題「人ならざる者」2 | |
二人が寝た後、縁側で月を見ながら酒を飲んでいる一護の後ろから声が掛けられた。 「いつまで人と関わろうとするんだ?」 「白・・・」 「あいつらもお前を裏切るぞ、今までの人間の様にな」 一護は手の中の杯を呷ると、 「別に・・・気にして・・・」 「嘘つけ!毎回泣いてるクセしやがって。前の奴だってお前との約束すら忘れてるじゃねえか!」 「しょうがねえんだよ・・・。あいつらの時間は動いてる、止まれないんだ・・・」 俯いてしまった一護。 「お前も飲むか?今日の月は綺麗だぞ」 「ふん・・・」 一護の言うとおり、空には三日月が光っていた。一護の隣りに座ると杯を奪い、中の酒を飲み干す白。 「お見事、良い飲みっぷり」 「おら、お前も飲めよ」 二人の酒宴は暫く続いた。 翌朝、一護が起きると剣八はもう庭に居た。 「おはよう。早いんだな、身体の調子はどうだ?」 「ああ・・・良くなった」 「メシ食おう。もう普通の食事で大丈夫だろ」 「そうしてくれ、肉が喰いてえな」 「朝から肉かよ?昼にしとけ、魚焼いてやっから」 「ちっ!しゃあねえな」 と渋々了承する剣八。二人で居間の方へ歩いて行くと縁側でやちるが何かを見ていた。 「なにやってんだ?」 「あ、剣ちゃん、いっちー、白い猫がいるよ」 と指差す方向には豊かな中毛種の、白い毛並みの猫が座って箱を組んでいた。 「お耳と尻尾の先が青いんだね」 「グリムジョーって言うんだ。目も青くて綺麗なんだぞ」 と猫に近付いて抱きあげる一護。 「お帰り、グリムジョー。急に頼んで悪かったな、良いの捕れたか?」 と小声で話しかけた。 「ああ、デケェ猪が捕れたぜ。・・・あいつらに食わせんのか?」 「うん、お疲れさん一緒に飯食おう。後で御褒美に猪の心臓おやつにやるからな、毛繕いもしてやるよ」 と一緒に居間に連れていった。 朝食。 鮎や岩魚の塩焼きに出汁巻き卵、味噌汁にご飯と漬物。野菜の煮物もあった。 「ほら、食えよ」 「いっただっきまーす!」 「おう」 ガツガツと食べていく二人。 一護は岩魚の骨と頭を取るとグリに差し出した。 「ほら、食べろ」 はくはくと食べていくグリ。一護はご飯と味噌汁に野菜類を食べるだけだった。 「なんだよ、お前魚食ってねえじゃねえか」 と向かいに座る剣八が言う。 「ああ、俺はこう言うのが好きなんだ」 「ふうん、だから細えんだよ」 「ほっとけ」 一護の横に居たグリが鼻にしわを寄せ唸っていた。 「ごちそうさん!ほらグリ、毛繕いしてやるからおいで」 と部屋を出ていった。 一護の部屋に縁側でグリの毛皮に櫛を通す一護。 「あいつらいつまで居るんだ?」 「さあ?久し振りの客人だ、長く居てもらいたいけどな」 ぐぐっとグリの身体が大きくなり人型になった。 「俺は嫌だね。人クセえ!早いトコ追い出せよ」 「落ちつけよ、ほら、膝枕してやるから」 一護の膝を枕にして昼寝をするグリ。 「ちぇ。なぁ、なんでお前はヒトを無条件に受け入れるんだ?」 「無条件ではないと思うぞ」 「ずりぃ・・・」 そう呟きながら眠った。 そんな様子を遠目に見ていた剣八が居た。剣八は眉間にしわが寄るのを感じていた。 (なんだ?あの男は?なんでこんなにイラつくんだ俺は?) 「んん・・・」 「起きたか?グリ。少し血の匂いがするから風呂に入れ。俺も入るから」 「分かった」 二人で沐浴し、グリは血の穢れを落とし、一護も日課である沐浴を済ませた。 