題「結晶」5 | |
買ってもらった甘夏を二人で抱えて隊舎に帰った。 「いい匂い・・・」 縁側でうっとりと甘夏の匂いを嗅ぐと、 「食べるか?」 と聞かれ、 「うん、食べたい」 と答えると、めしょめしょと皮を剥いてくれた。辺りに爽やかな香りが漂う。 「ほれ」 「ん・・・」 ピッと薄皮を剥き、種を取った実を剣八の長い指が一護の口元に持ってくる。 甘酸っぱい甘夏の味と香りが口中に広がった。 「ん、美味しい。はい・・・」 「いい、お前食えよ」 「美味しいのに」 ぱく、と食べて行く一護。気付くと四袋あったうち一袋が空になっていた。 「食べすぎだ。晩飯食えなくなるぞ」 「え〜、ん、分かった」 と渋々了承する一護。 「もう仕事?」 「ああ、お前も隊舎に来るか?」 「邪魔になるから良いよ。部屋で寝てる」 「そうか、後2〜3時間だ。晩飯は何が食いてぇ?」 「ん〜、がっつりした物?肉とか?」 「トリの唐揚げとかは?」 「あ、いいな。レモン付けてくれな!」 「ああ、じゃあな」 「行ってらっしゃい」 終業時。 一護を迎えに行く剣八。 「一護、飯食いに行くぞ」 「ん?外に?ここじゃないのか」 「ああ、いつもの居酒屋だ。あそこの唐揚げ気に入ってるんだろ?」 「あぁ、うん!」 二人で寄り添って出掛ける剣八と一護。 「仲良いよねぇ」 「ああ・・・、俺はもう朝イチから隊長の部屋にゃあ行かねえ・・・」 「ご愁傷様!僕らもご飯食べに行こっか!久し振りに一護君とお話したいし」 「当てられんぞ、お前・・・」 と言いながら弓親に付いて行く一角。 居酒屋。 「あ、居た」 剣八と一護を見つけた弓親。一護の横にはやちるが居た。テーブルには山盛りの唐揚げと味噌汁、野菜の煮物が所狭しと並べられていた。 そのテーブルに近づき、 「ご一緒しても良いですか?」 と聞けば、 「好きにしろ」 と言われたので、別のテーブルを持ってきて繋げた。 「え〜と、僕らはお刺身盛り合わせと、鯵の開きとお銚子。一角は?」 「あ〜、じゃあ冷や奴と酒。後は・・・、〆に茶づけでも頼むわ」 と注文した。 一護は唐揚げにレモン汁を振りかけ、ご飯と一緒に食べている。 「美味しいねぇ!いっちー!」 「うん!」 「ちゃんと噛めよ」 「んー!おかわり!」 「良く食べるねぇ、いっちー」 「美味しいからな」 ずず、と味噌汁を飲みながら答えた。 「お待ちどうさま!」 「サンキュー。剣八食わねえの?」 「食ってるだろ。お前が早いんだよ」 「そうかな?」 もぐもぐと野菜の煮物を食べている。 「一護君、お刺身食べるかい?」 「良いのか?お前等のだろ?」 「いいよ、たくさんお食べよ」 「ん、じゃあ貰うな」 と刺身も食べる。 「美味しいな」 「一護、身体冷えるぞ」 「ん」 見てみると山盛りあった唐揚げは全て無くなっていた。 「ん〜!美味しかったぁ!御馳走様でした!」 食後のお茶を飲みながら、一角達と色々話しをして楽しんだ一護だった。 「じゃーなー。お休み、一角、弓親。ちゃんと飯食えよー?」 「またね、一護君。お腹冷やしちゃダメだよ。お休み」 「おう、お休み」 剣八、一護、やちるが家路に着く。 「なんか一護のヤツすげぇ食欲だな・・・」 「そうだねぇ・・・」 と楽しそうに笑う弓親が居た。 その夜も一護が気を失うまで愛し合った二人。 深夜、ユサユサと揺さぶられて起こされた剣八。 「・・・剣八、お腹すいた・・・」 「寝ろ・・・」 「なぁ・・・」 聞こえてくるのは寝息だけだった。 