「私も」
とだけ、言うことができた。
私は貴子に押されて、あおむけに倒れた。腕、痛い…。
それに気づいてくれたのか、貴子は一度私を起こして、クッションしいてくれた。
あまり変わらないけど、でもなんだかうれしい。
貴子は、私に寄り添うみたいに横になると、
私のスカートをめくりあげて、中に手を入れてきた。
そしてすぐに、パンツの上から触ってくる。
入部テストのとき自分がしたことを、相手にされてるみたいなかんじ。
しばらくすると、私のは、だんだん大きくなってきた。
「あ、大きくなってきた…」
そんなこと口に出さなくていい、と思った。
思ったけど、なんだか、ぞくぞくする。
貴子は私のパンツを、たぶん気をつけて、下ろしていった。
こないだ私がしちゃったような、痛い思いをさせないように、かな？
私はパンツを全部下ろされて、スカートもめくり上げられてるから、
下半身丸出しになっちゃった…。
貴子は上半身を起こして、私のおなかとか、足とか…を、なではじめた。
ちょっとくすぐったい。
そのうえ、まるで観察するみたいに、私の下半身をじっと見てるし…。
「あまり見ないで…」
「この前、私のは、じーっと見てたくせに。だから、お返し」
今日は、状況が状況だから、私は貴子に押されっぱなしになってる。
貴子だけじゃなく、ユリさんにも見られてるよ…。
突然、貴子は起き上がって座りなおして、意を決したような顔をして…、
私の下半身に顔を近づけていった。
「え…！？ や、やだぁ…」
つい口に出ちゃった。何をするつもりか想像ついたし、
そんな事までしてくると思わなかったし。
「ちゃんと洗ってるの見たから…大丈夫だもん」
貴子は、自分にも言い聞かせるように、小声で言うと、
私の、女の子らしからぬものを…口にいれた。
「うわー、すごーい」って、ユリさんが言ってるのが聞こえる。
貴子は、しばらく私のを舐めてくれたけど、正直なところ、あまり気持ちいいとは
思わない…。どっちかというと、痛いくらい。
Ｈな本とか見てるかぎりだと、すごく気持ちいいんだと思ってたのに。
それになにより、人に見られてるのが…。
見られるのを想像すると、少し興奮したんだけど、実際に見られてると、
恥ずかしいほうが大きい気がする。
「やっぱり、もっと練習しないと、だめかなあ…」
顔を上げて、貴子が言った。考え事をしてたせいか、私のは、小さくなっちゃってた。
私は何も言わなかった。というか、言えなかった。
「みきちゃん、デリケートなのねー」
ユキさんは笑ってる。
「もう私は満足したから、続きは、また今度二人でどうぞ。
二人とも汗かいてるからシャワー浴びといで」
「ごめんね」
バスルームで、僕は貴史に言った。
なんでかわからないけど、すごく申し訳ない気がして…。
「うーん…うまくできなかったみたい」
「気持ちよくなかったわけじゃないよ」
「うん…」
シャワーを浴びて部屋に戻ると、ユリさんがアイスを用意してくれてた。
みんなでそれを食べながら、雑談。
「貴子ちゃん、積極的なんだもん。驚いちゃった」
「うん、僕も驚いた。だって、いきなりあれだもん…」
「……」
貴史は赤くなってる。
「まあ、自分でも言ってたけど、もっと練習したほうがいいかもね。
ちゃんと、会うたびに、してあげるのよー。
みきちゃんも、今度、してあげないとだめだよ」
「えー」
「…やだ？」
貴史が僕の方を見て、聞いてきた。
面と向かって、「やだ？」なんて聞いてくるとは思わなかったから、
僕はすごく焦った。
「本当に積極的なんだから…。もしかして今後は、みきちゃんじゃなく、
貴子ちゃんがリードしていく関係になったりしてね」
そうかもしれない…。
別に嫌なわけじゃないけど、なんだか変な気分。
「とにかく、今日はありがとうね。今度二人に、服でも買ってあげる」
「わーい」
「ユリさん、一緒に行ってくれるの？」
「うん。確か、もうすぐ発表会じゃなかったっけ？
新しい服着て出たいでしょ」
「発表会…？」
貴史が不思議そうな顔で聞いてきた。
「ああ、そういうのがあるの。どっか場所借りて、皆でクラブ活動の成果を見せる会。
参加は自由だから、嫌だったり怖かったりしたら、出なくていいけど」
「そういうこと」
「ふーん…大田は出るの？」
「場所決まらないとわからないけど、たぶん出るよ」
「じゃあ…僕も出る」
「そ、そう。たぶん、まゆさんからメールくると思うから、それ見て考えてね」
色々話してるうちに夕方近くなったから、僕達は帰ることにした。
ユリさんは、本とか押し付けようとしてきたけど、どっちも断って…。
欲しくないわけじゃないんだけど、もし親とかに見つかったら、
絶対怒られるだろうから…。貴史もそうだと思う。
帰りの電車では、いつも二人で移動してるときよりは、
僕も貴史も、よく喋ったほうだと思う。
マンガとかゲームの話ばっかりだったけどね。
家に帰ってきて…僕は少し悶々としてた。
中途半端で終わっちゃったのが、すごく残念だって思った。
実際にその場にいたときは、見られてて恥ずかしいのばっかりだったのに。
また次のクラブのとき、いい事があるといいな…。
＜つづく…？＞
[PREV] [NEXT]
[menu]