魂の在処





 ・・彼は、この世を憎んでいた。
 自分を生み出したものを、そして、全ての生命を憎んでいた・・。


 彼が「生まれた」のは、いつの事だっただろうか・・?
 正確な年月は不明であるが、彼と接触を持った事のある者によると、
 彼は自らを、「この世界に存在し始めて3年ほど」と語っていたようだ。


 アンドロイドという存在に「生まれた」彼。
 アンドロイドであっても、現在は権利が保障され、責任ある役職についている者もいる。
 むしろ、余計な感情を持たず、論理的、合理的に判断を下せる彼らのほうが、
 ヒューマンやニューマンよりも、はるかに適性を示す職種もある。


 しかし、アンドロイドに対する差別は、根強く残っていた。
 多くの場合、アンドロイドは、差別を受けたところで、それを気にはしない。
 そもそもそういう感情が存在しないのか、気にする事を非合理と判断しているのかは、わからない。


 ところが、彼は違った。自分に向けられる差別を、不当だ、と判断した。
 本来ならば、まずありえないことではある。

 当然、現在のほとんどのアンドロイドは自立思考を持っており、「不当である」「不服である」
 という認識をしたり、状況を改善すべく、自己主張をすることはある。
 しかし彼の抱いた感情、下した判断は、その域を越えていた。


 彼の姿を見ただけで、名を聞いただけで、他人は彼を蔑み、嘲笑し、不当に差別した。

    「なぜ自分は「生まれてきた」のだ、なぜこのような目にあうのだ」

 彼は、「苦悩」した。アンドロイドでありながら、自分の境遇を憎み、悩んだ。


 きっと、自分には魂がないから、こんな目にあわされるんだ。

 彼は、この世の、全ての生命を憎んだ。
 憎んでいる相手に何をするか、考えるまでもない・・。
 命あるものを殺したくなった。全ての生命を、消し去ってやりたくなった。


 彼はヒューキャストとして、ハンターギルドに所属した。
 力をつけ、いつか、自分を愚弄した「生き物」達を、皆殺しにするために!!















 ・・彼は、この世を憎んでいた。
 自分を生み出したものを、そして、全ての生命を憎んでいた・・。

<つづく・・?>



  ↓その他、自分の生まれを呪っている人々

      


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