Fallen Angel

#3 リハーサル


 ……俺は、何かの拍子で、目を覚ました。
 寝転がったまま、ふと時計の方に目を向けると、まだ5時過ぎ。

 俺を起こしたのは、向こうを向いて寝てる悠樹みたいだ。
 起こしたつもりはないんだろうけど、悠樹が動いてるのがわかる。
 まだ腕枕したままだから、その控えめな動きも、よく伝わってくる。

「自分で、してるんだ?」
「!!」
 悠樹は驚いたらしく、動きを止めた。
「いいんだよ。みんなしてる、普通の事なんだから」
「……」
「でも、もうちょっと、こっそりやるもんだよ」
 俺は、空いてる方の手を、悠樹の下半身にやった。
 思った通り、悠樹は自分のズボンの中に手を入れてる。
「いいよ、続けても。まだ、終わってないみたいだし」
「……いじわる」
「俺は意地悪だよ。悠樹くんが思ってるよりも、ずっとずっと、ね」
 俺は、悠樹のズボンとパンツを、一緒に引き下げていった。
 ちょっと抵抗してるけど…あくまで、ちょっとだけ。

「見えないから、いいじゃん。お布団かかってるしね」
「うん……」
「もっと色々、したいことがあるんだけどね」
「なに?」
「たぶん、悠樹くん、泣いちゃうかも。痛いことだよ」
 そう言って、俺は、悠樹のつるつるのお尻に手を滑らせた。
「ここに、俺のを入れちゃうの」
 すぐに意味が通じたらしい。悠樹は驚いたようだ。
 さて、最初に、どういった反応をするかな。
「……」
 沈黙。一番多いパターン。
 ちなみに、一番のレアケースは、「うん、してしてー」だろうけど、今だかつて、そういう子にお目にかかった事はない。
 俺は自分の手の中指に唾をつけて、悠樹のお尻の窪み……そう、穴どころか、窪みじゃないかって思うような場所に押し当てた。

「やっ……何するの?」
 俺はそれには返事をせず、指を、ちょっとだけ押し込んで……、あまり力を入れないで、ゆっくり動かす。
「ちんちんの方は、自分でやってごらん」
「……」
 悠樹は、黙ったまま、自分でもはじめたみたい。
 向こうを向いてるけど、どんな顔してるか、よくわかる。

「どんな感じ?」
「……」
「気持ち良くて、何も言えないのかな?」
「……やっぱりお兄ちゃん、いじわる」
「意地悪だよ。本当にね」
 俺は、指をもう少し深く入れて、さっきより少し強く動かす。
「ちょっと痛い」
「我慢できない?」
「……平気」
「じゃあ、もうちょっと大丈夫だね」
「……」
 でもそれ以上踏み込まずに、そのレベルのまま続けた。
 俺は、悠樹を背中から抱きしめるような体勢になってて、腕枕してる方の腕で、悠樹の体を自分に密着するぐらい引き寄せた。
 悠樹の荒くなってきた息遣いと、鼓動まで感じられる気がする。

 そして悠樹は、また小さな声を上げて、いった。

「手、ちょっとついちゃった」
「見せてごらん」
 俺は、悠樹の手を取って、そこについてたものを、舐めてあげた。
 悠樹は、明らかに驚いて、混乱してるみたい。
「おいしいよ、悠樹くんが出したの」
「な、なんで?」
「これはおしっこじゃないから、大丈夫なんだ」
「……」
 まだ少し混乱してるらしい悠樹の頭を撫でてあげながら、俺は言った。
「まだ、朝になってないよ…もう少し、寝よう」
「うん……」

 そして、俺が目を覚ました時には、悠樹はマンガを読んでた。
 俺が起きたのに気付くと、悠樹はうつむいた。
「おはよ」
「うん……おはよう」
 それ以上の会話はせず、俺は部屋を出た。

 俺はここに住み込んでるわけじゃない。
 ここはチーフの家で、悠樹の見張り…あまりいい表現じゃないけど。
 彼女が、そんな感じの事をしてる。

 で、俺は仕事に行ってから、またここに来たのだけど、部屋の中に入るなり、チーフが声をかけてきた。
「悠樹くんの部屋に顔出したら、ちょっと戻って来てね」
「うん」

 部屋に入ると、悠樹は、いつものように寝転がってゲームしてた。
「あ、やりなおしたんだ?」
「うん……仲間、みんな集めるんだ」
「気をつけないと、入らない仲間がいるからね」
「そういうの、教えてね」

 悠樹と少しだけ話して、チーフのところに戻った。
 いつものように、俺が目の前に座るなり、本題を切り出してくる。
「駄目そうでも、ちょっと無理矢理しちゃってもいいからね」
「ちょっと可哀想だな」
「……あなた、悪いものでも食べた?」
 チーフは、おかしそうに笑ってる。
 そう言えば、今までは相手の子の心配は、あまりしなかった。多少はハメを外しても、どうにかなってたからね。
「とりあえず……明日、遅くてもあさってには撮りたいからね」
「ああ」
「それにしても、あなたらしくないこと。変よ?」
「悪かったな」
 チーフは、まだおかしそうに笑ってる。
 俺が出ようとしたとき、後ろから、チーフの声が聞こえた。
「……特別な気持ちを持つほど、馬鹿じゃないはずよね?」
 俺はそれには返事をせず、部屋を出た。

 悠樹のところに戻ると、まだ悠樹はゲームやってた。
 ちょうど俺が戻るのを待ってたらしく、しばらく一緒に遊んだ。
「お兄ちゃん……僕、眠くなってきた」
「うん、おやすみ」
「……」
 悠樹の反応は、わかりやすくて楽しい。
「今日は、悠樹くんと一緒に寝ちゃダメ?」
「いいよ」
「ありがとう」
 こうしてまた、悠樹は、俺の隣で寝てる。
 ……いや、まだ起きてるはずだ。

「悠樹……朝言った事、したいな」
 俺は、こう声をかけた。初めての、呼び捨て。
 そして、向こうを向いている悠樹を自分の方に向かせた。

 悠樹は、やっぱり眠ってなかったみたいだ。少し怯えたような目で、俺の事を見てる。
 明日にしようと思ったけど、今にしよう。
 俺は悠樹を強く抱きしめた後、パジャマのボタンに手をかけた。


To be continued

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