「ああ、さっぱりしたな」 「そうだなー」 と浴場から出ると、色の白い、大きな翠色の目をした男が立っていた。 「一護様」 「ウルキオラ、どうした?」 「このような者と御一緒に沐浴されるのは感心致しません・・・。猫の毛は纏わりつきます」 「テメェ・・・」 ギリッと奥歯を鳴らすグリ。 「それで?なんか用だったんじゃねえのか?ウル」 「は・・、先程の猪の解体は終わりましたのでお知らせに参りました」 「そうか、ありがとうな」 「おい、一護何なんだよあいつら?なんでここに人間が居る?」 「黙れ、一護様のなされる事に意見など・・・、貴様がする事ではない・・・」 一触即発の二人に、 「喧嘩すんなよ、昨日の夕方に拾ったんだよ」 「ふん・・・、アイツ俺の事睨んできやがったぜ、気に入らねえ・・・」 「そう言うなよ」 「大体あいつは一護に服従しねえじゃねえか、要らねえだろ」 「・・・あいつの名前は俺が付けたんじゃないからな・・・、仕方ないんだよ・・・」 「でもよ、斬月と白は?あいつらはお前が付けたんだろ?」 「あの方々も逆らわんだろうが・・・、屑が」 「テメェ」 「はいはい、喧嘩しねえの、な?」 二人の額に口付けし窘める一護。 台所の給仕の者に、 「その心臓はグリに、肝はウルにやってくれ。後、客人の昼食の用意も頼む」 「畏まりましてございます、一護様」 「ん」 「いっちー!」 どーん!とやちるが飛びついてきた。 「うお!どうした?剣八は一緒じゃないのか」 「うん!ねえいっちー、あたしヒマだよ、一緒に遊んでー!」 「いいぞ、何して遊ぶ?」 「えっと・・・、遊びってどんなのがあるの?」 「うん?そうだなぁ、絵を描いたり、おはじきとか、本読んだりとか色々だな」 「え?おはじき?ほん???」 「知らないか?じゃあ縁側で本でも読んでやるよ」 「うん!」 縁側の日当たりの良いところでやちるを膝に乗せ、本を読んでやった。 色々な本の中からなるべく絵の多い本を選び読んでやると、うとうと舟を漕いでいた。 「ふふ・・・、かわいいな」 なでなでと髪を撫で、子守唄を口ずさむ一護。 「・・・おい」 「あ、剣八。どこ行ってたんだ?もうすぐ飯だぞ」 「ああ・・・、さっきの男は・・、誰だ?」 「さっき?」 「青い髪の男とひょろっとした男だよ」 「ああ、グリとウルな。うちに仕えてくれてるやつらだよ」 「ふうん・・・」 「飯までまだ時間あるな、剣八ぼさぼさじゃねえか、こっち来いよ」 「何だよ?」 部屋の中の鏡台から愛用の櫛を取り出すと、剣八の髪を梳き出した。 「綺麗な髪なのにもったいねえぞ」 「何す・・・!」 「大人しくしろよ、やちるが起きるじゃねえか」 「う・・・」 大人しくする剣八。 さく、さく、と丁寧に梳いて行く一護。途中で止まれば痛くない様に絡まった髪を解しては梳いた。 「ん・・?あー、良いなぁ、あたしもー」 「ああ良いぞ、後でな」 「やったぁ!」 「はい、お終い!ほら、おいでやちる」 「わあい!」 やちるの髪を梳き終わると、 「一護様、お食事の御用意が整いましてございます」 と声が掛けられた。 「今行くよ。ほら、食べにいこう」 「うん!」 「おぉ・・・」 3人で居間に向かい、食事をした。 一護は肉を少しと後は今朝と同じ様な食事だった。 第3話へつづく 10/04/24作 次は一護の過去でも書こうかと思います。 |
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