題「結晶」6
 四番隊の診察の後、隊舎へ帰る二人。
母子手帳を幸せそうに眺めている一護を抱き上げると、
「帰るぞ、掴まってろ」
 と言うと瞬歩を使う剣八。その首にしがみ付く一護。
「剣八、ありがとうな・・・」
 と呟いた。

 隊舎に着くとゆっくり一護を降ろす剣八。
「いっちー!どうしたの!病気だったの?!」
「やちる・・・」
 心配そうに自分の足に掴まるやちると同じ目線になるためにしゃがむ一護。
「違うよ。あのな、やちる。お姉ちゃんになったんだぞ」
 と優しく目を細める一護。
「え、それって・・・。ホントに?ホントにほんと?」
「うん、卯ノ花さんに診てもらった。ちゃんとここに居るって言ってくれたよ」
「うわぁ!おめでとう!いっちー!あたし皆に教えてくる!」
 と隊舎の中に飛び込んでいったやちる。

 数秒後。隊舎を揺るがさんばかりの歓声が響いた。
「すご・・・」
 中から弓親と一角が走って出て来た。
「隊長!一護君!おめでとう!」
「良かったなぁ!一護!」
 ワシャワシャと髪を撫でてくる一角。
「今日はお祝いの宴会ですね!一角、準備に取り掛かろう!」
「おう!」
 すぐさま宴会の準備に奔走する二人。やちるは既に他の死神達に教えに出掛けていた。
「あいつら行動するの早いなぁ」
「良いじゃねえか、それよりお前は休んでろ」
「うん、剣八は?」
「どうせ昼から宴会だろ。仕事になりゃしねえんだ、一緒に居てやるよ」
「うん・・・」
 二人の部屋の前の縁側でゆっくり過ごす一護と剣八。一護は剣八の胡坐の中に納められている。
「重くねえか?」
「軽いモンだ」
「そ、そか・・・!」
 照れながら甘える一護だった。

 正午前には宴会の準備は滞りなく出来あがっていた。
「隊長!いつでも始められます!」
「おう、一護、行くぞ」
「うん」
 道場に入ると一面に酒樽や寿司桶、お菓子などが並べられていた。
「さ、隊長と一護君は上座の方へ」
 と弓親に勧められ、上座に用意された二つの座布団に座る。
「もうすぐお客さんも来ますからね〜」
 と言っているうちにどんどん人が集まって来た。各隊の隊長、副隊長。それに仲の良い死神がたくさんやって来た。
「一護!おめでとう!」
「ありがとう、乱菊さん」
「一護、これから悪阻が始まると思うけど頑張って食べるのよ?食べられる物はなんだって食べて水分をちゃんと摂るのよ、良い?」
「うん」
「一護!お主本当に妊娠したのか?!」
「ルキア。ああ、ちゃんとここに居るって卯ノ花さんが言ってくれたぞ」
 とお腹に手を当て嬉しそうに笑う。
「そうか、良かったな、一護」
「ああ・・・!ルキア、宴会楽しんでってくれな」
「うむ、お主は腰やお腹を冷やしてはならんぞ」
「サンキュー、ルキア」
 次から次へとお祝いを言いに来る死神達。そんな彼らを魅了するかの様な笑顔を振りまく一護。
見惚れる男たちを牽制するかのように一護を膝に乗せる剣八。
「どうした?剣八」
「・・・座布団だけじゃ冷えるだろうが。板の間なんだ」
「そっか、ありがとな!」
 と素直に甘える一護。
女性陣は
「あらあら」
 と微笑ましそうに眺めていた。

 宴会が進むにつれ騒がしくなった行く。
酔った一角が「ツキツキの舞い」を舞って笑っているのを見ながら一護は寿司を食べ、やちるや女性陣とお菓子に舌鼓を打っている。
剣八はそんな一護を膝に乗せ、酒を飲んでいる。
「ねえ一護、あんたこれからどうするの?」
「これから?」
「そ!これから。子供産んでからよ。現世に帰るの?こっちに住むの?」
「あ〜、親父達には了承取ってるからこっちに住むと思う。時々現世に顔見せに帰ったりするけど」
「あら!じゃあもう事実婚なのね!」
「そんな・・・!事実婚って!俺は剣八と一緒に居れたらそれで」
「あら欲が無いのね、一護ってば」
「もう欲しいものは貰いましたから」
 と幸せそうに眼を細め、お腹に手を当てる。その手に上から剣八が自分の手を重ねた。
「ヒューヒュー!お熱いわね!お二人さん!」
 とからかう乱菊。周りからはこれまた熱い拍手が沸き起こった。

 宴もたけなわ。
夜も更けてくると一護がうつらうつらし出した。
カタンッ!ころころころ・・・。
手に持っていた湯のみが転がっていった。
「おや・・・一護君寝ちゃってるねぇ・・・」
「本当だ、剣八、もうお開きにするかい?」
 京楽と浮竹が訊いて来た。
「別にテメェらは好きに騒いでればいいんじゃねえのか。俺らはもう寝るがよ」
「おやそうかい?じゃあお言葉に甘えようかな。こんなに気持ち良く酔えるお酒は久し振りだからね」
 とにんまり笑った京楽。
「では隊長、後はお任せしますね。お休みなさいませ」
「ああ・・・」
 一護を抱き上げると部屋へと帰っていった。
「まるで宝物みたいに扱ってるねぇ。あの剣八さんが」
 クイッと酒を呷ると嬉しそうに呟いた。
仲睦まじい二人にその場に居た者達は顔を綻ばせていた。

 寝室には既に蒲団が用意されていた。
「弓親か・・・」
 一護を寝巻きに着替えさせ蒲団に寝かせた剣八。自分も着替えるとその隣りに横になり眠った。

 宴会は朝方まで続いていた。


第7話へ続く



11/2/4作 宴会の様子でした。皆一護が大好きですvv

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