「む〜・・・、なんかあったかな?」 もそもそと蒲団から出ると台所に向かった。 「卵とご飯があった・・・。この時間だとチャーハンなんか作れないな」 茶碗にごはんを入れると、パカッと卵を割り入れ醤油で味付けして混ぜた。 「いただきます」 と小声で言い、食べようとすると、 「何してる・・・」 「ひゃ・・・!剣八、寝てたんじゃ・・・」 「お前が戻って来ねえからな。何食ってんだ?」 「卵かけご飯・・・」 「そんなに腹減ってんのかよ?」 「ん・・・」 申し訳なさそうに俯くと、 「それ貸せ・・・」 「え?」 フライパンを出すとコンロに火を付け、熱しだした。 「い、良いよ!夜遅いし、音響くよ」 「・・・」 剣八は無言で卵チャーハンを作り始めた。 ご飯を少し足して、胡椒も入れた。 「ほれ・・・」 「あ、ありがとう・・・」 部屋に帰ってチャーハンを食べる一護。 「ん、美味しい。剣八も料理出来んじゃん」 「簡単なヤツならな」 「ごめんな、起こしちゃって」 「別に」 作ってもらったチャーハンを残さず食べた一護。 「御馳走様。すげぇ美味しかった」 「よかったな」 「うん」 皿を洗って片付け、今度こそ寝た一護だった。 翌朝。 「おはよう、剣八」 「おう」 「なぁ、剣八の髪梳いても良いか?」 「ああ」 「やった!」 剣八の長い髪を櫛で梳いて行く。毛先から縺れを取って梳いて行く。 「綺麗な髪だな・・・」 「お前の髪も綺麗だと思うがな」 「そうかな?」 「ああ」 「ほれ、交代だ」 「ん」 さくさくと一護のオレンジ色の髪を梳いて行く。 「ん・・、気持ちいい・・・」 ぐぅう 一護のお腹の虫が鳴いた。 「もうすぐ飯だな。ここで食うか?」 「うん、一緒に食べよ?」 「ああ」 二人で食事を取りに行く。 「俺一人で良かったのによ」 「いつも任せきりだからな〜」 膳を持って部屋に帰ると、 「いただきます!」 と元気よく食べ始める一護。 焼き鮭と玉子焼き、味噌汁、ご飯に青菜のお浸し。 美味しそうに食べる一護。 「うッ!」 急に口に手をやり、厠へ駆け込む一護。 「お、おい!」 「げほ!げほ!」 「大丈夫か?一護。食べすぎか?」 「多分・・・、違う・・・」 「うん?」 「着替えて四番隊行ってくる・・・」 「!!」 その言葉を聞いた途端抱き上げられ、瞬歩で四番隊へ連れて行かれた一護。 診察の結果。 「おめでとうございます。ご懐妊ですよ」 と卯ノ花隊長に告げられた。 「剣、剣八!」 「ああ、良くやった、一護」 「ちが・・・、剣八も、剣八が居なきゃ、無理だった・・・!」 「一護・・・」 コホン、と咳を一つしてから説明を始める卯ノ花隊長。 「これから、つわりが始まると思いますが、なるべく食事はきちんと摂ってくださいね。それから、安定期に入るまでは性交渉はなさらないで下さい。恐らくですが、二ヶ月辺りだと思いますが・・・」 一旦言葉を切り、冊子を取りだすと一護に渡した。 「これ・・・!」 「母子手帳です。定期健診には必ず来てくださいね。それ以外でも体調が優れなかったりした時は気軽にお越しくださいな」 「あ、ありがとうございます・・・!」 一護懐妊の報はすぐに知れ渡った。 その日のうちに十一番隊で大宴会が開かれた。 第6話へ続く 11/1/31作 祝!一護懐妊!次は宴会の様子でも |
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