題「The wolf that you eat me(貴方は私を食べる狼)
 その日の夕飯時に一護が剣八に言った。
「あのね剣八、今日乱菊さんにお手伝いお願いされたんだけど・・・」
「あ?手伝い?何の」
「え〜と、何かね、うさぎさんの格好してなんかするんだって。あ、にぃにも一緒だよ!」
「兎ねぇ。まあ良いんじゃねえか」
「やったぁ!ウサギさん可愛いと良いなぁ」
ニコニコと笑う一護と、どうせ着ぐるみかなんかだろうと深く考えず了承した剣八だった。
白の所でも同様のやり取りが行われていた。

 当日。
乱菊に迎えられ、更衣室に入る一護と白。先に来ていたメンバーは着替え終えて待っていた。
「それじゃあ乱菊さん。私達は先に会場に行ってますから、早く来てくださいね」
と出て行ったメンバー達。乱菊から、
「衣装はこれだからね!」
と渡されたのはバニーガールの衣装だった。
「なぁにこれ?」
「兎の耳?」
バニースーツや兎の耳のカチューシャを見ながら首を傾げる二人。
「これがうさぎさんの服なの?」
「そうよぉ〜。これを着るには女の体にならないと駄目だからこの薬を飲んでね〜」
そんな二人に薬を渡す乱菊。素直にそれを飲む一護と白。
「んふふ、あんた達は女の子になっても可愛いわよね〜。悔しいわぁ」
と言う乱菊に、
「乱菊さんすっごく魅力的なのに?」
「なぁ?俺らにそんなに魅力ねえよな。俺は春水以外の男要らねえし」
「俺も剣八以外の男の人要らないよ〜」
「ま!ありがと!そうよね。さ!着替えましょ!このストッキングを先に穿いてね」
「下には何も穿かないの?」
「そうね、この専用の下着もあるけどそんなに変わんないと思うわよ」
(どうせ旦那に食べられるでしょうし・・・)
と心で呟いて・・・。
「良いじゃねえか一護。俺いつも何も穿いてないぞ」
「え!にぃにそうなの!?」
「ああ、褌は窮屈で嫌いなんだよな」
「あ、俺も最初の頃そうだった〜。でももう慣れたよ」
そんな話をしながらストッキングを穿いていく一護と白。
「うわ・・ぴっちりしてる」
「ちょっと苦しいな」
「はい、次はバニースーツね!このスーツにはちょっとした細工をしてあるから後で楽しんでね〜!」
と意味深な笑みと共にそんな事を言われた。
「わあ!この白いポンポンみたいなのって兎の尻尾?可愛いねぇ〜!」
「おお!ふわふわだ!」
「そうよぉ〜!スナップボタンで留めるのよ」
プチプチと尻尾を留め、スーツを着ていく。
「う、わ・・・コレも、ちょっと苦しいね」
「おう・・・」
バニースーツの次は蝶ネクタイ、カフス、カチューシャ、ハイヒールを履いていく。
「おお〜!似合う似合う!後はコレを着て!」
と差し出されたのは燕尾服ジャケットを渡され羽織ると、丁度尻尾が出ている。
「やぁ〜ん!可愛い〜!」
着替え終わるとさっき見たメンバー達と同じ格好だった。

 すんなり伸びた足はバックシームレスの網タイツを穿いた事により色っぽさが増し、ツン、と上を向いた健康的なヒップラインに目を奪われる。その少し上には白いウサギの尻尾があり、思わず触ってしまいそうになる。
上半身は衣装から覗く白い肌が黒いバニースーツに映え、目映いばかりに輝いている。自然に寄せられた胸の谷間は見るからに柔らそうで同性(?)ながら目が離せない。
「完璧じゃないの〜!んもう!女のあたしでさえ惚れぼれするわ!何?このウエストの細さ!」
「ひゃん!」
乱菊にウエストを掴まれて変な声が出てしまった一護。
「で?この格好で俺らは何すりゃ良いんだ?」
と白が訊いて来た。
「簡単な事よ。客が注文した飲み物とか食べ物とかを運んだりするの。あんた達この間のメイド喫茶覚えてる?それと一緒よ」
と言われ、その時の事を思い出す一護と白。
「メイド・・・」
「きっさ・・・」
勿論覚えている。その後、旦那に何をされたのかも・・・。
「なんか・・・やな予感が・・・」
「あん時だって、結構・・・」
ソワソワと落ち着きが無くなって来た二人に、
「大丈夫よぉ。今回はちゃんと言ったら了承してくれたんでしょ?」
と乱菊が言う。
「でも俺、兎さんの格好ってもっとヌイグルミみたいなんだと思ってたし・・・」
「なあ。大丈夫か、これ」
自分達の格好を見比べる。嫉妬に狂った旦那が怖いのは百も承知の嫁二人。
「大丈夫大丈夫!今回はそんなにたくさん人が来るってわけじゃないしね」
「そうなの?」
「そうそう!更木隊長も京楽隊長も来るだろうから安心なさいな」
「なら大丈夫か」
「そうだね」
と安心したのだった。

 3人が会場に着くとまず始めにメンバーからの黄色い声に出迎えられた。
「きゃあ〜!かっわいい!」
「白さんも一護君もすっごくお似合いですよ!」
「こんなに完璧に着こなしちゃって!私達ってば引き立て役じゃないですか〜!」
キャッキャとはしゃいでいる。
「はいはい!もうお客さんは入ってるんでしょ?お仕事お仕事!今日は忙しい皆を癒すのが仕事なんだからね!」
「はい!」
全員でホールに出ると其処に居たのはほとんどが隊長・副隊長格の男性客ばかりだった。
「は〜い!皆様お待たせ致しました〜!癒しのうさちゃんたちで〜す!スペシャルゲストはこの二人!一護と白で〜す!」

おぉおぉお!

男性陣からの歓声が響く中、注文の品を給仕していく一護と白。
「えーと、ビールの大ジョッキと腸詰?お待ちどうさま!」
「酒と唐揚げお待ち!」
自分達のテーブルに近付く一護と白を鼻の下を伸ばして眺める者、目のやり場に困る者など様々だったがおおむね好評だ。
日頃、忙しい隊長、副隊長を労う事が目的のこの飲み会。皆が楽しく盛り上がっていた。
そこへ遅れてやって来た剣八と京楽。会場の中をちょこまかと走り回る己が妻の格好を見て目を見開いた。

 オレンジ色の髪に黒いウサギ耳のカチューシャを付け、黒いスーツに燕尾ジャケット、ローレグから伸びた足には黒いバックシームレスの網タイツを穿いた一護。燕尾ジャケットから覗いた白い尻尾がそそる。
白銀の髪に映える黒いウサギ耳のカチューシャを付け、一護と同じ黒いスーツに燕尾ジャケット、やはりローレグから伸びた足はシームレスの線で艶めかしさがより強調されている。
「あっ!剣八だ!お仕事終わったの?御苦労さま〜!」
と熱いおしぼりを手渡す一護。その隣りで白が同じ様に京楽におしぼりを差し出している。
「お疲れ春水!なに飲む?酒か?ビールか?腸詰美味そうだぞ?」
おしぼりを受け取り、そんな二人に思わず怒鳴ってしまった剣八と京楽。
「一護!テメェなんてぇ格好してやがる!」
「白も!なんて格好してるの!」
その声に肩を竦ませる二人。何かを言おうとした二人を素早く隊長羽織に包むと、次の瞬間にはその場から消えていた。
「は〜い、うさちゃん二人お持ち帰りで〜す!」
と何やら楽しそうな乱菊が他のメンバーに伝える。
「あ、やっぱり?」
「あ、もうですか?ちょっと早いですよぉ」
「まぁ良いじゃないの」
「そうですね〜」
と宴会を続けていく。

 それぞれ十一番隊舎の夫婦の寝室、京楽邸へと連れて帰られた一護と白。
「一護!外でんな格好する奴があるか!襲われてえのか!」
と怒られた一護だったが、
「俺ちゃんと言ったもん!剣八良いって言ったもん!急に怒るなんてズルイ!」
と頬を膨らませ、言い返した。
「良いって言ったって、俺は兎の格好だって訊いたんだぞ!お前のその格好・・・!」
「コレも兎だって乱菊さん言ったもん!俺悪くないもん!」
プンッ!とそっぽを向く一護に軽くキレた剣八が一護を蒲団の上に投げた。
「きゃん!いったぁ〜!何すんの!」
その衝撃でハイヒールが片方脱げてしまった一護に迫る剣八。
「何、じゃねえよ。この間の喫茶店といい何にも反省してねえな・・・」
いつもより低い声で囁かれ、びくりと身体を竦ませる一護。
「良いぜぇ?分かんねえなら分かるまで、反省しねえなら反省するまで教えてやるよ、身体にな・・・」
「ひ・・ん・・・!」
剣八の大きな口に唇を塞がれた一護。

 京楽邸。
「し〜ろ〜!お外でこんな格好しないでって言ったじゃない〜!もう!もう!もう!」
「春水良いって言ったじゃねえか!お前俺に嘘吐いたんか!」
ぷく〜っと両頬を膨らませ怒る白に京楽が、
「こんなに際どい格好なんて僕は聞いてないよ!?」
と抗議する。
「俺だってさっき行った時にコレ渡されたんだ!知ってたら教えてる!」
フンッ!と鼻息も荒く言い返す白。
「そうだろうけどぉ〜!またこんな可愛い格好を他の男に見られただなんて!ああもう!あの場に居た男ども全員の目玉をくり抜いてやりたいよ・・・!」
「ちょ・・・春水?」
「なに・・・?」
恐ろしい事を呟く京楽に、
「あそこに居たの、山じいとか白哉達だけだぞ?」
と言っても、
「だからなんだい?君のあられもない格好を見たのならそれ相応の代償を払って貰わなくちゃね・・・」
すり・・・、と白の首筋に額を擦り付けるとカプリと軽く噛んだ。
「あ・・・っ!」
「ね・・・?」
そしてそのまま蒲団に押し倒された白。


後編へ続く



13/09/16作 199作目。バニーちゃん子狐です!旦那’Sは狼ですかね。エロは後編へ持って行きます。



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